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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

超自然が創り出す恐怖

招かれる

作者: 混沌

地下鉄のホームで私は彼等を待っている。腐りきった臭いの漂う世界への道を示してくれる彼等は、死を食らう獣だ。私は本を読んで彼等の存在を知ったのである。


暗い夜、雨の激しい音が闇を劈く仕事の帰りに私はホームでそれを拾った。意図的なのかうっかりなのかは知らないが、常人だったあの頃の私は取り敢えず持ち主を探すことにした。数分が経過したが一向に見つかる気配が無い。時々目にした黒いカバーが、私に何かを暗示しているかのように見えた。今思えば既に魅入られていたのかもしれない。


諦めて家に帰る。着いた頃には夜中を過ぎていた。完全に脳が覚醒していた私は、知らず知らずの内に本を捲っていた。


内容は恐ろしくも興味深い物であった。死体を貪る怪物の生態から知識、彼等の崇拝する邪悪な神々を喚び出す儀式の断片、欠片ではあれ、脳に刻みこまれるような感覚に陥るほど鮮明であった。血生臭い生活の流れが眼前に飛び出てくる気がして、狂気に囚われたのかと考えてしまうほどだった。実際に錯乱していたのかもしれない、私が床で目覚めたのは夜だったのだ。


私は彼等に出会う為に幾つもの失敗を繰り返してきた。呪文で喚ぼうと試みるも、緑色の膿が発生して辺りが名状し難い物に覆われたり、胡散臭い話ばかりするホームレスの老人に聞いてみても、それらしき情報は出てこなかった。挙句の果てにはUFOを見たとか、莫迦らしい物に変わったのだ。


老人の戯言を聞きながら私は知り合いにオカルト好きがいることを思い出した。全く、私もとんだ莫迦者だ。灯台下暗しとはこのことである。老人に淡々とした別れを告げた後、家に戻って車を走らせる準備をした。


知り合いの家まで1時間かかった。何時もなら面倒臭がりな私の機嫌を取るために、アチラから来るのだが、今回だけは事情が違う。頼み込まなければならないのだから、頭を下げる勢いでなければ駄目である。道路の脇に植えられた木々が、綺麗に揃った枝を揺らして出迎えてくれた。然し私には、枝が冒涜的な儀式を施す鋭い鉤爪に見えた。


留守のようだ。チャイムを鳴らしても足音すら聞こえてこない。骨折り損のくたびれ儲けだ。残念だと漏らしてから、私は車に戻ろうとしたその時である。突如ひとりでに扉が開かれたのだ。鈍い音を出す木製の扉が私の身体を縮こませた。恐る恐る中に入ったが、特に何も無かった。期待外れである。最後の部屋を漁っていたら、机の上に紙が置かれていた。メモ用紙だろう。


素晴らしい、私は心の中で叫んだ。彼等の住処が何処にあるのか描かれていたのだ。転移する呪文まで丁寧に記されている。目を見開いて、刮目し、私はそれを読み上げた。


我は汝等の仔なり、屍貪る汝等は我なり、汝等の知識は我の知識なり、我は世界を捨てるのだ!新しい世界を受け入れるのだ!


視界が歪み、何か私の必要な物が消滅して行く感覚が迸る。目眩く世界が映り変わるとき、私は居た。


身を投げた愚か者を貪る宴が開かれている。私は1匹の怪物に連れられて、巣を案内された。生きた人間が珍しいのか、涎を垂らしながら近付いてくる者も存在する。頭が痛くなってきた。気分が悪い、まるで誰かが私の脳を手で掻き乱しているようだ。鏡?


私は誰だ?此処は住処だ。私は誰だ?此処は愉しい。私は……


「誕生日おめでとう」

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