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死んだ世界  作者: Ciallis
第一章:始まりの始まり
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前言撤回!

「ちょっと、また死んだふりする気なの?」

むにっという音とともに降ってきた声と頬の痛みで俺は目覚めた。



俺の目に映ったのは、学校の保健室のような殺風景な天井と、あの夜俺を撃った美少女だった。

とっさに体中を探ってみた。ない。銃弾が、ない。銃痕が、ない。いや、それどころか

傷さえないのである。

「ちょっ、あんた自分の体触りまくって何よ。そういう趣味なわけ?きもっ。」

俺にそんな気持ち悪い趣味はあいにくない、じゃなくて

「いや、傷がないんだよ!」

「何の?まさか、あんた俺には勇者の印があるんだ―、とかそんな痛いこと言い始めるつもりなの?」

「違うって!俺、お前に撃たれたんだよ!おまえにサソリ固めされて死にそうになって、死ぬ―って言ったらお前が急に、こう、バキューンとだな」

「それで?」

それでって、何なんだよ

「あんたは死んだの?」

死ぬぐらいいたかったっつーの、って・・・

「俺、死んで、ない?」

「気づくのおっそ!あんたの頭にはちゃんと脳入ってんの?」


「な、なんで死んでないんだよ!お前は俺に何をした!いや、それ以前にここはどこなんだ!なぜ俺はここにいる!」

一気にまくし立てる俺に、その少女は俺のたった一つの質問だけにたった一言だけ答えた。

「ここは、死んだ後の世界よ。」

言葉を失うしか、なかった。死んだ後の、世界?


俺は、死んだのか?

「う、嘘は寝て言うもんだぜ畜生!俺には死んだ記憶なんてないぞ!」

って、まてよ。俺、死んだ記憶の前にだ。

「俺、誰だ?」

「冗談は寝て言いなさい。あんたが言ったんでしょうが。」

「違う。俺は自分が誰なのか、わからない。わからないんだ!」

俺はほとんど錯乱状態の中、必死に思考をめぐらす。

目を相当眉間にしわが寄るぐらいきつく閉じた。

しかし、見えてくるのは真っ黒な世界だけだ。


だめだ、何も思い出せない。

「ああ、あんたは記憶がないパターンの人間なのかあ。大丈夫よ。何かきっかけがあればすぐに思い出せるようになるわ。今は死んだショックで記憶が飛んでるんでしょう。」

あの少女が何か言っているが、俺の耳を素通りしてゆく。そんな俺の姿を見て、少女は俺の額を優しくデコピンした。

「こら、あたしの話を聞きなさい。今は記憶がなくって不安だろうけど、あたしがちゃんと付いてるから。安心しなさい。」

安心できるもんか、と言いたくなったが、その言葉は俺の口から出ることはなかった。不覚にも彼女の言葉に安心してしまう。荒かった息も落ち着いてきた。

「ん、どうやら落ち着いたみたいね。んで、私の言葉を信じる気になった?」

落ち着いたのとお前の言葉を信じるのとは別物だ。俺にはまだ死んだなんて自覚は一切ないぞ。

「別にいいわ。」

いいんだ。

「あんたが信じようが信じまいが、あんたが死んだことに変わりないんだし。」

どうやらこの少女は人の話を聞く、ということはしないらしいな。


「あんたが死んだことを自覚できるようになるには、記憶が戻らないと無理っぽいし。あんたが・・・って」

その少女は俺のほうをじ―っとみて、考えるようなしぐさをしながら、

「あんたを呼ぶときに『あんた』って連呼するのはカッコ悪いわよねえ。」

たしかに俺も自分を撃ってきた相手にあんた呼ばわりされるのは気に食わんな。

「それにあんたに呼ばれるときに『お前』だなんて呼ばれるのも腹が立つわ。」

そんなこと知るか、と言いたくなった。なんせ俺はお前の名前を知らんからな。

「ねぇ、なんか名前とか思い出せないの?名字でも、下の名前でもいいわ。」

「そう言われてもなあ・・・って」

なぜか俺の脳裏にこびりついて離れないひとつの名前が浮かんできた。そして、口から自然にその言葉は出てきた。

日向ひなた

「名前なの、名字なの?」

「いや、そこまではわからんが、名前って聞いた時にこの名前が浮かんできたんだよ。」

「それは本当にあんたの名前なのかしら。」

反論できねええええええ、というか、記憶喪失に記憶の確実性を求めること自体、間違ってるだろ、おい!

「唯一覚えていたことですら確実じゃないってのね。まあいいわ、私は椎名あかね。これからよろしくね、日向。」

そう言って、彼女はその細く白い手を俺に差し伸べてきた。正直言って、俺は死んだことも認めてないし、ここがどんなとこなのかとか、何がよろしくなのかもわからないのだが。


でも、それでも俺は、彼女の手を取っていた。そして、俺からも彼女にむかって言葉を発した。

「ああ、これからよろしくな、あかね。」

ぎゅうううううううううううううううううううううううっ

ん、なんだ?急に握る力が強くなってきたし爪が食い込み始めたしなんか痛いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!

「な、名前を教えた瞬間に、ファーストネームを、呼びきり、ですって?」

なに?なんか俺、やばいの?そうなの!?

「日向、あんたどうやらレディに対する態度が身についてないらしいわね?これから私がみっっっっちり教育してあげるわあ。そこに直りなさい、日向―――――――――――!」

「ぎゃあああああああああ!ご、ごめんなさい、椎名さま!謝るから、謝るからどうか、そのどこからか出してきたスタンガンを片づけてみぎゃあああああああああああ!!!!」


前言撤回だ。俺はあの夜、椎名に撃たれた夜、こいつのことを美少女だと思った。しかし、こいつは美少女なんかじゃない。こいつは・・・

「こら待て日向―――!まだ話は終わってないのよ―――――!!!」

美少女の皮をかぶった、トンデモ暴力少女だ。











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