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第1話~それは驚きをもって始まった~

*登場人物紹介*

春香詩織はるかしおり

本作の主人公。高校二年生。緊張するとうまくしゃべれない。漫画を描くのが大好き。


◯謎の男

放課後の教室にいた男。



私は漫画を書くのが大好きだ。

授業中、よくノートの片隅に棒人間が主人公の簡単な漫画を書いている。

授業中だけじゃない。

昼休憩の時も。

帰りのホームルームの時も。

学校にいる時はほとんど、漫画を書いて過ごしている。

こうやって、漫画を書いている時が一番幸せかもしれない。

私には友達がいない。

できれば仲の良い友達をつくって、一緒に昼ごはんとか食べたい。

でも、いまのところそれができない。

なぜなら、私は自分からうまく話せないのだ。

緊張すると言葉がうまく発音できない。

たとえば、「おはよう」や「ありがとう」と言いたい時、最初の「お」や「あ」といった母音がなかなかでてこない。その結果、「おおおおおはよう」や「あああありがとう」といった風になってしまう。

リラックスしてる時は普通に会話できる。

アメリカンジョークとかも普通にいえる。

両親からは落ち着いて話せば大丈夫と言われるがそれができるなら、最初っからしているよ…。

その結果、私は自分の殻に閉じこもるようになってしまった。


***


「あっ!?ない!」

下校途中、私は漫画を描いたノートがないのに気がついた。

どうやら、教室に忘れてきたようだ。

もし、誰かに見られでもしたら…。

さすがに恥ずかしい…。

取りに戻らないと…!

私は大急ぎで教室に向かった。


誰もいない廊下を駆け足で駆けていく。

私のタ、タ、タ、という足音が廊下に響いていた。


「ガチャ…」

教室の戸をゆっくりと開ける。

この時間帯なら誰もいないと思ってた。


でも…。


一人だけ教室に残っている人がいた。

それも……男子だ!

ちなみに私は家族以外の男の人と話したことがない。

でもこの人、見たことがない。

うちの学校の制服を着ているが同じクラスの人じゃないみたいだ。

それも…。私の漫画ノートを見てる!


「これ、キミが描いたの?」

男は私に気づくと笑顔でそう言った。


恥ずかしい…。恥ずかしすぎる!

「ああああ…!」

声にもならないような声をあげた後、私は走って教室から出た。


「あっ!ちょっと待って!」

私のことに気がついた男子はそう言うと追いかけてきた。


「ご、ごめん!読んでしまったのは謝るよ。机の上に置いてたままだったからつい…」


後ろからさっきの男子の声が聞こえてくる。

机の上に置いてたままだったのは私が悪い。

でも勝手に人のノートを見るなんて…。

あんまりじゃないか!

考えれば考えるほど私は恥ずかしくなった。


「ちょっと待ってよ!ノートの漫画…。面白かったよ!」


ピタッ。

私の足が止まる。

面白かった…?

私の漫画…が?


「ほほほほんとうですか??」

緊張で声が震える。


「うん!本当だよ。なんていうかストーリーが独創的で…。すごい魅力的だよ!」


独創的…。それは本当に誉めてるのだろうか?

私はついそう思った。


「どどどどくそうてきってほほほほっ…」

ダメだ。極度に緊張している。

うまくしゃべれない。

こんな自分が心底嫌になった。


「はい、これ」

男は私にメモ帳を渡した。

そして、すっかり顔が赤くなっている私に向かってこう言った。

「筆談ならどう?これなら緊張してても大丈夫」と。

カキカキカキカキ…。

私は「独創的って誉め言葉なんですか?」とメモ帳に書いた。


「うん!なかなかこう言ったストーリー描けないよ。続き明日また見せてよ。この時間帯にこの教室に来るからさ」

男は微笑みながらそう言った。


カキカキカキカキ…。

私は「ありがとう(^_^)とても嬉しいです」とメモ帳に書いた。


「約束だよ。漫画の続き楽しみにしてるから。それじゃそろそろ俺帰るから!ちょっと急いでて。またね!」

男は颯爽さっそうと走り去っていった。


男の帰る姿を見ながら私は思った。


「あっ!名前を聞くの忘れた」と。


こうして私と不思議な男との1日目は終わった。




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