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なかよし

作者: 葛沼純

 ある時代。ある国。ある村。


そこには幼い子供と優しい大人がなかよく暮らしていました。

子供達はいつも大人達に遊んでもらっていました。そして、遊び疲れた子供達に大人達は美味しいお料理を作ってあげます。


「いただきます」


元気一杯に声をあげます。するとどうでしょう。みんなとってもお腹が空いていたようですごい勢いで食べ始めました。その姿はとても微笑ましく自然と頬が緩んでしまうかのようです。


お腹一杯になったら、次はお風呂に入ります。優しい大人達は子供達の体をキレイに洗ってあげます。くすぐったいのでしょう、子供達は少し照れたように体をよじります。けどそれでも大人達は大丈夫。慣れた手つきで、キレイに洗ってあげるのです。最後は頭からザブーン。お湯で泡を落としてピッカピカです。湯船にはキチンと30秒肩まで浸かります。お風呂の中は元気よく30を数える声が響いていました。


お風呂で暖まった後はおやすみなさいの時間です。たくさんある二段ベッドからはひそひそ話をする声が聞こえます。けれど、みんな良い子達です。


「静かにしてね」


言われた通り、みんな静かにお布団を被りました。そして数分後、聞こえるのは寝息のような優しい声だけになりました。


お外は真っ暗。お月さまだけがキラキラと光ってみんなを見守ってくれています。

おや? 見守っているのは、お月さまだけではないようです。

カタンコトン。カタンコトン。

音のする方へ行ってみると、そこでは大人達がせっせと明日の準備をしていました。みなあくびをこらえながら一生懸命頑張ります。その姿を見たら、子供達はきっと喜ぶでしょう。けれどそれは出来ません。子供達はすやすや夢の中だから……


そんな毎日。みんなニコニコ楽しそう。けれど、そんな楽しい日がずっと続くとは限らないんです。


 朝。いつものように目をさました子供達は家の中がとてもしずかなことに気がつきました。ベッドから出て家のすみずみ、庭のすみずみまで見てみましたがいません。そう、優しい大人達がいないのです。

子供達にはどうすることもできません。じっと、大人達を待つことしかできません。


どのくらい経ったのでしょう。数時間? それとも数分? もしかしたら数日かも知れません。ただただじっと待っていた子供達に、すくいの手は差しのべられるのでしょうか。子供達の一人が祈ります。神様、どうかお救いください……と。


どうでしょうか、神様のおぼしめしかなにか。コンコン、と。ドアをたたく音。そして、キーとドアがひらく音。子供達のしせんは一点に注がれていた。ゆっくりと現れたその影に。

こんにちは。そう言ったように聞こえた。いやもしかしたらこんばんはかも知れない。だけどそんなことはどうでもいい。分からないことはしかたがないんだ。

影の話す言葉はむずかしかったけど、なんなとなくのことはわかった。優しい大人達は、お月さまのところに行ってしまったらしい。お月さまに行ったら、もう帰ってこない。


えーんえーん。子供達の一人が泣いてしまいました。それにつられるようにまた一人、また一人と泣きはじめました。

えーんえーん。えーんえーん。えーんえーん。なみだはとまりません。ながしてもながしてもとまりません。なぜだろう。なぜ、なみだはとまらないのだろう。そうか、ながさなかったからか。


影が言う。いっしょに来ないかい、と。いっしょに楽しく暮らさないかと。優しい大人達はいないけど、私がキミたちを守ってあげるよと。

泣いていた子供達はなみだをとめ、影に歩み寄りました。手をにぎったり、足にしがみついたり、抱きついてみたり。いつのまにか、影の周りには子供達が全員いました。いや、違う。たった一人を除いて。


キミは来ないのかい? そう問われると、女の子は少しだけ首を横にふった。その表情はどこか暗かった。

影は子供達をつれて行ってしまった。おうちには、女の子ただ一人。見守るのは、細くて悲しそうなお月さま。か細いひかりを見て女の子は静かになみだを流しました


 むかしむかし、あるところでおじいさんが山奥へ出掛けました。山を越えた先にある街へ向かうのです。

山を越える途中、おじいさんは廃村を見かけました。草は生い茂り何件かある家はもぬけの空です。静まりかえったそこからは不気味な雰囲気が漂い、人を寄せ付けようとしません。おじいさんは少し気にしつつも先を急ぐことにしました。しかし、ふと歩みを止めます。遠くなり始めたおじいさんの耳に微かに、微かに聞こえたのです。


「――な。――な」


声にならない声を。

声の元であろう、空き家のドアを開けます。家の中にはテーブルと椅子があるだけ。ホコリを被ってしまっている。もう何ヵ月と使われていないようです。

辺りを見回します。すると、部屋の隅。ガラスの割れた窓から差すひかりを避けるようにひっそりと座るそれが生きている人だと認識するまでには数秒の時間を有しました。

限界まで痩せた体は、ミイラだと言われても疑いを持たない程でしょう。眼は虚ろでまるでどこを見ているのか分かりません。顔はやつれ体の至るところに痛々しいアザが事の顛末をおじいさんに伝えました。

おじいさんは女の子を抱き抱えます。女の子は何かを呟きますが、それは言葉になる前にどこかへ飛んでいってしまいました。


山を降りてしばらく、おじいさんが一人で暮らす小さな家に着きました。おじいさんは女の子に食事をあたえました。女の子は最初は手を出しませんでしたが、しばらくすると静かに食べ始めました。

食事を終え、落ち着いたであろう頃合いを見計らっておじいさんは女の子にたずねます。なにがあったんだ。と。

女の子は顔を伏せだまったまま。時おり体を震わせ、すすり泣いてるだけです。おじいさんはそんな女の子を責めずに女の子が口を開くのをただじっと待ちました。

どのくらいの時間が経ったのでしょう。明るかった外は一面闇に包まれていました。その間、女の子とおじいさんの間に会話はなく、お互いに折れることなく静かに時が経つ今を過ごすだけ。まるでこの空間だけ、時間の流れが遅く引き伸ばされているかのよう。

時の流れを正したのは、女の子でした。女の子は静かに語ります。今までのこと。大人達のこと。みんなのこと。大人達と遊んだこと。大人達とみんなはなかよしということ、

話をする女の子は楽しげで、初めての笑みもこぼれていました。


女の子が話終えると、おじいさんは力任せに女の子を抱きしめました。女の子は苦しそうに顔を歪ませますが、おじいさんは気にすることなく抱きしめ続けます。年老いた男の顔には複雑に絡み合った思いが涙としての形で流れ落ちるのでした。その真を知る人はいません。これまでも、これからも。


 あれから何年の時が過ぎたのでしょう。少なくとも、女の子が少女へと姿を変えるくらいの時が経っていました。少女はとても優しく、明るい少女に育ちました。おじいさんと二人で暮らしたこの時間は少女にとって幸せな時でした。


 その日もいつもと変わらない朝でした。

少女が目を覚ますと、着替えを済ませてリビングに向かいます。すると少女は違和感に気付きました。そう、いつも少女よりも早く起きてコーヒーを飲んでいるおじいさんがいないのです。少女は不思議に思いあらゆるところを見て回りました。キッチン、お風呂、トイレ、庭……ですがおじいさんはどこにもいません。少女は困りました。探していない場所はおじいさんの部屋だけだからです。少女は昔からおじいさんに私の部屋には入ってはいけないと言われていました。

少女は悩みました。悩んで悩んで、思いきって少女はおじいさんの部屋の扉を開けました。


朝日が窓から差し込む部屋は、赤いベッドに寝ているおじいさんと、壁一面に貼られた紙ばかりでした。紙には全て『помогите』と延々に書かれていました。

少女はおじいさんの元へ駆け寄りました。おじいさんは息をしていません。おじいさんは死んでいました。おじいさんのそばには、一枚の手紙が置いてありました。書いてある字は難しくてよく分かりませんでした。けれど、一つだけ読めました。


「разлука……ラズルーカ」


おじいさんが少女を呼ぶときにいつも言っていた言葉でした。

少女。разлукаは家を飛び出しました。走って、走って、見知らぬ外を走り続けました。靴も履かずに出てきたので、足の裏は傷つき血が流れています。お腹も空いて目の前がクラクラしてきました。少女はふと、昔のことを思い出しました。

いっしょにいたみんなはなにをしているのだろう。大人達はどこにいったのだろう。

頭の中では記憶が走馬灯のように流れ、消えて行きます。次第に意識は薄くなり、разлукаはいつのまにか見知らぬ村の前に立っていました。

お花がたくさん咲いているそこでは、小さな子供達と優しそうな大人達が遊んでました。


「おや……?こんにちはお嬢さん。どうしたんだい?こんなところで」

「………………」


разлукаは言いました。


「みんな、なかよし?」


大人は、ニッコリと笑いながら言いました。


「ああ。みんななかよしさ」


少女は大人の顔を見て、笑ってみせてこう言いました。


「わたしもなかよしになりたいな」


少女は、また大人達と遊ぶことにしました。優しい大人達と遊んでご飯を食べてお風呂に入りました。


『みんななかよし』


少女は暖かいベッドの中で涙を流しました。



童話とは怖いものだ。ということを聞いたことがあったので今回は怖い……というよりエグイ話になりました。


あんまし解説とか面倒なのでしたくないですがお話の真の意味を知ってもらうためにもすこし書いていきます。


結論から言いますとこの話は幼い女の子が性奴隷として大人にチョメチョメされる様子を書いています。

序盤の子供と大人がなかよく暮らしている描写はすべて性行為の暗喩です。メタファーです。そういう情報ありきで読むとまた違う感覚を得られると思います。

終盤のおじいさんの死ですが、自殺で自分の首を掻っ切って死にます。ベッドが赤かったのは血の色です。

おじいさんの自殺の意図と壁一面に書いてあるпомогитеですが、実はおじいさん若いころに女の子を性奴隷として飼っていた過去がありました。おじいさんはразлука(ラズルーカ)を助けた時から過去に性奴隷としていた女の子を思い出し精神病になってしまいました。помогите(パマギーチェ)は助けて。という意味です。何年も耐えたお爺さんでしたがある日、耐えられなくなり自殺した。ということです。

разлука宛ての手紙にはразлука、性奴隷としていた子供達への懺悔の言葉が書かれていました。

そして最後、разлукаは再び性奴隷となりました。というのがこの話の真の意味です。

ちなみにразлукаの意味ですが、別れ。という意味です。おじいさんは性奴隷という過去からの別れと言う意味を込めてこう名付けましたがうまくはいきませんでした。


長々と書きましたが以上になります。少しでも楽しんでいたただけた幸いです。

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