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十二ヶ月の姫君様  作者: 桜二冬寿
最終章 永遠の姫君
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Chapter 4-(2) 君に会いたいから

「あ~! そういやそれありだ~!」

 アリアは無線でエンスの指示を受けて大声を出した。突然のことに悠馬もルヴィーネも驚いていたが、アリアはお構いなしにバズーカを用意した。

「悠馬君! 私のバッグの茶色いケースを取り出してくれ!」

「そのバズーカ見覚えある! 嫌ですよあんなテロ武器!」

「大丈夫大丈夫! 今回の標的はあんなに遠いし屋外だし!」

 そう、それはいつぞやの拓斗に絡んだ不良たちを一掃……するくらい脅迫には十分だったバズーカ。

 あのときはダミーでスモークが入っていたから目眩し用になっていたが、本来は違う凶器。

 その銃弾は犬や猫とその他何か分からない生物の糞を混ぜ込んだオリジナルの悪臭弾丸。直撃は社会的に死亡、付近に落ちるだけでも鼻はいかれる超絶恐ろしい武器、通称クソバズーカ。

「糞を飛ばすなんてやっていることはただの猿だから法律に触れない! 素晴らしい!」

「素晴らしいことあるか!」

 でも悔しいが効果的ではあるように思われる。人を殺めることなく銃撃部隊の動きを封じる可能性が高い。

 ……いよいよ汚物が宙を舞う姿を見るかもと思うと緊張してくる悠馬だった。


 悠馬はアリアに言われたとおり、バッグから茶色の小型ケースを取り出してアリアに手渡した。

 アリアは慣れた手つきでロケット型に作られた弾を込めて焦点を銃撃部隊に合わせた。

「ルヴィーネ、一瞬だけ目を塞いでいて」

「何を言っているんですか! そんな暇なんてありません!」

「じゃあせめて……この後のことは忘れて。治親のためにも」

「何のことですか?」

「よーし! 準備完了!」

 そう言ったアリアはバズーカを肩にセットし、高らかに宣言した。


「空を駆けるは犬の○○! 円弧を描くは猫の○○! あなたに届けるのは何の悪臭でしょう⁉ クソバズーカ、発射!」

 非常に汚い掛け声と共に茶色い弾丸は発射された。いくらか飛んだところでロケット型の弾は弾け、生々しいあれが外に顔を出す。これぞ、汚い花火。

 そこからはあっという間に銃撃部隊に汚物はお届けされた。慌てて辺りを走り回る銃撃部隊を確認できると、アリアは高らかに笑った。

「見よ! これがクソバズーカの威力! 銃撃など一切来なくなった!」

「何か勝った気しないんですけど……」

「あ……あ……」

 悠馬がアリアに呆れていると隣から呻き声が聞こえた。そこに視線をやると魂が抜けたように茫然としたルヴィーネが空を見上げていた。

「バ、バズーカ……。ごめんなさい治親様。これから私は汚れた目であなたを見ないといけません……」

「ルヴィーネが壊れた!」

「まあ、年頃の女の子には刺激が強すぎたか」

「年齢性別関係なく刺激強いです」

 ただやり方はどうであれ、一気に状況が楽になったのは事実だ。銃撃部隊を気にしなくてよくなった分、再びカラスに意識を持っていける――。


「って、カラス数増えてません!?」

 銃撃部隊やクソバズーカに気を取られているうちに、カラスはその数を大幅に増やしていた。銃撃部隊の存在に気づく前よりも五倍くらいはいるように感じる。

「さすがにこれはまずいかも。ルヴィーネちゃんもダウンしてるし」

「誰のせいですか!」

 どうやらクソバズーカはやりすぎだったのか、さらに警戒されてしまうことになってしまった。

 ただ監視を続けていたカラスだったが、いよいよこちらにくちばしを向けて突進してくるようになった。さすがの反射神経でアリアはハンドルを切って避けていくが、数で勝負されるとさすがに分が悪かった。

 一羽のカラスのくちばしがタイヤを掠めてタイヤがパンクしてしまい、車は急失速してしまった。

「うわ~、やられた~、ごめん」

 アリアは頭を抱えたままカラスを落としていく。

 無理やり車を動かしてはいるが、進むたびにバウンドする。スピードにも限界が出てきた。

「……よし」

 アリアはその状況を前に、進行方向のみのカラスを一斉に撃ち落とした。

「走れ悠馬くん!」

「ええ!? 急に何言い出すんですか!?」

「もう走った方が早いわ!」

「そんなこと言われても……」

 目の前にはどんどん出てくるカラスの大群。この中を突っ切っていくのはリスクが大きそうに思える。

「私も後ろから極力カラスは落としていく。だから何も考えずに走って。道なりに行けば教会には着くから!」

「……それが一番早いんですね?」

「だね」

「……分かりました」

 アリアの返答を聞いた悠馬は車から飛び出して走り出した。

 カラスがどんどん身体を突いてくるが、そのたびに振り払って走り続けた。傷が痛む感覚も無視して走り続けた。

 早くミラアの元へ。ただそれだけを考えて。

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