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prologue 2 ――揺れ動く心
ある日から、彼女は『人の気持ち』というものに敏感だった。
その人の喜怒哀楽。そして、想い。
きっとあの子はあの子のことが好き。きっとあの子もあの子のことが好き。三角関係ができてしまっているんだ、と他人事のように見ていた。
だが、彼女は至って冷静な人物である。
人の気持ちというものに過敏なのは、何も他人にだけではない。自分の素直な気持ちにもいち早く気づける。……いや、気づいてしまう。
そんな彼女に、今ある感情は劣等感だった。
自分だけ取り残されているのが分かる。置いて行かれているのが分かる。でも、それをもうどうしようもないと諦めかけている自分もいる。
だって彼の目は、明らかに彼女を捉えていないのだから。