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り・くりーげりん 童話少女戦記  作者: 蒲生たかし
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第4話 髪長姫ラプンツェルとモーニングスター

第4話 髪長姫ラプンツェルとモーニングスター


ある村はずれに塔が建っていた。


その最上階にはひとりの女の子が住んでいた。


その少女の髪はとても長く、黄金に輝いてた。


今日もこの少女の世話をする老婆がやって来た。


「やぁラプンツェル。変わりは無いかい?」


ラプンツェルと呼ばれた少女は窓に頬杖をつき外を見ていた。


「ラプンツェル!」


「あら、おばあさま。来ていたのね」


ラプンツェルは長い塔の中の生活で気がつけば空を見てボーっとする癖がついてしまっていた。


「またボーとして、この子は」


「おばあさま、わたし外の世界を見たいわ」


「いつも行っているだろう、外には危険が多いんだ。そんなところに可愛いお前を行かせられないよ」


「じゃあ、わたしは一生ここで暮らすの」


「もう、この話はここまでだよ。さぁ、いつもの様に髪の手入れだよ」


老婆は少女の髪を少し切りカバンに入れた。


老婆は食べ物を置くとそそくさと帰って行った。



その夜、夜空を眺め外の世界の事に思いを馳せていると、物音がした。


しかし、ラプンツェルは気付かない。


「ラプンツェルかい?」


奥から中年の女性が現れた。


「誰? なんでわたしの名前を知っているの?」


「なんでも何も、私はお前のお母さんだからだよ」


!?


「わたしにはおばあさましかいないはず」


「今からお前に真実を教えるよ」


話はこうだ。


病弱だったラプンツェルは幼い中で流行り病にかかり長くないと言われた。


藁にもすがる思いの両親は、村外れの魔女に頼みに行った。


魔女の出した条件は、病を直す変わりに魔女がその子を育てるというものだった。


我が娘の命が何より大事とその条件をのんだ。


娘の病が治り数日経つと魔女が迎えに来た。


抵抗した父親は魔女の呪いにより死んでしまった。



ラプンツェルは聞いた話をにわかには信じられなかった。


すると母親と名乗る女性は首飾りを取り出した。


「これが親子の証だよ」


受け取ってみたが何かは分からなかった。



「誰だい、紛れ込んでいるのは?」


老婆が突如現れ、不思議な力で母親と名乗る女性を塔の窓から吹き飛ばした。


数秒後、ドサッという物が地面に落ちる音が聞こえた。


「大丈夫だったかい、ラプンツェル」


「今の人は?」


「ただの野党か何かだろう、全く怖い世の中だねぇ。さっきの女はお前に何かを言っていたかい?」


ラプンツェルは「何も聞いていない」と嘘をついた。


「そうかい。それじゃあ、今日も遅い。もうお休み。夜ふかしは髪に悪いからね」



老婆が帰ったあと、さっきの女性が渡してきた首飾りをもう一度見た。


聖母を型どったもので、何かいびつさ、というか欠けている印象を持った。


その時、思い出した。


基本塔から出してもらえないラプンツェルが自分の髪を使って地上から拾い上げた物をいれている箱があった。


老婆も気がまぎれるならとその遊びは許していた。


その箱を開けると中には様々な物が入っていた。


そこから小さな割れた少女の像を取り出した。


これは小さいころに肌身離さず持っていた物だ。幼少期の記憶の無い彼女だったが、彼女の記憶の始まりはこの像からのモノだった。


その少女の像と女性の持って来た聖母を型どった像を近づけてみると、断面が同じ形であることに気づいた。


二つを併せると、一つの像となった。聖母が優しく幼き少女を抱いている構図だった。


ラプンツェルの頬に涙が流れた。


思い出したのだ、さっきの女性は母親であると。


幼いながらも、別れ際に渡された首飾りの事を。


ということは、今まで育ててくれた老婆は両親の敵。


ラプンツェルは決意を固めた。



数日後、老婆がラプンツェルの元へやって来た時、いつもと雰囲気が違う事に気づいた。


「どうしたんだい、ラプンツェル。姿をお見せなさい」


その刹那、鉄球が老婆の顔面に向かう。


老婆は間一髪でそれを避ける。


「なんだい、どういうつもりだいラプンツェル!」


「黙れ、この腐れ外道!」


再び鉄球が老婆めがけて飛んでいくが、それもよけられる。


ラプンツェルは自身の長髪に鉄球を付けモーニングスターの要領で振り回していた。


「トゲ付きの鉄球? どこでそんなものを?」


「この塔から釣り上げたのよ。まさかこんなところで役に立つとは思わなかったですけどね」


ラプンツェルはグルんグルんと髪につけた鉄球を回した。


「お止め! 大事な髪が痛んでしまうでしょう」


「お前はわたしの髪のために、両親を殺したのか!」


老婆はやれやれといった風に座り込んだ。


「全く、どこでその事実を知ったのかねぇ」


「じゃあ、やはり」


「そうさ、お前の父親も母親も私が始末してやったのさ。素直にあんたを渡していれば死なずに済んだのにね」


「なんでわたしを?」


「あんたの髪は私の魔法の力を強める効果があるのさ」


「そんな自分勝手な理由で。許さない!」


老婆は鉄球を交わし続ける。


「こんな攻撃じゃあ、私はやれはしないよ」


余裕を見せる何か魔法を使おうとした老婆だったが、足元の何かに躓き転んだ。


躓いたのはラプンツェルがワイヤーの様に部屋に巡らしていた髪の毛だった。


受け身もとれずその場に倒れ込む老婆。


「死ね、魔女!」


転んだ魔女に渾身の鉄球を叩き込んだ。


魔女はそのまま果てた。


念のためにと魔女の首に髪を巻き付け、塔から投げた。


しばらく待ってから引き上げ完全に死んでいる事を確認した。



これでもう、誰も塔から出るなという者はいなくなった。


ラプンツェルは少しの装備を持って塔から降りた。



初めて見る外の世界。自由を満喫しつつ、これからどうしようかと考えていた時、男女二人組の若者が近づいて来た。


女の方がラプンツェルに尋ねて来た。


「このあたりに魔女がいると聞いてきたんだが、何にか知らないだろうか」


魔女? 確かにこの女性は魔女と言った。


「魔女なら私が今殺して来ました」


「え? あなたハンターなの?」


「ハンター?」


「では、ないようね。なぜ魔女を殺したの」


「わたしの両親の敵だったからです」


「そう、それにしてもあなた、すごく綺麗な髪をしているのね」


「ありがとうございます」


「そうだ、まだ名乗ってなかったわね。私はグレーテル、そっちにいるのがヘンゼル。私たちは魔女や妖獣を退治して旅をしているの」


「わたしはラプンツェル。さっき親の敵であった魔女を殺しました」


グレーテルが言う。


「私たちはハンターとして旅をしているんだけど、あなたも一緒にどうかしら?」


「それは助かるわ。実際外の世界の事を知らないから、どうしようかと思っていたところなの」


こうしてラプンツェルはヘンゼルとグレーテルと共にハンターとしての旅に参加することになった。

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