第3話 ヘンゼルとグレーテルは武器商人
第3話 ヘンゼルとグレーテルは武器商人
ヘンゼルとグレーテルは森に捨てられた。
村では飢饉がおこり、食いブチに困った何人もの親たちは子供たちを森に捨てていたのだ。
自分たちは親に見放されたと幼心にも気づいてはいた。
帰った所で邪魔者扱いされると分かっていたので、やり切れない思いでいた。
どこへ行くともなく、二人は無言で暫く森を進んだ。
すると前方に家を見つけた。
家はお菓子で出来ていた。
お腹の減っていた二人はその家を食べ始めた。
すると中から老婆が出て来た。
「す、すいません!」
ヘンゼルは慌てて謝った。
「いいんだよ。それより家の中でゆっくりと食べたらどうだい、紅茶も入れてあげようね」
「ありがとうございます!」
二人はお菓子と紅茶をご馳走になった。
お腹が一杯になり、二人は寝むりに落ちた。
ヘンゼルが目が覚めると牢屋に入れられていた。
「目が覚めたかい」
見ると老婆は包丁を研いでいた。
前には凄い温度で燃えている炉があった。
「ご馳走をしたからねぇ、今度は私がご馳走にならないとねぇ、ヒッヒッヒッ」
グレーテルも目を覚ました。
「どうしたのお兄ちゃん。なんで私たち牢屋の中にいるの?」
「あのババアがオレたちを食べるんだってさ」
「はぁ? 何言ってるの、人間は食べ物じゃないわ。もうボケてしまっているの?」
「ヒッヒッヒッ、人は人を食べないよ、でもね魔女は人を食べるんだよ。牢屋の奥をご覧」
二人は捕らえられている牢屋の奥を見て驚く。
「あのババア、本当に食べてやがる……」
そこにはいくつもの白骨化した死体が転がっていた。
魔女は牢屋に近づき、ドアを開け、ヘンゼルの腕を掴んだ。
その瞬間、ヘンゼルは握っていた土を魔女の目をめがけて投げつけた。
「な、なんだい!?」
視界を奪われ動揺する魔女。
すかさずグレーテルは魔女の包丁を持っている方の腕を落ちていた人骨で打ち付けた。
魔女が包丁を落とすとヘンゼルは魔女の背中に周り首を絞め、そのまま落とした。
二人は魔女を引きずって炉まで運び、そのまま投げ込んだ。
そして炉の蓋を閉めた。
魔女は断末魔を聞きながら、二人は紅茶を入れ一息ついた。
「だから組手の訓練を続けて良かったろ」
ヘンゼルはグレーテルに言った。
「オレたちは弱い立場なんだ、親にも捨てられ、森では魔女に食べられそうになる。だから俺たちは強くならなきゃならないんだよ。油断していた相手とはいえ、俺たち二人で魔女をやれたんだ。訓練すればあらかたの魔物は潰せるさ」
紅茶とお菓子を食べて、少し落ち着いた二人は魔女の家を物色した。
「あのババア、中々蓄えているな」
「食べ物も結構あったよ」
「武器に関する本も充実しているな。よし、幸いな事に、炉もあるし、武器作りの腕を磨こう。数年あればそれなりの腕にはなるだろう」
二人は魔女の家を拠点とし、自己鍛錬、武器作りの毎日を過ごした。
月日が流れ、二人は立派な戦士となっていた。
さらに、剣、槍などに留まらず、銃の様な複雑な物まで作れるようになっていた。
二人の作る武器は近隣の人間にも評判で、なかなかの商売となっていた。
だが、武器生成と訓練の日々で、ヘンゼルはオタク気質が高まり武器の細工に凝る様に、一方のグレーテルは淡白に相手を潰せれば何んでもいいという、全く真逆の性格に育ってしまった。
「見ろよこの取っ手の細工、まるで匠の職人が施したかの様な見事な出来栄えだろう。我ながら自分の腕にほれぼれするぜ」
「汗で滑る、外して」
「は? 何言ってだよ?」
「外しなさい」
「お前には、これほどの芸術品がお前には理解できないのか?」
「武器はね、相手をやれるかやれないかだけの。必要なのは殺傷能力だけ。芸術性? 相変わらず頭わいてるわね。これだからオタクは」
「お客さんの中には、さすがヘンゼルさんのデザインは秀逸ですねって評判だったりするんだぞ。あとオタクじゃねーから」
「“一部”のお客さんにね! この話はここまで。はい終わり、いつまでもグダグダ言ってないの!」
「オタクじゃ無いからな!」
毎日がこの調子である。
また、魔女の蔵書の中には妖獣に関する物があった。
二人は書物を読み、ひたすらにこれらの妖獣たちをどう殺すかのみを考えた。
頭の中では各妖獣を数十回は殺している。大体の場合は初手で首を斬り落とす形となった。
まぁ、長年ひたすら魔女妖獣を殺す事と武器創りしかしてこなければ、正確が偏屈になり歪んでしまうのはしょうがない事だ。
準備が十分にできたと二人が納得した日、たくさんの武器を抱え、二人はその妖獣を狩る旅に出る事を決めた。
「武器を売りつつ、生計をたて、妖獣を狩り旅を続ける、そんな旅になるだろうな」
ヘンゼルがにセンチメンタルに浸ってそう言う。
「まぁ、基本これまでと変わらないじゃん」
グレーテルはばっさりとこう切り捨てた。