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紅い孤影  作者: キロヒカ.オツマ―


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第24章 最終の攻防と裏切られた救済

佐伯が、一瞬だけ迷った。


その瞬間、私は動いた。


ポケットから刃物を抜き、彼の腹部に向かって突き出す。

だが、深くは入らなかった。


「……っ!」


佐伯が、うめき声を上げる。


私は、さらに突こうとした。


その腕を、彼が掴んだ。


力が、異様に強い。


「……やっぱり、殺す気なんだな」


彼の目が、完全に狂っていた。


私たちは、床に転がり込んだ。


包丁が、どこかへ飛ぶ。


私は、必死で彼の顔を殴った。


「……離せ!」


だが、彼は、私の首を締め上げてきた。


視界が、じわじわ暗くなる。


――やばい。


私は、床をまさぐり、何か硬いものを掴んだ。


灰皿。


それを、彼のこめかみに叩きつけた。


鈍い音。


佐伯が、一瞬、力を緩める。


私は、その隙に、彼を突き飛ばし、立ち上がった。


だが、次の瞬間、背中に、鋭い衝撃が走った。


「……っ!」


息が、止まる。


佐伯が、もう一本の包丁を握っていた。


「……綾ちゃん」


彼の声が、震えている。


「……これで、終わりだよ」


私は、ふらつきながら、壁にもたれた。


背中が、熱い。


――刺された。


頭が、ぼーっとする。


「……なんで、あんたが……」


声が、うまく出ない。


「……だってさ」


佐伯は、泣き笑いの顔だった。


「……俺だけが、綾ちゃんを終わらせるって、決めてたんだよ」


私は、笑った。


「……最悪」


足から、力が抜ける。


床に、座り込む。


血が、床に広がっていくのが、ぼんやり見えた。


「……ねえ、佐伯」


私は、息を整えながら言った。


「……あんた、私を救ったつもり?」


「……うん」


即答だった。


「……捕まって、

 裁かれて、

 みんなに石投げられるより……」


彼は、包丁を落とした。


「……俺が、終わらせてあげた方が、マシだと思った」


私は、目を閉じた。


――ああ、やっぱり。


「……それ、ただの自己満足だよ」


佐伯は、何も言わなかった。


ただ、その場に立ち尽くしている。


視界が、揺れる。


意識が、遠のいていく。


私は、最後に、天井を見上げた。


――結局、私は、誰にも救われなかった。


――自分で、自分を壊しただけ。


「……ま、いいか」


それが、私の、最後の言葉だった。


その直後、

遠くで、サイレンの音が聞こえた。


佐伯が、通報していたのか、

それとも、近隣の誰かが異変に気づいたのか。


もう、どうでもよかった。


私は、そのまま、意識を失った。

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