残酷な梟
ふわふわと飛び散った羽に目を奪われる
ただ一面真っ白な世界
始まりの白を見たのはいつの頃だっただろう
その異質な光景から目が離せなかった
脳裏に焼き付いた光景に体の奥が強張る
何故
彼等は墜ちて逝くのか
囀ずる事の無い彼等の瞳が
不気味に思えた
ここに居れば何も怖くない
何も考えなくていい筈だ
番いになれない彼等は
窓に手をかけ飛び立つ
鷹のように虚空に円を描き
最期は塵のように見えなくなる
理解不能
不愉快だ
なのに何故
こんなにも胸が痛むのか
分からない
生まれてきてはいけなかったのだと告げられた日
私は長く伸びた影を追うのをやめた
突然 色の無い世界に落とされ
頭上に振り下ろされる
大きな黒い羽に怯え続けた過去
無理矢理 奪われた自我
溢れる涙の意味を知らず
己に爪を立て少しずつそそぐ毒
他者に対する優しさは
造られた自分を守る為
本当の私はそこには無い
惨めで醜い不完全なイキモノ
それこそが私なのだから
月もない深い闇の中
彼等は鳴く
秘めた苦しみを
溢れだす哀しみを
抗えない怒りと後悔を
狂気すら感じるほどの憎しみを
私には理解不能
私が歌うのは仮初めの安寧
そこに真実などありもしない
目の前の現実に目を背け
輝くような空に想いを馳せ
暗黒の空の下
作られた庭で鳴く
墜ちて逝く彼等は
偽りの讃美歌に瞳を閉じ微笑んだ
理解不能
なのに何故こんなにも
胸が痛むのか分からない
私は白い色が嫌いだ
無責任な夜鳴鶯と呼ばれようと構わない
嘘が真実になるその時まで
ただ遠くから安寧を口遊む