人涙腺
僕が明日死のうとも
僕の為に
泣く者など居ない
泣いている者は
自分の為に
泣いているのだ
自らの不甲斐なさを
自らに問うている
それは自分の為に
泣く事なのだ
僕以外に
僕の為に
泣く者など居ない
勝手に作り変えた涙を
三回忌の集まりで
話している
誰かが良い奴だったと言えば
そうだったと
誰かが同意した
死人に口無し
誰かがあの姿を見て
滑稽に思ったから出来たのだろう
本当に滑稽で
人が居なくなるって事を
履き違えている
そんな人間と
友達だったなんて
僕は僕の為に
片隅で泣くのです
僕が明日死のうとも
僕の為に
泣く者など居ない
バラバラにされれば
そこに意志など無い
ただの骨に対して
涙を流すのなら
誰にその姿を
見て貰いたいのか
あの子の場合は
きっとあの人
サラッと出てくるものだ
やっぱり
僕以外に
僕の為に
泣く者など居ない
勝手に利用している涙は
殆どの人間が
それを利用している事を
認めている
感動を現す時に
泣いているのも
その一つで
そんな姿を見た人間の心情も
変えている
そうやって
一番最初が有耶無耶になって
僕の死もそうやって
有耶無耶になる
物体が無くなるとは
どんなになろうと
物体が無くなる以上の結果は無い
だから
僕は僕の為に
片隅で泣くのです
全ての終わりを
涙で片付ける人類は
そこへ理屈をこねて
正当化していく
それが生きているという事で
死んだ者には
関係ないという事を
僕等は生きている内に
知る事は無い
ゴミ箱を漁ったって
出てきやしない
墓参りをしたって
出てきやしない
愛情を語っても
出てきやしない
家族や友人を
ひっくり返したって
出てきやしない
明確な終わりとは
そういう物です
勝手に流れてくる涙は
僕が流させている物では無い
死んでしまった事象への
一種の感動かもしれない
まるで
初めて出会ったかのように
勝手に流れてくる涙は
僕が流させている物では無い
世界中で僕の為に泣けるのは
僕以外には居ないのだから
その涙は
あなた自身の為なのです
勝手に流れてくる涙は
僕が流させている物では無い
人が死んでいながら
あなたは
人の遺体を前にして
反省と後悔をしているだけなのです
そんな物は
他所でやっていただきたい
泣きたいのは
こっちなのだから
勝手に流れてくる涙は
僕が流させている物では無い
だから
僕は僕の為に
棺桶の中で泣くのです
ひたすらに
棺桶の中で泣くのです