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十二ヶ月の姫君様  作者: 桜二冬寿
最終章 永遠の姫君
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Chapter 4-(4) 真実

 ミーナはローデスを前に後ずさりするしかなかった。いつものお説教モードではない。もう限界を超えてしまったことが明らかだった。

「管理室に俺の頼みだと嘘をついてまで部屋に入るとは」

「どうしてそれを……」

「管理室の者から聞いた。ミーナがまた何か動いているとな」

 言われてみれば、宇宙船を乗り出したばかりだったから行動するには少し早すぎたのかもしれない。こうやってローデスが警戒していることは普通に気づけたことだった。

 とはいえミーナとて時間はない。ここであっさりと追い出されるわけにもいかなかった。


「すぐに出ようとしないということは、お前も引かないということだな」

「当たり前です。お父様こそ、無理やり追い出さないのは優しいですね」

「では俺が優しいうちに答えろ。ここで何をしていた?」

 この間違った答えをしたら消されてしまうのではないかというような威圧感に一瞬怯むも、ミーナは何も取り繕うことはなく真実を話すことにした。


「お父様がここまで呪いを嫌う理由を探そうとしていました」

「……ほう」

「私も呪いは大嫌いです。お姉ちゃんの全てを狂わせたものだから、死んだ後も恨み続けると思います。でも私が憎いのは呪いだけです。お姉ちゃんを捨てるなど絶対に考え付きません」

「……」

 ローデスはミーナの目をじっと見た。ミーナはそれに逸らすことなく見続ける。

 しばらくの沈黙のあと、ローデスが小さく息を吐き、近くにあった来客用のソファを指さした。


「そこに座れ」

 思わぬ言葉にミーナは面食らった。てっきり余計なこと考えるなと言われて追い出されるのがオチだと思っていたからだ。

 さっきまでの威圧感のあったローデスは少し柔和されている。それを感じ取ったミーナは大人しく言うことを聞いてソファに座った。

 ローデスはずっと家族写真を見たままその場から動かない。


「今から話すことは全て真実だ。ミーナももう大人だと思って話す」

 決心が必要だったのか、ミーナが座ってしばらくしてからローデスは口を開いた。

「俺が呪いを嫌う理由は、家族を殺されたからだ」

「な……」

 急な物騒な言葉にミーナも固まってしまった。

「ミーナ。母親の死因は知っているか?」

「ええ……病気で……」

「それは俺がついた嘘だ。妻は、お前の母親は……俺の母親に殺された」

 一瞬、時が止まったような気がした。

 ローデスは何を言っているのだろう。母親が死んだのは祖母が殺したから? あまりに飛んだ話にミーナは混乱した。

「俺の母親、つまりお前の祖母は十二ヵ月の呪いの患者だった。最初こそ温厚な母親のままだったが、次第に呪いのせいで狂ったようにおかしくなった」

 ミーナは必死に頭で整理するもローデスは待ってくれない。淡々と事実を口にし、ミーナの耳に流し込んでいく。

「そしてついには自我を失い、狂ったように暴れて、看病に来ていた妻を殺してしまった」

「そ、そんなの……信じられません……。だってお父様は……お母様は病気で……」

「今のお前に言ってもこうなんだ。幼い頃のミーナに真実を伝えたとして正気でいられたか?」

 その問いにミーナは黙るしかなかった。絶対に耐えられなかっただろうから。

「だから二度同じことは起こすまいとミラアを誰もいない場所へと置いた。そうすれば誰かが殺されることもない。そして、ミラアが誰かを殺めることもない」

 ローデスが最も恐れていたこと。それは呪いで自我を失ったミラア自身ではない。ミラアが誰かを手にかける可能性の方だった。


「なあ、ミーナ。お前は何が正解だったと思う?」


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