第6話 ブレーメンの騒乱隊
第6話 ブレーメンの騒乱隊
ブレーメンの街はある問題を抱えていた。
落書きや窃盗、深夜の騒音など軽犯罪の被害が多発していたのだ。
しかもその犯人は獣だという噂だ。
その噂を聞きつけマッチ売りの少女アンネ・マリーが街にやってきた。
現在はマッチ売りはほぼ副業、メインは妖獣狩りを生業とするハンターだ。
師の元での修行を終え、独り立ちしたアンネ・マリーの最初の標的がこのブレーメンだった。
街を調査するとあっけなく犯人たちを特定でき、その隠れ家までの尾行に成功した。
犯人はロバ、イヌ、ネコ、ニワトリという構成だった。
しかも驚くべきことにロバたちは二足歩行をし、人語を操っていた。
隠れ家に着くなり4匹はそれぞれ楽器を持ち音楽を奏で始めた。
アンネ・マリーはその様子を伺っていると背後に殺気を感じすぐさましゃがみ込んだ。
刹那、その頭上を刃が走る。
「チッ! アンタ何者?」
変わった剣を持ち、赤ずきんを被った少女が斬りつけざまに聞いてきた。
「ちょ! いきなり剣で斬りつけるとは何ごとっすか!?」
剣を構え直し再び聞く。
「妖獣の仲間か?」
「あんたの目は節穴っすか!? どこをどう見ても普通の少女っしょ」
「刀をかわしたわね。普通の少女の動きじゃなかった」
「いやいや、普通の少女だったら死んでるでしょ。こいつあぶねー奴だなー」
アンネ・マリーは鞄からダイナマイトを取り突き出して言う。
「あたしはハンター。妖獣を狩る側っすよ」
「そう、アンタもハンターだったのね。私はメイジー。妖獣や魔女を狩るハンターを生業にしている」
「目立つ赤いずきんっすね」
「返り血でこの色になった」
「マジっすか!?」
「うそよ。ところで中に獲物がいるみたいね、ここは共闘というのはどうだ?」
「真顔で冗談とかマジ勘弁っす。いいっすね。共闘とか」
「では斬り込むか」
「いやいや、淡白な人っすねー。ちょっと待った。あたしに考えがあるっすよ」
「なんだ、さっさと言え」
「いーっすか。あたしが奴らを家から追い出すんで、アンタはその剣で彼らを仕留めて。ただし絶対に殺さないこと」
「なぜだ」
「奴らには聞きたいことがあるの。あなたにも必要な情報だと思うっすよ」
「いいだろう」
アンネ・マリーは「爆弾だぁー!!」と叫び、家の中にダイナマイトを投げ込んだ。
獣たちは慌てて窓から逃げる。
窓から出る獣順にメイジーが次々と仕留めていった。
爆発でまっさらになった部屋の中の柱に4匹の獣を縛り付けた。
水をかけ起こす。
「聞きたいことがあるんだけど」
ロバが代表して話し出す。
「ワレワレはナニもコタえない」
メイジーが日本刀をロバの首にかける。
「よし分かった今後何もしゃべれないようにしてやろう?」
「ナニがキきたいんだね!」
アンネ・マリーが質問を続ける。
「なぜこんなつまらない犯罪を重ねるっすか。調べた感じ、殺人はしてないみたいっすけど」
「ワレワレはヒトをコロしたりしない。ただヒトがコマるカオをするのがタノしいだけだ」
「アンタ自身の意思なの?」
「ダレかにワルさをするようにイわれているキはする」
「いつから?」
「3カゲツほどマエ」
「誰から言われているか心あたりはあるっすか?」
「タブン、カエルのオウジだ」
「カエルの王子?」
「モリでアったナカマからキいた、カエルのオウジがセカイにアクイをばらまいている」
メイジーは日本刀を鞘に納めながら言った。
「やっと黒幕が分かったな」
「ねぇ、カエルの王子ってのは今どこにいるんすか?」
「ワレワレもシらない、ただカエルのオウジにノロいをカけたのはキタのマジョだとキいている」
「情報サンキューっす。ただ、もう悪さはダメだかんね。次悪さしてるところを見たら、殺しちゃうぞ」
アンネ・マリーが微笑みながら言った。
メイジーは黙って少し鞘から刀身を見せた。
獣たちはブルブルと首を縦に振った。
「さぁ、カエルの王子様を狩りに行きましょう」
二人は獣の縄を解いて、北へと向かった。