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6話 社会人の休日

 社会人に土曜の朝は存在しない。

 なぜなら。


「……もう昼か」


 起きたら既に午後なので。


「お昼ご飯と夜ご飯どーしよー」


 今週はずっとコンビニご飯だったので、朝用の食パン、ハム、卵、サニーレタスくらいしか家にはない。


 ……もう今日もコンビニでいいか? それならあの子にも会えるし――


 ――って、さすがにこれはあの子が生活の中心すぎでは……⁉︎ 平日なら残業で疲れて、なんて言い訳はきくけど、休日までコンビニご飯なんてもう完全にあの子に会いたいがために行くようなわけで――いやまあ実際会いたいんだけど、そのためにこれまでの生活様式を丸ごと変えてしまうのはいかがなものか? という危機感が! これでも私、おばあちゃんの言いつけを守って一応自炊はできる女だったのに、この一週間でその自負が一気に危うくなっているのだ。『自炊するよりもコンビニ行くか』という思考が定着しかけている! これはヤバい! 彼女に会いたい、とかいう以前に人間としてダメになりかけている!


 だから、今日は我慢……! 今日行くのは、スーパーだ……! 買うのはできあいの弁当や惣菜ではなく、食材だ……!


 意志の力を総動員して、私は軽くメイクをしてスーパーに向かった。



   *



「野菜たっか……」


 最近の値上がりが想像以上で、肩にかけたトートバッグも実際の重さよりもずっしりと感じる。お金もかかるし、手間もかかるし、自炊ってあんまりお得じゃない……? いや私の買い物がヘタなだけ……? というかそもそも一人暮らしで料理しても自分で食べるだけだしなんか虚しいんだよな〜〜……だったらコンビニご飯でも全然いいっていうか――はっ、いけないいけない、またどうにかしてコンビニに行こうとしてる……!


 というか、そもそも土日も彼女が出勤しているとは限らないのだ。平日夜遅くまで働いているのだから土日くらいは休みでもおかしくない。というか休んで……若いうちからいつもいつも夜遅くまで働いてるの偉すぎるから……!


 ……今日もいるかどうかだけ、見ていこうかな。いや、これは私が会いたいというよりも心配だから! 土日は休んでいてほしいっていう気持ち故の確認だから!


 脳内で必死に言い訳をしつつコンビニの前まで来る。なんとなく及び腰でガラス越しに店内を確認するも、レジに彼女の姿はなかった。


 ……休みなのかな。


 休んでいてほしい、という気持ちで来たものの、実際にその姿が見えないと寂しい気持ちになる。そんな勝手な自分の心の動きに苦笑してから、ふとガラスに映る自分の姿に気づく。


 軽く櫛を入れただけで特にセットもしていない髪、下地にパウダーをはたき、ちょちょっと眉を描いただけの雑メイク、襟元が若干緩んできているTシャツにジーンズ。


 あ、あまりにも休日の無気力人間すぎる……っ!


 客観的に見た自分の姿に愕然とし、私は慌てて帰宅した。


 こんな気を抜いた格好、あの子に見られなくて良かった……!

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