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紅い孤影  作者: キロヒカ.オツマ―


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第19章 踏み越えた一線と追い詰められる影

五人目の標的を決めたとき、私はもう、慎重さを失っていた。


「……どうせ、またうまくいく」


そう思い込むことで、不安を押し殺していた。


相手は、ベテランの与党議員。

地元に強い後援会を持ち、警備も比較的厚い男だった。


――本当なら、避けるべき相手。


でも私は、あえて難易度の高い相手を選んだ。


理由は単純だ。


スリルが欲しかった。

そして、証明したかった。


――私は、捕まらない。


事前に調べた情報は、甘かった。


議員はその夜、予定より早く秘書と別れ、一人で自宅に戻っていた。

私は、彼のマンション前で待ち伏せし、エントランスに入るところを狙った。


「先生」


小さく声をかける。


男が振り向いた瞬間、私は刃物を突き出した。


だが、その動きは鈍かった。


刃先は、腹ではなく、肋骨の下を浅くかすっただけ。


「うわっ……!」


男が叫び、私の腕を掴む。


――しまった。


もみ合いになる。


私は必死で刃物を振り回し、何度も突き刺した。


血が、コートに飛び散る。

手が、ぬるぬると滑る。


男は、最後に私の顔を見た。


恐怖と、怒りと、困惑が混じった目。


そのまま、崩れ落ちた。


私は、荒い息をつきながら、その場に立ち尽くしていた。


――派手すぎた。


エントランスの防犯カメラが、こちらを向いているのに気づいた瞬間、全身が冷えた。


私は、フードを深くかぶり、足早にその場を離れた。


同じ頃、警視庁捜査一課の会議室では、緊迫した空気が流れていた。


「五件目も、与党議員。やり方が、だんだん雑になってる」


刑事の一人が、ホワイトボードの写真を指さす。


「犯人は女の可能性が高い。体格、目撃証言、犯行時の手際」


別の刑事が言う。


「エントランスの防犯カメラに、フード姿の人物が映ってる。身長、だいたい一六〇前後。歩き方が、女っぽい」


「連続犯は、慢心すると必ずミスをする。そろそろ、尻尾を出すぞ」


捜査一課長が、低く言った。


私は、帰宅してから、風呂場で服を洗った。


血の匂いが、なかなか取れない。


洗面台に、赤い水が流れていく。


「……最悪」


鏡を見ると、頬に小さな切り傷ができていた。


もみ合いのときに、どこかで切ったらしい。


――これ、まずい。


私は、ドラッグストアで絆創膏を買い、コンビニで新聞を読んだ。


「防犯カメラに不審人物。女の可能性も」


――女?


一瞬、喉が詰まる。


その夜、スマホに知らない番号から着信があった。


私は、出なかった。


二回目、三回目。


しつこい。


留守電が入る。


再生すると、機械的な声。


「こちら、警視庁捜査一課です。お話を伺いたいことがあります」


――来た。


膝が、がくりと折れそうになる。


私は、その場でスマホを床に投げた。


「……うるさい」


なのに、胸の奥が、妙にスッとした。


――やっと、追いついてきた?


逃げなきゃいけないのに、

なぜか、そう思ってしまう。


その夜、私は、六人目の標的を検索していた。


もう、止まれなかった。

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