表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅い孤影  作者: キロヒカ.オツマ―


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/31

第25章 死亡確認と真相の暴露

救急隊が佐伯のアパートに踏み込んだとき、

加藤綾は、すでに意識を失っていた。


背中から腹部にかけて深く刺された傷口から、

大量の血が流れ、床を黒く染めていた。


「……心肺停止!」


隊員の一人が叫ぶ。


すぐに心臓マッサージが始まり、

酸素マスクが当てられる。


だが、反応はない。


救急車の中で、モニターは、

ただ平坦な線を描き続けていた。


病院に到着してからも、

医師たちは必死に蘇生を試みた。


電気ショック。

点滴。

気管挿管。


だが、二十分後、

担当医が、静かに首を振った。


「……死亡確認。二十三時四十二分」


その瞬間、

連続殺人犯・加藤綾の人生は終わった。


佐伯誠は、その場で逮捕された。


血まみれのシャツのまま、

床に座り込み、ぼんやりしていた。


「……俺が、殺しました」


取り調べ室で、

彼は、そう繰り返した。


「……俺だけが、綾ちゃんを終わらせるって、決めてた」


刑事たちは、顔をしかめた。


「……お前、自分が何を言ってるか、分かってるか」


「……分かってます」


佐伯は、笑った。


「……救ったんです。俺は」


その言葉に、

誰も返事ができなかった。


警視庁は、翌日、記者会見を開いた。


「与党議員連続殺人事件の被疑者、

 加藤綾容疑者は、

 本日未明、別件の殺人事件により死亡しました」


フラッシュが、乱れ飛ぶ。


「彼女は、幼少期からの虐待、

 家出、売春、薬物依存、

 整形手術、芸能界での成功と転落を経て、

 精神的に追い詰められていたと見られます」


だが、その説明に、

誰も同情はしなかった。


ワイドショーは、

朝から晩まで、彼女の人生を消費した。


《怪物女優の闇の半生》

《虐待、売春、薬物、殺人》

《女優の仮面の下の狂気》


コメンテーターは、

したり顔で語る。


「可哀想な過去があっても、

 人を殺していい理由にはなりません」


「結局、自己責任ですよね」


誰も、

「なぜ、ここまで追い詰められたのか」

なんて、深く考えない。


石川県の実家には、

警察が入り、

両親の惨殺事件も、正式に関連づけられた。


「……あの娘が?」


近所の住民は、

口々に言った。


「おとなしい子だったのに」


「まさか、そんな」


だが、誰も、

あの家の中で、

何が行われていたのかを、

知らなかった。


与党は、

緊急に、治安対策強化を打ち出した。


「このような悲劇を二度と起こさないために」


――遅い。


綾が、生きていたら、

きっと、そう笑っただろう。


佐伯の裁判は、

一年後に始まった。


弁護側は、

「精神的混乱による犯行」を主張した。


だが、

検察は、冷淡だった。


「被告は、計画的に包丁を用意し、

 被害者を殺害しています」


「救済などというのは、

 単なる自己正当化です」


佐伯は、法廷で、静かに言った。


「……それでも、俺は、後悔してません」


「……俺だけが、

 あの人の最後を、見届けられた」


傍聴席は、

ざわついた。


数年後。


加藤綾の名前は、

ほとんど、語られなくなった。


彼女が殺した議員たちは、

新しい顔に、置き換えられた。


芸能界は、

何事もなかったかのように、回り続けた。


――誰も、覚えていない。


だが、ある夜、

一人の若い記者が、

彼女の古い日記を読んでいた。


そこには、

走り書きのような文字で、

こう書かれていた。


《生まれてきたくなかった》

《誰か、最初に助けてくれれば、違った》

《でも、もう、どうでもいい》


記者は、しばらく、

そのページを閉じられなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ