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十二ヶ月の姫君様  作者: 桜二冬寿
最終章 永遠の姫君
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epilogue ――いつもの日々

 カーテンに遮断された少量の光で目を覚まし、悠馬は軽く伸びをして春雨高校の制服に手を伸ばした。

 いつも通り制服に袖を通し、軽くネクタイを直してからリビングへと向かう。既に結希が朝御飯を作り終えてくれているのか、台所はもう静かだ。



 ☆ ☆ ☆



 ミラアをゴレイドから取り戻し、日本に戻ってきてから数日が経った。記憶を奪われ、鏡花星へと飛び、ミラアを連れ戻すというかなり非現実的な日々を送っていた数日を思えばむしろ違和感さえ覚える日常だ。


 ミラアと共に玄関のクローゼットから出てきたとき、エンス宅で様子を見ていた面々が宮葉家へと押し寄せてきた。真っ先に家に入ってきたのは真菜と苺だった。

 ただその時、悠馬はミラアと熱い抱擁を交わしている最中であったわけで……。


「そうですか、見せつけてるんですか」

 と、半目で呟いた苺の顔が今でも脳に焼き付いている。何だかそこそこの怪我は覚悟しなければいけないような雰囲気だった。

 その後ろで真菜は複雑そうにしていたが、柔らかい笑みを浮かべて、

「おかえり」

 と言った。

 その言葉で帰ってきたことを強く実感した。ミラアを抱きしめていたから余計にそうだったのだろう。全ての目的が達成できたことに喜びを噛み締めていた。


 その後はミラアが帰ってきたことをみんなで喜んだ。無事で良かったと泣きつく結希と羽花、心配したんだからと少し怒りつつも安心している苺。反応は人それぞれだったが、ミラアをずっと待っていたことだけは全員共通していた。

 時間も遅かったから、ある程度話を済ませたらみんなは帰宅していった。忘れがちだが翌日も普通に学校はあったので、無礼講というわけにもいかなかったのだ。


 ☆


 ここからはそれから聞いた話だが、ゴレイドはローデスに壮絶にやられてしまっていたらしい。外でカラスを撃退していたアリアが教会に入ったときには、もう見てられないくらいボロボロだったとか。

 ローデスが言うには一発しか殴っていないとのことだったので、やはりとんでもないパワーを持っている。悠馬も一度殴られたことがあったがよく生きていたものだとアリアも頬を引き攣らせていた。悠馬自身も今思い出しても怖い。


 間もなく教会には鏡花星の警察的な機関が駆けつけ、ゴレイドの身柄を確保した。何年にも渡って鏡花星を混乱させたわけだから、尋問もなかなか手厳しいものだったらしい。

 ゴレイドもついにローデスの前に現れたわけだから、かなり委縮してしまっているらしい。少しでもふざけたことを言えば命を奪われるなんて想像をしてしまうのだろう。


 とりあえず今分かったことは呪いを解除する方法はないということだ。根本的にゴレイドと共にいることこそが幸せだと洗脳して、離れると苦しくなってしまうという目的があったようで、解除方法はわざわざ設けなかったらしい。自分の手元にずっと置いておくということ大前提だったわけだ。

 それだけでもかなり顰蹙を買ったが、何と言っても十二ヶ月の呪いを開発した人物だ。更なる事情聴取が行われて、悪事が暴かれて行くだろう。




 ゴレイドの取り調べも最初の山を越えたころ、ローデスは正式に王の座を降りたそうだ。

 次の王には予定どおりにミーナが着任した。そのミーナの最初の仕事はローデスへの罰の決定だった。

 今までは権力で守られていたローデスも王を降りた今はミーナの言うことに従うしかない。子どもを捨てるというのは鏡花星でも法に触れる行為のようだ。

 ミーナがローデスに下した罰は辺境での従事を国の監視下で五年行うというものだった。


 その決定はミーナからビデオ通話で聞いた。

 またいつか、罪を償ったときは家族で会いたいとミーナは言っていた。それにミラアも複雑そうではあるが頷いていった。まだ本当の家族に戻るには時間がいるかもしれないが、いつかきっと戻れるのだろう。


 更にミーナはミラアを庇ったという理由で追放されていたエンスとアリアに研究員の資格を戻す案を出したが、日本でゆっくり暮らす方に慣れてしまったという理由で二人は断っていた。

 ミラアも悠馬たちと継続して高校に通うことを選び、本当に前までと変わらずエンスと過ごしている。

 様々なややこしいことがあったが、そのややこしいことだけが見事に解決して平穏な日常が戻ってきたというわけだ。



 ☆ ☆ ☆



 悠馬は朝食を終えて家を出た。清々しいほどの柔らかい光がまだ眠さの残るまぶたをくすぐる。

 悠馬が一歩を踏み出すと、向かい側の部屋のドアが開いた。透き通った水色の髪の毛が風に揺れる。それが太陽の光と相まって煌めいていた。

「おはよう、悠馬」

「おはよう、ミラア」

 二人はいつものように並んで学校へと向かった。

 その道の先がどうなっているのか。それはもっと先の話だ。




これにて十二ヵ月の姫君様は完結となります。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

私は今、社会人になってから4,5年くらい経ちますが、十二ヵ月の姫君様は中学生のときに考えた話になります。

高校、大学、就職と環境が変わる中で更新も年一になったような時期もありましたが、

何とか完結まで持ってこられたのは皆様のおかげと思っています。

ちょっと話し出すと長くなるとので、しっかりとした後書きや感謝は別途活動報告で掲載させていただいています。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/125480/blogkey/3225507/

こちらからよろしければどうぞ!


改めまして、ここまで十二ヵ月の姫君様を読んでいただきありがとうございました!

またどこかでお会いできることを願っております!

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