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十二ヶ月の姫君様  作者: 桜二冬寿
第四章 冬の感傷と温もり
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Prologue ――心の波

 黒色の画面にライトグリーンの線が波打って表示されている。波を起こすたびにピッと小さなビープ音が鳴る。それ以外に音のないこの部屋では、より一層の虚しさをそれが醸し出している。


 そのモニターを白衣を着た二〇代後半くらいの女性――エンスが訝し気に見ていた。右手を口に当て、うーんとその結果を見て唸る。

「やっぱり、現象は起き始めているか……」

 モニターの手前にあるキーボードを打ち込む。更にはマウスを使って、今のモニター画面に映し出されているような画像を何枚も開いた。

「四月の心電図は至って正常。今のもあまり変わりは見られないが……」

 エンスは胸ポケットに収まっていたボールペンを取り出し、キーボードの横に開いてあったノートにササッとメモ書きをした。

「若干、数が増えている……のか」


 メモ書きしたノートにはおそらくこの女性にしか読めないほど多くの書き込みがしてあった。人体の図から細かな日付、出来事、そして心電図の結果。日々によって変わることはかなり小さなことばかりだが、これが何カ月も続くとさすがに変わってくるものがあった。


 心電図の対象人物――ミラアが地球に来てからもうすぐ一年が経とうとしている。彼女は《十二ヶ月の呪い》という、ミラアの故郷である鏡花星において発症が確認されている特殊な呪いにかかっている。それは精神不安定が一年続くと命を落としてしまうという恐ろしいものである。

 しかし、ミラアは父のローデスと別れたときこそ不安定にはなっていたものの、隣に住む宮葉悠馬を初め、色々な人々との出会いによって仮説よりもかなりの例外で安定している結果が表れていた。


「これは、大丈夫ということなのか……? あまりにも変化が微小すぎる……」

 心電図には心拍数の若干の増加だけが見て取れた。しかし、それも異常の数値を記録しているわけではなく、正常と言える結果だったのである。

「まあ、前兆も何もないから様子を見るということで大丈夫なのかもしれないな」

 謎が多い症状なだけに、下手に治療に手を出し過ぎるとミラアの体にどんな異常が発生するか分からない。正常な数値が出ている以上は余計なことをしないことが鉄則である。


「ん……」

 エンスは手を組んで大きく体を伸ばした。時刻は午前四時。冬であるためにまだ暗いが、そろそろ就寝しなければ翌日の活動に支障を来してしまう。

 エンスはパソコンの後ろ側にあるベッドに体を預けた。ふかふかとした感触が疲れた体を癒していく。そのままエンスはすぐに眠りについた。


 ある声は聞こえないままに。



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