第9話 いばら姫タリーア
第9話 いばら姫タリーア
森から悪鬼<オーガ>がよく現れ被害に遭っているという村からヘンゼル一行はハンターとして仕事を依頼された。
悪鬼<オーガ>を討ちつつ森を進むといばらで包まれた城があった。
いばらを切り落としながら進む。
城の中には大きなベットがあり、そこに少女が横たわっていた。
三人がその部屋に入ると、ベットの少女が静かに上半身を起した。
ヘンゼルたちを見るなり、少女が聞いてきた。
「貴方たちは誰ですか?」
「私はヘンゼル、妖獣や魔女を狩るハンターを生業にしているものです。あなたは?」
「私の名前はタリーア。そのハンターの方がこの城にどういった御用で?」
「近くに悪鬼<オーガ>が出るという事でそれを狩るため森に入りましたら、いばらで包まれているこの城を見つけました」
「いばら?」
そう言うとタリーアはベットから立ち上がり窓の外の光景を見て驚いていた。
「何があったというの?」
「さぁ、俺たちも今来たばかりだから」
「見て、ここに手紙がある」
グレーテルが机の上に手紙を見つけた。
王家の刻印で閉じられた手紙をタリーアに渡した。
手紙を読む。
「わが娘、タリーア。
これを読んでいるという事は、私はもうこの世にはいないだろ。
お前の成長した姿が見られない事は残念でならない。
だが、目が覚めた事を喜びたい。
寝ていたお前は何が起こっているかが分からないだろうから今からそれを語ろう。
お前は悪しき魔女の呪いで長い眠りに落ちていたのだ。
城を包むいばらはお前を護るためのもの。悪しき魔女からね。
そして、このいばらを突破できた者は悪しき魔女の邪気を払う力を持つ者。
その者がこの城に人が入る時、お前は目が覚めるだろう。
だが、お前が目覚めたら悪しき魔女もまたお前の命を奪いに来るだろう。
いばらを突破できた者の協力を得て魔女を追い払うのだ。
お前には良き魔女たちの力で生きる力を得ている。
絶対に自らの将来をその手に掴むのだ
最後に、私と妻がお前を心から愛していた事を忘れないでほしい
お前の父より」
タリーアの頬には涙が流れていた。
ラプンツェルがタリーアを抱き静かになだめた。
「タリーア、私も魔女に人生を奪わえたの。私たちがその魔女をやっつけてあげるから」
「ありがとう、でも」
タリーアは涙を拭い立ち上がる。
「何か戦える武器はありませんか」
「なんでもござれですよ。なんせ俺たちは武器商人でもある。希望の獲物は?」
「では剣を」
「希望はレイピアかな」
「はい」
「そら」とヘンゼルは一本のレイピアをタリーアに投げ、ターリアはそれを受け取るや見事な剣さばきを見せた。
「やるね」
「良き魔女の指導のおかげです」
突如、空気が重くなるのを全員が感じた。
「来ましたね」
「キッキッキッ、おはようタリーア姫。いい夢は見れたかね」
「なるほど、貴方が悪しき魔女だったんですね」
「私の事を覚えているのか」
「私が眠りに入る前に糸を紡ぐ機械を操っていた方ですね」
「そう、紡ぎ車の錘であんたは死ぬはずだったんだけどね。他の魔女の忌々しい妨害であんたの命を奪えずにいたこの100年は本当にイライラしていたよ」
「更年期障害かい、ばあさん」
ヘンゼルが会話に割って入る。
「なんだいあんたたちは?」
「俺はヘンゼル。お前らの様な悪しき魔女を狩るハンターさ」
言うなり弩から矢を放つ。
魔女は黒い煙になり矢は空気をさいた。
「ちぃ! 厄介な術を使う」
「キッキッキッ、有象無象が集まったところでこの偉大なる魔女には敵わないだよ」
「それはどうかしら」
ドゴォオ!!
轟音と共に魔女が壁に潰された。
ラプンツェルの鉄球が的確に魔女を捉えたのだ。
「グフッ! な、なぜ……」
「あんたみたいな魔女と長く暮らしていたせいで、あんたたちの気配は簡単に掴めるのよ」
魔女は逃げようと窓の方へ向かった。
その片手をヘンゼルの矢が壁に打ちつけた。
「逃げるのは無しだぜ、ばあさん」
魔女は火の球をタリーアに向けて放つ。
それをグレーテルが大きな盾で防ぐ。
「さ、止めを、タリーア」
「はい」
タリーアが魔女の心臓に剣を刺し、この戦いは終わった。
「これからどうするんだい」
「私たちと一緒に旅に出よう!」
ラプンツェルが無邪気に誘う。
「もし、よろしければ、私も魔女退治の旅にご同行させてください」
こうして、いばら姫ことタリーアはヘンゼルとグレーテル、ラプンツェルとの旅に加わる事となった。