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紅い孤影  作者: キロヒカ.オツマ―


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第22章 指名手配と歪んだ再会

その朝、テレビをつけた瞬間、私は自分の名前を聞いた。


「連続殺人事件で、警視庁は加藤綾容疑者(二十九)を殺人の疑いで指名手配しました」


画面には、女優だった頃の私の写真。

整形前と整形後、両方の顔。


「与党議員五人の殺害に関与した疑いが持たれています」


――五人?


私は、鼻で笑った。


「……もっと、やってるのに」


画面の下には、赤い文字。


《全国に指名手配》


私は、テレビを消した。


不思議と、動揺はなかった。


「あーあ」


ただ、それだけ。


スマホを見ると、通知が山ほど来ていた。

知らない番号からの着信。

SNSのDM。


私は、全部無視した。


もう、何も守るものはない。


私は、フードを深くかぶり、サングラスをかけて外に出た。


コンビニで新聞を買う。


一面に、私の顔。


《元人気女優、連続殺人犯だった》


《闇の過去、売春、薬物、整形》


――また、暴かれる。


でも、もうどうでもよかった。


駅のホームで、私は、自分が妙に落ち着いていることに気づく。


――ああ、やっと、終わるんだ。


電車に乗り、私は、あの男の最寄り駅で降りた。


名前は、佐伯誠。


三十五歳。

IT企業勤務。

独身。


昔、私が立ちんぼしていた頃、

月に何十万も貢いできた、気持ち悪いオタク。


私が彼を呼び出すと、

彼は、いつも嬉しそうにやってきた。


「綾ちゃん……本当に、俺だけの女だと思ってた」


その言葉が、頭に蘇る。


私は、彼のアパートの前に立った。


インターホンを押す。


「……はい?」


懐かしい、気色悪い声。


「久しぶり」


沈黙。


ドアが、ゆっくり開いた。


「……綾ちゃん?」


彼の顔は、青ざめていた。


「ニュース、見たよ……」


「でしょうね」


私は、部屋に入った。


相変わらず、汚い部屋。


私の写真。

女優時代のポスター。

切り抜き。


壁一面に、貼られている。


――まだ、こんなの持ってんだ。


「……来ると思ってた」


彼は、震える声で言った。


「最後に、会っておこうと思って」


私は、ソファに座った。


彼は、距離を保ったまま、立っている。


「……逃げるの?」


「多分、無理」


「……じゃあ、なんで」


私は、彼を見上げた。


「……なんとなく」


沈黙。


そのとき、彼がぽつりと言った。


「……俺、全部知ってる」


「何を?」


「綾ちゃんが、体売ってたことも、

 薬やってたことも、

 議員殺したことも」


私は、眉をひそめた。


「……どこまで知ってんの」


「……ネット。掲示板。

 それと……俺、ずっと、綾ちゃんのこと、追ってた」


――気持ち悪い。


私は、舌打ちしそうになるのをこらえた。


「……それで?」


彼は、急に、涙を浮かべた。


「……それでも、俺は、綾ちゃんが好きだよ」


その言葉に、背筋が寒くなる。


「……だからさ」


彼は、一歩、近づいた。


「……一緒に、死のう」


私は、思わず笑った。


「……は?」


「逃げるより、捕まるより、

 俺と、ここで終わろう」


――こいつ、頭おかしい。


「……冗談でしょ」


「本気だよ」


彼の目が、異様に光っている。


その瞬間、私は、危険を感じた。


「……悪いけど、帰る」


私は、立ち上がった。


彼が、私の腕を掴む。


「……どこ行くの」


力が、異様に強い。


「……離して」


「……嫌だ」


彼の手が、震えている。


「……俺だけの綾ちゃんで、終わらせたい」


――ああ、こいつ、壊れてる。


私は、無理やり振りほどき、玄関に向かった。


その背後で、何かが、カチッと鳴った。


私は、振り向いた。


彼の手に、包丁。


「……逃がさない」


私は、息を呑んだ。


――最悪。

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