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十二ヶ月の姫君様  作者: 桜二冬寿
最終章 永遠の姫君
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Chapter 4-(1) 再来の武器

 アリアが荒々しくも正確な運転で車を飛ばし、ルヴィーネが的確にカラスを撃ち殺していく。

 この短時間で鉄板となった戦略で悠馬たちは着々と教会までの距離を縮めていた。正直上手く行き過ぎて怖くなるくらいだ。


「それにしてもルヴィーネ、何でそんなに当たるんだ?」

 悠馬も一応はエンスからカラス撃退用の武器を貰っているが、これが悲しいほどに命中しない。カラスは的が小さい上に動きが素早いために難易度は高めだとは思うが、それにしてもルヴィーネがあっさり倒すものだから悠馬が下手なように見えてしまう。

 ルヴィーネは首を傾げたままカラスをずっと撃っていた。「逆に何でできないんですか?」と言わんばかりの空気である。

「あー、鏡花星の人って視力いいから」

 アリアはアリアで凄く適当な回答をする。もしかして憐れまれているのでは。


 その調子でカラスを撃ちながら進んでいると、遠くにぼんやりと教会の先端が見えてきた。

 上空には数多くの黒い点が見える。おそらくここよりも多くのカラスが飛び交っているのだろう。

「あそこにミラアが……」

 悠馬がミラアのことを思っていると、アリアが急ハンドルを切って車体が大きく揺れた。


「ど、どうしたんですか!?」

「いやあ、あっちの崖に何か面倒なのいるわ」

 アリアが指差した方を見てみるが、悠馬には何も見えなかった。

 しかしアリアがハンドルを切るたびに地面が銃弾のようなもので弾けていく。何かに狙われているのは間違いないようだ。

「おそらく迎撃部隊ですね」

 ルヴィーネも遠くの崖を見ながら警戒していた。やはり鏡花星人の視力は凄まじい。

「はあ、そこまでやるかね……」

「あくまで車を狙っているようですが、結構危険ですね」

 アリアとルヴィーネは銃撃を前にしても冷静でここを切り抜ける方法を考えているようだった。


「カラスだけじゃなくて迎撃部隊まで用意しているなんて……」

「そこまでしてでもミラア様を物にしたいってわけか……」

 アリアは銃撃を華麗に躱しながらエンスに通信を入れた。

「エンスさん聞こえます?」

「ああ、聞こえるよ」

「たぶんゴレイドの部隊なんですけど、結構遠くからスナイパーライフルみたいなので撃ってきてるんですね」

「ほう。なかなか厄介だね。策はこっちで練ろう。アリアたちはとりあえず悠馬を守ること最優先で動いてくれ。アリアは銃弾くらい怖くないだろう?」

「私だってか弱い女の子なんですから怖いですよ! でも分かりました! なるはやでお願いしますよ!」

 そこで通信は途切れた。そしてアリアは左手でハンドルを制御し、右手でカラスを撃って壊していっている。

「前々から思ってたんですけど、アリアさんできること多すぎません?」

「ああ~、まあ銃に関しては研究が面倒になったとき水鉄砲でよく遊んでたし」

「そんなレベルじゃないでしょ……」

「とにかく、今は相手の攻撃を避け続けるから車揺れるよ! しっかり捕まっててね!」



 ☆



「うーん……なかなか難航しているな……」

 小屋でアリアから戦況を聞いたエンスは頭を悩ませていた。

 監視やある程度の攻撃は想定していたとはいえ、スナイパーライフルを使ってまで狙ってくるとは思っていなかった。

 話では遠くの崖から打っているとのことだから、わざわざ撃退しに行くのは効率的ではない。であればこのまま何とか突っ切りたいが、無視できるほど余裕がないようにも思える。

「どうしたものかな……」

 そう悩んでいると、エンスの通信端末に着信が入った。エンスは意識はほぼ打開策に向けたまま、ロボットのように応答する。


「はい、こちらエンス」

「あ、エンスさん。結希です」

 着信相手は現在宮葉家で待機している結希だった。

「どうしたんだい?」

「あの、事情は聞いていたんですけど……」

「ん? もしかして銃撃部隊のことかい?」

「はい」

「どうしてそのことを……」

「えっと、さっきアリアさんからメールが来ていて、何でもいいから思いついたら知恵を貸してと……」

「あいつは相変わらず器用だな」

 アリアができることの範囲が広く、マルチタスクに長けているのは今更な話だ。

 エンスとして気になるのは――。

「それで、私に連絡をしてくれたってことは何かあるってことかい?」

「ええ、一応ですけど……」


 結希はやけにもごもごと口籠っている。何か思いついたならすぐに提案しそうなものだが。

「なんでもいい。教えてくれ」

「うう……」

 更に結希からの声は小さくなる。通信障害というわけではなさそうだから、単純に結希が言葉を発していないのだろう。

「た、弾なら無限にあるのではないでしょうか! アリアさんにとってなら……!」

 何とか察してくれと言わんばかりにやけくその大声で結希は言う。

 アリアにとっての無限の弾。それで銃撃部隊を撃ち返せと言うのだろう。

「ああ~……」

 エンスはそれだけで答えに辿り着いた。確かに年頃の結希はあんまり詳細に話したくないことかもしれない。

 エンスはすぐにアリアとの無線を繋いで指示を出した。


「アリア。バズーカで銃撃部隊を撃ってくれ。……とびきり臭いやつで」

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