表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
55/55

終わりなきデスゲーム

カフェ『スティール』の一角。




扉の鐘は今朝から一度も鳴らない。定休日の札をひっさげればそれもそのはずで、カウンターの後ろにはカップを磨きながら見やすいように立てたタブレットを眺める五十鈴の姿があった。




「ふぅん。そっか。君の選択はよくわかったよ」




映し出されていたのは人数不利から奇跡の逆転勝利を飾った城西高校の試合結果。想いを寄せる後輩の勝利であるはずなのに、彼女は眉間に皺を寄せた。




「さっきアリスから連絡があったの。残念ね。あの子なら分かってくれると思ったのに残念」


「運命でさえ僕の邪魔をするんだ……ほんっと、どいつもこいつも分からず屋だ」




僕が用意した舞台とシナリオが全て台無し。怒りで拳に込めた力が戻らない。




「こうなった以上、ラプアちゃんには消えてもらうしかないかも」


「その必要はないよ。むしろ彼女には居て貰わないと」




怒りから不敵な笑みがこぼれる。五十鈴はバックヤードの方へ向いて言う。




「ドゥーガルガンの可能性を放棄した人間には呪いとして作用して貰わないと」


「あぁ。あの子ね。秘蔵っ子。五十鈴ちゃんったら、ずる賢い」




次はどの子が消えるのかと考えるだけでゾクゾクして堪らない。




五十鈴の妙案がどんな風に作用するのか。少なくともあの二人に確実な変化を与えると思うと、待ち遠しくて心が踊る。




宛先の伝票を取れないようにしっかりと貼ると、彼女への恨みを込めて言う。




「少年の踏み台になってもらうよ咲良君。ゲームの結末を変えてしまった君への罰だ」




僕と悠里少年を繋ぐための戦いの結末を変えた罰。僕の愛に泥を塗った報いだ。




きっと喜んでくれると思うなぁ。そして、僕たちの眼の前から消えてくれるととっても幸せなんだ咲良。




狂気を纏う笑みで五十鈴はガンケースをカウンターに置いたのだった。






EOS予選決勝から三週間。




城西高校236部は全国大会の当日に向けて練習を重ねていた。地下のフィールドには今日もエアソフトガンの銃声がけたたましく響き、部員たちは本戦へ向けた練習に身が入っていた。




思えば予選でも色々な出来事があった。スティールのカウンターで壁に飾られた予選大会優勝の写真を眺めて感慨に浸っていた。




私と悠里、ラプアの三人が写った優勝写真、その横の結衣とのツーショット。




それを見ながら微笑む。入学から想像もしていなかった出来事ばかりでここは現実なのか、頭は疑い続けていた。




幸せな疑心という奴か。咲良は写真を手繰り寄せて、ずっとこの関係が続けばいいと願ったが首を振った。




「願うんじゃない。私が大切に持っていなくちゃいけないんだ」




呟いた途端にきょとんとして一人で吹く。なんだか悠里君の熱血っぷりが移ってしまったみたいで面白かった。




「ちょっと咲良―。貴方に宅配よー」


「はーい! 今行くね!」




一階から母の呼ぶ声がした。




なんの宅配だろうと気になって階段を下りてみると、母が重そうに長いダンボールを立てて廊下を歩いていた。




「送り主を聞いたんだけど宅配の人も分からないみたいでねー」


「書いてあるんじゃないの? 伝票に」


「それが真っ白なのよー」




受け取って箱を眺めてみるが、送り主は愚か宛先すらない。どうやって送ってきたのかと不思議に思い、開けないのが得策だと理性が囁く。




けれど長さや大きさ、重さからしてエアソフトガンではある。開けないで捨てるというのもなんだか勿体ない気がする……。




「多分悠里君からだと思う」


「悠里君?」


「新しい相棒」


「それって男の子?!」


「喰いつき早?! んー、見た目はすんごい可愛いけど、男の子だよ」




男の子。それを聞いた途端に母が膝から崩れ落ちて、




「咲良にもついに彼氏が……母さん、感激。今日は赤飯炊くね」


「そんなんじゃないよ。相棒だって」




感嘆を漏らしているが捨て台詞を吐いてさっさと部屋へ戻った。ずけずけ聞かれても面倒臭いし、照れてしまう。




件の箱は丁寧に梱包されていて覗ける隙間もない。これが爆弾だったりしたら一巻の終わりだけど——




「狙われる心当たりはないわけだし、大丈夫」




妙な持論を言い聞かせながらカッターでガムテープを丁寧に切る。




中は見立て通りエアソフトガン。それも師匠から授かった愛銃のAR—15系で、デザインの端には大手メーカー『東京クケイ』のロゴが刻まれている。




新品同然の状態に目を丸くしたが、蓋を開くともっと驚かされる。




発砲スチロールに収まっていたのはパッケージの見た目とは全く違う異形の銃。カスタムパーツが盛りに盛られてもはや原型はどこへ行ったのか。




空いた箱に詰めたのかなと思いきや、胴体はそのままでカスタム銃ということは分かった。




そして刻印が眼に入った時、持っていた手から銃が落ちた。




決して落ちることのない涙を持つ少女。その下にNAGARAの文字。接地した瞬間、眩い光が部屋を包み込んで、銃は人へと変わる。




茶色の前髪を切り揃えたショートボブに端整な顔立ちの美少女。何度も会ったその顔に咲良の心音は跳ね上がった。




「初めましてマイマスター。私はドゥーガルガン『ナイト』。貴方の武器となり、可能性となる銃」


「悠里……君?」









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ