表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
十二ヶ月の姫君様  作者: 桜二冬寿
最終章 永遠の姫君
125/139

Chapter 3-(1) 紙切れの希望

 夕暮れ時、ミーナは少し不満げにカーテンを閉めて不貞腐れていた。

「はあ。そりゃバレるよね……」

 というのも、もう何度目かと言わんばかりの部屋監禁の罰を食らっている真っ最中だったからだ。


 ミーナは王宮の情報処理室に無断で入り、ゴレイドの情報を集めるよう働きかけた。方法は多岐に渡る。防犯カメラを利用したり、国民から情報を提供するように権力にものを言わせて呼びかけたりした。

 ただそんな大々的にしたら見つかるのも当然で……やはり部屋に強制的に連れ戻されてしまった。しかも今度は二十四時間体制で見張りをつける徹底ぶりだ。今度は外に出ることも許されないだろう。


 とはいえ、悪いことばかりでもなかった。

 その後、システム管理者によって情報収集の声明は消されたが、人の記憶からそれは簡単に消えない。この短い間にもミラアの情報を探していることは国民に知れ渡ったはずだ。それはミラアが普通の状態にないことを知らせたことにもなる。

 ただ待つだけになってはしまったが、いつもよりも意味のある待ち時間になりそうだ。


 そうしてミーナが椅子に揺られてボーっとしていると部屋のドアがノックされた。

「ミーナ様、夕食をお持ちいたしました」

「ありがとう。入って」

 ゆっくりと部屋のドアが開かれ、執事が深くお辞儀をして入ってくる。

 これまで夕食は居間にてローデスと共に摂っていたが、ついには自室で一人での食事となってしまった。ミーナにとってはこっちの方が楽ではあったが。


 出された魚料理からは香ばしい匂いが漂い、ミーナのお腹を空かせてくる。最近は考える時間も多いためか、よくお腹が空く気がする。

「……」

 すぐにでも食べ始めたいところだったが、ミーナはナイフとフォークを持つことができなかった。

 何故なら食事を運んできた執事がテーブルの隣でずっと立っているからだ。


「あの、そんなところにいられると食べづらいです」

「……」

「もしかしてご飯を食べるのも監視ですか?」

「……いえ」

「じゃあ一人にしてほしいのですが」


 てっきり監視されているものかと思っていたがそうではないらしい。となると執事はどうしてこうも動かないのだろうか。

 そんなことを考えていると、執事が静かな所作で小さな紙切れを食器の隣に置いた。それについては何も喋らなかったが、わざわざ出してくるくらいだ。ミーナに読めということだろう。

 ミーナは紙を開いて中身を読んでいく。そこにあったのはミラアと謎の男の目撃情報だという。

「これって……!」

「私が独自に調べたものです」

 日付に場所まであるこの情報。聞き込みなどで集めたのか、ところどころ不十分なところはあるが、これまでミーナが得たくても得られなかった情報だ。


「私にも立場があります。家族もいますから、これを大々的にすることはできません。ただ、本当にこれでいいとも思わないのです」

 それはすなわち、この執事がただミラアを救おうと動いてくれた。それ以外にないわけだ。

「くれぐれも他の方にはご内密にお願いします」

「ええ。約束するわ。ありがとう」

「では、失礼します」

 そうして執事はミーナの部屋を出て、部屋の前で立ち止まった。あくまで監視は仕事として続けるようだ。


 ミーナはその紙切れを見て微笑んだ。ミラアの居場所が分かったかもしれない高揚感もあったが、まだミラアを思ってくれる人がいたことが何より嬉しかった。

「よし、そうと決まれば、早速――」

 ミーナは静かに通信の準備をした。これが没収されない限りエンスと連絡できるから優しいものだと思う。

 魚を一口食べ、ミーナは全ての情報をエンスに送信した。

 それを済ませると、次にするべきことに向けてまたミーナは動き出すのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ