表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

1

隣の席の女の子が気になる


いや、特に好意を持っているとか友達になりたいとかではなく、単にいつもと様子が違うのだ


隣の席の女子、【芹沢(せりざわ) 麻代(ましろ)】は陸上部に所属している元気で笑顔の似合う女子である


綺麗な黒髪を肩まで伸ばし、健康的で日に焼けた肌が眩しい


友人も多くいるようで、毎朝わざわざその友人の席まで歩いて行き朝の挨拶をしているところをよく見る


そんなクラスでも中心人物の1人である女子が、朝からこの放課後までずっと机に座り下ばかりを見ているのだ


しかも時折何故か鼻をならし目元に涙をためている


正直とても気になって勉強どころではない


私の授業時間への激しい妨害である


しかも、話しかけづらいのは分かるが誰もかれもがその女子を遠巻きに眺めているのはどういうことだ?


お前達の友情はそんなものかと説教をしたくもなるが、私も声をかけていないので同罪である


というかまずこの女子と友人でもない私には説教する資格すらなかったか


そういうことで、気にはなっていたものの私はほかのクラスメイトと同じように麻代には声をかけず、そのまま近々あるテスト勉強にいそしむため帰宅の準備をした


ここで私は気を抜いていたのだろう


筆箱が開いたままの状態で机の中から落ちてしまい、中身を床にぶちまけてしまったのだ


大きな音で視線が集まったのを感じる


私は注目されるのは日本人らしく苦手なので、顔を熱くしながらも急いでペンやら消しゴムやらを拾っていく


そして定規に手を伸ばした時、私以外の手が私の定規を掴む


それは私の持ち物だぞと地面に向けていた顔を上げると、そこには泣きはらした目があった


数瞬頭が真っ白になり、遅れてからそれが定規を拾った麻代であると理解した


「…………」


「…………」


そしてこの無言である


…なんだこの空気は?


周りをちらりと見ると、まだ帰っていないクラスメイト達がかたずをのんでこちらを見ている


いったいなんなのだ?


私がいったい何をしたと言うのだ?


「……あの、これ」


自分の運命を嘆いていると麻代が定規を差し出してきた


その声は若干鼻声で、湿気を帯びていた


「あ、ありがとうございます」


「…いえ」


私が定規を受け取ると、麻代はすぐに視線を外し自分の帰宅の準備を始める


…なんだその態度は?


まるで誰かに話しを聞いて欲しそうではないか!


何故他人に声をかけられるのを待っているのだ? 何故自分から何があったか言わない!


「あ、あの、なにかあったんですか?」


「…え?」


私は気づいたら声をかけてしまっていた


まぁ、定規を拾ってくれたお礼である


私は義理堅いので受けた恩は即座に返すのだ


「今日、あの、ずっと落ち込んでいらしたようなので…」


「あぁ、そう? なんか気を使わちゃったね」


まったくである


麻代はこちらに身体を向けながら申し訳なさそうな顔をした


「…話し、聞いてくれる?」


「わ、私でよければ…」


ここで私が断ったらこいつはいったいどうしたのだろうか…


そんなことを考えながら、私は貴重な時間をこの麻代につかってやることにしたのだった







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ