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り・くりーげりん 童話少女戦記  作者: 蒲生たかし
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第1話 赤ずきんと日本刀

第1話 赤ずきんと日本刀


赤ずきんのメイジーは幼少の頃より、元兵士の貿易商であった父より剣術の真似事を仕込まれていた。


出張先の事故で父が死んだ後も独学で剣の修行を続けた。


父からの唯一の形見は、はるか極東にあるというジャパンという島国の「刀」という剣だった。


なんでも西洋に視察に来た旅団の日本人と仲良くなり、その刀をもらったらしい。


赤ずきんはその刀を片時も離さなかった。そして毎日の手入れもかかさなかった。


そのせいで友達もできず、少々陰キャな性格に育ってしまった。


それはそうである、目つきの悪い小さな女の子がいつも刀を持ち歩いていては、友達などできるわけがない。


そんなある日、母親より、森に住むおばあちゃんに食料を届けるお使いを頼まれた。



赤ずきんには、なぜ年寄りにもかかわらず一人で危険な森の中で暮らしているのかが分からない。


「不便この上ない生活をなぜしているのかしら、人嫌いだとは聞いているけど、それにしたってどうかしてるわ。変人なのよきっと」


正直、赤ずきんのメイジーにはおばあちゃんの記憶は少ししかない幼少期、父の葬儀で会って以来だ。いつも旅をしているという話しか聞いていなかったのだ。


だが母よりのお使いなので仕方なく向かった。



森を進むと、一匹のオオカミと遭遇した。


にじり寄って来て、何か企んでいるようだったが、刀を抜くと後ずさりして逃げていった。


「最近物騒になって来てるわね。おばあちゃんは大丈夫かしら」



しばらくして母からもらった地図の通り進むとおばあちゃんの家が見えた。


すると突然、家の方からけたたましいマシンガンの銃声らしき爆音が聞こえた!


急いで家の方に向かう。


オオカミがガラスを割って家から飛び出した。


それを追いかけ銃を放つ老婆、というかおばあちゃん。


オオカミは吠えると少し大きくなった。


おばあちゃんのもとに駆け寄る赤ずきん。


小さい時の記憶だけだったメイジーはおばあちゃんの巨漢ぶりに少しビビる。まるで巨大な山の様だと感じた。


「おや、来てたのかい、今ちょっと取り込み中だから待っておくれ」


くわえタバコのおばあちゃんはそう言うと大きな銃、ガトリングガンをオオカミに向けた。


赤ずきんには何が何だか分からなかった。


おばっちゃんは銃を連射し辺りにはけたたましい音が響く。


オオカミは凄い速さで銃弾を避け続ける。普通のオオカミとは違う事が一目瞭然だった。オオカミからは黒い湯気の様な物が湧いていた。


「今度の妖獣は中々のはやさだねぇ、だけど……」


おばあちゃんはガトリングガンを投げ捨てた。


それを見て、オオカミはおばあちゃんに向かって来く。


交差するかと思われたが、互いに身体を押し当てて動きが止まった。


すると、オオカミの腹から血が垂れる。


おばあちゃんの大振りなナイフがオオカミの腹を貫いていた。


「速いだけの妖獣なんて刺してしまえばそれまでさね」


オオカミが腹を抑えて後退りする。


おばあちゃんは赤ずきんの方を向き大きな声でこういった。


「さぁ、試験の時間だよメイジー、お前の獲物はその剣だね」


「日本刀というらしい、です」


赤ずきんは鞘に手を振れそういった。


「そうかい。じゃあ、それであの妖獣に止めをさすんだ」


「で、でも!」


「でもじゃないんだよ! あの妖獣はほっておけば身体を治し、再び人を襲うようになる」


オオカミは息を整え、赤ずきんたちを睨めつけている。


「回復して人を襲う前に、しっかりと駆除するんだ!」


オオカミは逃げるか、戦うかを迷っている。


「やるんだよ!」


おばあちゃんの怒号ともとれる合図の言葉に、赤ずきんは刀を抜き、正面に構えた。だがその剣先は震えていた。


震えを見てとるや、オオカミは赤ずきんに向け突進してきた。



オオカミの爪が赤ずきんを捉えるかと思われた刹那、オオカミの首が飛んだ。


「ほう、やるじゃないかい」


おばあちゃんはタバコの煙を吐きながら微笑んだ。


メイジーは震えて立ちつくしている。


「さぁ、お母さんから葡萄酒とサンドイッチを預かっているだろう、中で食べようかい。詳しい話は食べながらだね」


おばあちゃんは赤ずきんをつれ家に入った。



「どこから話すかね」


おばあちゃんは葡萄酒を飲みながら話始めた。


「実は獣の中には妖気をまとって妖獣化して人を襲う奴がいる」


赤ずきんはサンドイッチを食べながら聞いている。


「そんな妖獣を狩る仕事を私はしている。そしてお前もこれからその仕事に参加するんだ」


!!


赤ずきんは驚き食べている物を吐き出した。


「わたしが!? 無理無理無理無理無理無理無理無理!」


「大丈夫、私がしっかりと鍛えてあげるから。独学で剣は練習していたようだが、基礎からちゃんと叩き込んでやるよ」


「なんで私なんですか! お父さんもお母さんもそんな事してなかったし!」


「お前、何も聞かされてなかったのかい?」


「何をですか?」


「お前のお父さんは妖獣ハンターだったって事?」


「え!? だってお父さんは出張先の事故で」


「妖獣狩りで死んだんだよ。分かったよそこから話そうか、私たちの家系の話を」


こうして赤ずきんの妖獣ハンターとしての生活が始まった。


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