第2話 マッチ売りの少女とダイナマイト
第2話 マッチ売りの少女とダイナマイト
「マッチいかがっすか~? マッチいかがっすか~?」
冬、寒さが厳しい最中、街角で少女がマッチを売っている。
安価なライターが出回る世の中で誰ひとりとしてマッチ売りの少女に耳を傾けない。
「あ~、無理っしょ無理っしょ。このご時世に誰がマッチなんて買うっての。冗談じゃないっての」
そんな中、空から雪が降って来た。
「しかも雪とか、もうマジ勘弁」
暖を取るため、マッチ売りの少女は売り物であるマッチをすり火を灯した。
あたりにあるゴミに火を付け焚き火をしていた。
「燃えちゃえ燃えちゃえ。ミニキャンプっしょ~♪」
すると二人の警察官が駆けつけ、火を消すように指示をした。そして保護者と住所を言うように迫った。
マッチ売りの少女が困惑していると、近くで突然爆発が起こった。
警察はマッチ売りの少女に「ここにいるように」と言い残し爆発の方へと向かった。
「待てと言われて、待つバカがいるかっての」
マッチ売りの少女はそそくさとその場を逃げた。
この少女の名前はアンネ・マリー。両親とは死に別れ、身寄りのなかった彼女は孤児院に引き取られた。この院長が工場から安価で仕入れた大量のマッチを子供たちに街頭で売らせ、孤児自らの食いブチの糧を得るために働かされているのだ。
薄暗い路地裏でひとりのスーツ姿の男が壁に寄りかかり座っていた。
「これは可愛いお客さんだ……」
力なくそうつぶやくその男、よく見ると背中から大量の血が流れ壁をつたっていた。
「ちょ、大丈夫なのそれ?」
「大丈夫では、ないね。君はこんなところで何をしているのかな?」
「んーとね、マッチ売ってて、マッポにつかまりそうになって、ドカーンって爆発が起こって」
「その爆発は俺が起こしたものだね。街に妖獣が入り込んでそれを狩りに来たんだけど、返り討ちに遭ってしまってね」
「はぁ? ヨウジュウ? 何それ何それ?」
話していると、路地裏の入口に大きな獣が立っていた。
「参ったな、付けられていたか」
男は立ち上がろうとするが、膝を落とし立ち上がる事ができない。
「ここは俺が引き付ける、君は逃げろ!」
獣が男に襲いかかる。
男はカバンから何かを出して、それに火をつけ獣に投げた。
ネコの獣はその鋭い爪で投げつけられた物体を微塵にした。
「ダイナマイトを導線のみならず全体を細かく刻んでくれるとは」
再び獣が男に襲いかかる。
立っているのが精一杯で避けきれない。
その時、少女は男に飛びつき、獣の攻撃を一緒にかわした。
「逃げろって言ったのに……」
「逃げる? は、冗談っしょ!」
少女は男のカバンからダイナマイトを数本取り出し、瞬時にその全てに火をつけた。
「なんて手さばきだ」
「えー? こんなの別にふつーじゃん、あたし毎日マッチ擦ってんからんねっ!」
言うと数本を獣の方に投げつけた。
獣は再びその数本のダイナマイトと微塵とした。
その隙に少女は獣の懐に忍び込み、口の中に火が灯ったダイナマイトを押し込んだ。
「ニャンコの出来損ないが! 調子に乗んじゃねーっての!」
獣は後ずさしし、お腹がボンッ! と膨らみ息絶えた。
男は念のためとナイフで獣の首と胴体を分断した。
「ふう、これで大丈夫……」
「ねーあんた、傷ヤバそうだけど行く当てあんの? 無いならあたしんとこの孤児院に薬くらいはあると思うけど」
「助かるよ、それにしても君の身のこなし、ただ事じゃなかったな」
「ひもじい生活おくってんかんね。カタギの生き方してないってのよ」
「そうかい、しかし、君にはハンターの資質があるみたいだ」
「ハンター?」
「そう、さっきの様な妖獣を狩る正義の仕事さ」
「正義? いやー無理っしょ。あたしなんて人から物スルくらいがせいぜいだよ」
「いや、俺がしっかりと仕込んでやるよ、ダイナマイトのつくり方や体術など妖獣の狩り方をね」
「でもやられてたじゃん」
「結構痛い所つくね。大丈夫、教えるのは得意な方だから」
こうして、マッチ売りの少女の妖獣ハンターとしての生活が始まった。
「あーあ、あたしの夢は超イケメンの金持ち玉の輿奇跡のボンビー生活大脱出って感じだったのになー」