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神の子  作者: 櫻塚森
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新たな旅へ

「加勢するぞ!!」

化け物に囲まれ、諦めが一瞬頭を過ぎったとき、自分への声が掛かった。

ひらりと現れた彼は、長剣を振り下ろし、紅蓮の目の前に降り立った。

「俺もいるよ!」

一陣の風が敵を薙倒していく。

3人は共に背中合わせになり、敵に向かっていった。

「一気に行こう!長引くとウザイ。」

「了解!」

3人のコンビネーションは、初めて合わせたとは思えないほどだった。

あっという間に敵は半減し、何時しか見えなくなった。

3人は、落ちた金貨を拾い上げる。

「なんや、助かった。ありがとう!」

素直な紅蓮に龍綺は少し照れているようで、慈音がかわりに握手をした。

「俺は、慈音。よろしくね!」

「俺は、紅蓮いうねん……あっ、しもうた!早いトコ行かな!」

紅蓮は歩きながら、自分と双子の妹のことを話した。

「えっ、なんかそれって、嘘くさい。」

店主の話に慈音が素直な感想を述べた。

「やっぱり、そう思うか?俺の…あーイヤ…何でもない。」

言いよどむ紅蓮に龍綺が言った。

「自分の中の獣が言うんだろ?店主の言うことを信じるなって!」

紅蓮の足が止まる。

「…気付かない?俺ら、神の子だよ?」

慈音が胸元の印を見せ、紅蓮の胸元を指差す。

「紅蓮もココにあるんだろ?」

龍綺も印を見せる。

紅蓮は、カアッと赤くなった。

「こいつはアホなんや。」

紅蓮ではなく、彼の頭部からひょいと現れた半透明の赤い鳥が言った。

「朱雀!」

「久しいな、黄龍、白虎!」

呼んでもないのに、慈音の頭からぼわんと白い虎の姿が出てきた。

「おう、久しいな。今回、迦陵が選んだのは、こいつか。」

「そうやねん、めっちゃ不本意なんやけどな。」

好き勝手に話す朱雀に紅蓮は恥ずかしくなってきた。

「頼むから、黙って…俺なんやめっちゃ恥ずかしい…。」

「何をぅ!な、失敬なやっちゃろ?」

皆から笑い声が出た。

「相変わらず、騒がしいヤツだ。」

そう言ったのは黄龍だった。呆れているが、友との再会を喜んでいるようだった。


飛蝶街に向かった3人は、これから用があると助けてもらったことに感謝の意を述べる紅蓮と向き合っていた。

「俺、妹を救うねん、朱雀はまだ早い言うけど、アイツをいつまでも見世物にできへん。」

そう話す紅蓮の後方に慈音は、白妙を見つけた。

「白妙!…あれ?雷紋…その子は?」

慈音の声に振り向いた紅蓮は、そこに居るはずのない妹の姿を見つけて呆然とした。

「紅蓮兄さん!!」

少女は駆け出して、彼の目の前に立っていた。変らぬ笑顔に紅蓮は彼女の頬を抓る。

「痛い!何すんのよ!」

バシッと腕を叩かれ、我に返る。

「な、何で…?えっ、店は?借金は?」

月凪は嬉しそうに後ろにいる雷紋を紹介した。

「あの人が助けてくれたの!!あの人が、私を自由にしてくれたのよ!」

「へっ?」

月凪の少し後ろに立っている少年。

彼と目が合った。紅蓮はまたぼうっとしてしまっていた。

「こんばんは!はじめまして。朱雀の御子。」

「へっ?あ、ああ…。」

まだ呆然としている。

「兄さん?大丈夫?」

紅蓮は月凪の声に反応して、歩み寄ると雷紋の手を取った。

「ありがとう!!ホンマ、何や…どないやって、アイツを自由にしてくれたんか分からへんけど、兎に角ありがとう!!」

深々と頭を下げてくる。

「どういたしましてだよ?君たちには、ちゃんとお礼分、働いてもらうから。」

皆の動きがハタと止まった。

「雷紋?」

龍綺が、ぽんと彼の肩に手を置く。

「えっ、当たり前でしょ?感謝は態度で示してもらわなきゃ。」

紅蓮は呆気に取られている。

「な、何したらええんですか?」

ちょっと、引いている紅蓮に雷紋は笑顔で答えた。

「え?もちろん、君にも、月凪にも神の子としての宿命に従ってもらだけだよ。一緒に旅に出ようね!」

全くそれが当たり前のような口調であった。

「へっ?…ちょー待ってな、俺ら村に帰らな…長も心配してるし…。」

「じゃあ、明日。皆で挨拶に行って、旅に出ようか。」

勝手に話を進めている。

(こうなった、雷紋は止まらないよね。)

慈音が龍綺に言うと彼は頷いた。

「私、一緒に行きます!」

月凪は身体の前で握りこぶしを作り、行く気満々である。

「へっ?何言うてんのや!女のお前に旅は無理やろ?」

月凪はくるっと紅蓮の方を見て、白妙を指差した。

「彼女も女の子です!それに、受けた恩は返さなきゃいけないわ!!」

真っ赤な顔をして無茶を言い出す妹の発言に紅蓮はため息を吐く。

「妹さんが行くのですから、お兄さんは、もちろん参加してくださいね。」

雷紋はにっこり笑った。

(雷紋…遊んでる…絶対、紅蓮で遊んでる。)

龍綺と慈音は口を挟む気はなく、白妙は月凪がはじめての女の友達になりそうな予感にドキドキしていた。

白妙のじっと月凪を見つめる姿に慈音は、嬉しくなった。

「あのさ、紅蓮。一緒に行こうよ。お礼とかそんなの抜きでさ、君たち兄妹は俺達の旅に必要なんだよ。」

紅蓮は、内なる獣が旅に乗り気で今にも喋りそうだったので、それを阻止するためにも先に旅の了承を示した。

「たぶん、月凪は足手まといになると思うけど…ええんか?」

先程のような敵が現れたら、彼女はどうなるのか、それが不安だった。

そのことに対して白妙がはじめて口を開いた。

「私が守る!私の鬼達に守らせる。」

「そうだね、俺も、龍綺も、慈音も、みんな仲間だから、彼女は守るよ。それに、彼女はそんなに弱くないよ。ね?」

雷紋の笑顔に頬を染める月凪に嫌な予感のする紅蓮だった。




つづく

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