僕のクラスには、お父さんがいる。
僕は夏男。11歳だ。今日も山で遊んでいる。
夏休みだから暇でしょうがない。友達は毎日家でゲームしている。友達の「スプラ180」は、夏休みが始まってから一度も家から出ていないらしい。暑いからしょうがない。
僕のクラスにはお父さんがいる。僕はよくお父さんと間違えられる。
何でお父さんが小学校に通っているのかと言うと、何でだか分からない。誰も気にしていないし、僕も気にしていない。たまに、授業参観に来たよそのお母さんが
「夏男君のお父さんはどうしてここにいるの」
的な事を言うんだけど、僕に聞かれても、って感じだ。お父さんに聞いてくれと思う。
お母さんは仕事でカナダにいる。たまに僕はカナダに行く、お母さんに会いに。ばあちゃんと一緒に会いに行くんだけど、お父さんは行かない。お土産のメープルシロップは、お父さんの好物だ。ホットケーキにかけて食べるんだけど、かき氷にもかけて食べる。
僕はカブトムシを見つけて、虫かごに入れようとしたら逃げられた。家には沢山カブトムシがいるから、お父さんは
「もうとってくるな」
って言うけど、関係ない。お父さんは勝手に学校に来るんだから、僕も勝手に虫をとる。そんな僕の事を、お父さんはたぶん諦めている。僕もお父さんを諦めている。だけど、本当は学校に来てほしくない。僕はこれ以上、お父さんと間違われるのがめんどくさい。僕の日常は、お父さんによっておかしな事になっていると思う。友達の「スプラ180」はこう言う。
「夏男はおっさんみたいな顔だからだな」
と。言っている意味が分からないし、スプラ180とは本当はあんまり気が合わないんだけど、なぜかいつも一緒にいる。スプラ180は、本当は恵梨香って名前だ。