表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
り・くりーげりん 童話少女戦記  作者: 蒲生たかし
5/13

第5話 美女と魔獣

第5話 美女と魔獣


ベルは野獣と城で暮らしていた。


野獣の正体は魔女の呪いを受けた城主だ。


姿は野獣だが、中身は人間、厳格な城主として暮らしていた。


だが、日に日に理性を失っていく時間が増えていった。


理性を失うとただ破壊衝動に囚われるただの獣と化してしまう。


その事を恐れ、城主は自らを檻に入った。


しかし、理性を失い獣と化した彼は檻を壊し外へ出た。



ベルは城主の変貌に悲しみに沈んでいた。


その前に理性を失った城主が現れた。


「大丈夫?」


その問いには獣の唸り声が返された。


獣の爪をベルに向けた。


ベルの服が爪で裂かれ血が舞った。


その血を見て獣は突然うずくまった。


「お……俺を……殺してくれ……」


「無理よ! 私に貴方を殺すことなど! 貴方は私の大切な」


「……このままでは俺はお前の事を……頼む」


再び理性を失い獣の眼となった城主がベルに襲い掛かる。



「なら、私が殺してあげる」


天井から赤ずきんをかぶった少女が落ちて来たかと思うと、地面へ着地する瞬間に獣の首をはねた。


てんてんと獣の首が地面をはねた。


それは転がり、静かに止まった。


「ベル、短い時間だったが、共に過ごしてくれてありがとう」


首の表情は穏やかだった。


「貴方に、逢えてよかった」


ベルは涙を流し崩れ落ちた。



「赤ずきんの娘よ、礼を言う、お前が来なければ俺は大事な人を殺すところだった……」


「礼はいいから、アンタに何があったか話して」


「日に日に、俺の中を『邪悪』が覆い尽くしていった。悪しき意思を世界にばらまき混沌に誘おうとしている者がいる」


「それは誰?」


「俺にも分からない、分かっていれば、俺自身で殺しに行っていた」


「そう」


「頼む、俺の様な悲劇を繰り返さぬため、元凶を絶ってくれ」


「言われるまでもない。どうせ、やらないとうちのババアにどんな目にあわされるか。ああ特訓の日々を思い出すだけで恐怖が蘇る」


赤ずきんがぶつぶつと独り言を言っている間に、首は静かに物となった。


ベルはそれを抱え泣きくれた。



赤ずきんは刀を鞘に収めた。


その赤ずきんにベルが尋ねる。


「貴方は誰なのですか?」


「私は赤ずきんデイジー、妖獣を狩るハンター稼業を強いられている人間」


「ハンター……?」


「この辺りに獣や魔女の被害に遭っている街や村の話はないか?」


「たしか、……ブレーメンの街で……獣たちが暴れているというのを……聞いた事があります」


「ブレーメン、礼を言う。それと……アンタの大切だった人は……残念だったな」


「でも、最後は安らかな表情でした……」


「アンタ、これからどうするの?」


「私もハンターの旅に同行してもいいでしょうか」


「何ができるの?」


「ダンスを少々」


「……んと、他には?」


「特にこれといっては」


「やめときな。私だって血反吐を吐くほどの訓練してハンターをやらされてんだ。今思い出してもあの訓練は異常だったし。あのババア、私が死なないためだって言いながらガチで殺しに来くんだよ。虐待だよあれ、ほんと。」


「なんかすいませんでした。軽い気持ちで言ってしまって」


「いや、いいけど。帰るところはあんの?」


「自分の村に帰ります。両親は死んでしまったけど、以前お世話になっていた親方を頼ろうかと思います」


「そう、気をつけて向かいなよ。この辺にも妖獣が増えてるみたいだから」


赤ずきんは刀紐を肩にかけ歩き出した。


その後ろ姿を眺めながらベルはつぶやく。


「送っては、くれないのですね……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ