12月2日
寒くない冬を想像できますか?冬といえば白い息、肌を刺す寒さ、そして雪。この言葉を言われて、春を連想する人はいないと思います。
雪が降らない冬を想像できますか?でもこれは容易かと思います。南国の人は雪が降らない冬は毎年のように見てるはず。
じゃあ、雪が降らない世界を、見たことがありますか?常夏の国でもなく、ごく普通に雪が降る街で。
しんしんと雪が降り積もる。もうコンクリートの黒さはない。一面、白。暗い夜でも、この街は光輝いています。
近年稀に見る美しさです。冬が、雪が、こんなに美しいものだとは知りませんでした。この街は、幻想的で、でもどこか儚げで。
そしてこの街に、その世界はありました。
ぽっかりと、丸い黒。そこにだけ、雪が積もっていませんでした。その世界は、街灯に照らされており、より明確に、この街と一線を画していました。
よく見れば、その世界には雪が積もっていないのではなく、雪が降っていなかったのです。
何も、ない。僕はそう思いました。その世界には、虚無なのだ、と。しかし、虚無なはずの世界には、人がいました。
その人の名前は、雪乃、といいます。
皆さん、雪の降らない世界を見たことがありますか?
僕は、あります。
そんな狂った世界と雪乃、そして僕のお話を、聞いてください。