第10章 過去の暴露と芸能界からの干され
朝のニュース速報で、世界が一瞬止まったように感じた。スマートフォンの画面には、私の名前と顔写真と共に、過去の出自や夜の街での経験、整形や枕営業に関する噂が羅列されていた。SNSは瞬く間に炎上し、コメント欄には罵声と好奇心が渦巻く。「あの加藤綾って…」「まさか本当に…?」――指が震える。
光の中で笑う私の顔と、そこに書き込まれた文字は、あまりにもかけ離れていた。テレビ局の特集番組、週刊誌の記事、匿名アカウントによる過去の暴露。すべてが同時に私を襲う。事務所のマネージャーは無言で電話を切り、同僚は距離を取り、ファンの反応も冷たくなった。誰も助けてはくれない。
精神のバランスは一気に崩れた。夜、ベッドに倒れ込み、体中が震える。体を売り、権力者や暴力団を利用して得たもの、整形で手に入れた顔、計算し尽くした戦略――すべてが、紙くずのように脆く崩れ去った感覚。怒りと絶望、恥辱と孤独が同時に押し寄せ、呼吸さえ困難だった。
周囲の手のひら返しも加速する。枕営業で世話になったプロデューサーやスポンサーは、私を見捨て、距離を置く。暴力団関係者も、利益のない存在として扱う。政治家や権力者は口をつぐみ、誰もが自分の利益を優先する世界で、私だけが孤立した。
過去の痛みが再び鮮明になる。父と母の虐待、夜の街での恐怖、裏切りと死、体を売った記憶、堕胎の痛み――それらが一度に押し寄せ、私の精神を抉る。鏡を見ると、美しいはずの顔が歪み、瞳には深い影しか映らない。光の舞台は完全に遠く、現実の地獄だけが残った。
孤独と絶望の中、私の中で怒りが燃え上がる。「すべては両親のせいだ」「社会のせいだ」――頭の中で言葉が渦を巻く。成功と光を手に入れるために犠牲にしたすべてが、今、私を裏切ったと感じた。目の前の世界は敵ばかりで、信頼は一切存在しない。
ホテルの一室で、私は拳を握った。冷たい窓ガラスに映る自分の姿は、虚像ではなく復讐の予兆そのものだった。光の舞台は消え、暗黒の世界が私を支配する。過去の痛み、孤独、裏切り、すべては怒りに変わり、次に何をすべきかを静かに、しかし確実に示していた。
加藤綾は、もはや光の中の女優ではなかった。孤独と絶望の中で、復讐の種を心に抱き、静かに牙を研ぐ存在へと変貌しつつあった。東京の夜は冷たく、残酷で、しかしその冷たさこそが、私の次の一歩を呼んでいた。




