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新しい生活と驚愕の特訓風景です!

スター流本部ことスターコンツェルンビルに入ってからのわたしの生活とはこれまでとはまるで違うものでした。


スター流に所属している彼の弟子たちは基本的に世界中に散って各国を守ったり、非常時には招集されたり、ビル内にある特訓施設で過酷な訓練に励んだりしています。


わたしはまだ来たばかりということもあってか、特に何もすることはなく、ビルの中にある洋服屋さんや日用雑貨店で買い出しをしたりするぐらいです。


まるで市場のようにお店が並び、ビルの中だと思えないほど広大な施設にはレストランや映画館、靴屋さんに眼鏡屋さんにゲームセンターと必要なものがなんでも揃っており、


普通に歩いているだけでは娯楽施設と勘違いしてしまいそうになるほどです。


大都会に建てられた高層ビルの中にこれほどたくさんの店舗があるのはスター様の手腕によるものだそうです。


わたしから見れば陽気な紳士様にしか見えませんが、きっと能ある鷹は爪を隠すということわざの通りの人物かもしれません。


生粋のイギリス人であるわたしですが、日本の小説を読んでいた影響もあり、多少日本文化に詳しくなったかもしれません。


もっともわたし基準なので日本の皆様から見ればひどくチグハグに思えるかもしれませんが。


小さいながらもホテルのように整えられた自室に戻ったわたしは、夕ご飯であるスパゲッティを食べることにしました。


最近は茹でる必要もなく電子レンジでチンするだけでおいしくできる冷凍食品が開発されて生活が便利になっているのはありがたいことです。


できあがったミートソースのスパゲッティをお皿に盛りつけて、いただきます。


「ん~っ! とってもおいしいです! トマトの酸味とお肉の汁がスパゲッティに混ざり合い、いくらでも食べることができますねぇ。食べ慣れた味ですけれど、日本式はちょっとだけ違う感じがします!」


あっという間に完食をして、片付けをしてお風呂に入ったら、もう就寝です。


今日はサッカーの中継はありませんし、ヒーロー特集の番組は――周りがヒーローばかりという環境に放り込まれたせいなのか、意図的に見ないように心がけているのです。


明日はスター様が流派のメンバーと特訓の様子を案内してくれるそうです。


どんな特訓風景が見られるのか、とても楽しみです。




「え……」


ビル地下六階から続く流派の特訓施設。


その特訓風景を見学したわたしは、言葉を失ってしまいました。


流派のメンバーは全員が超人です。スーパーヒーローです。人間を超えています。


それは理解しているのですけれど、目の前の光景には我が目を疑ってしまいました。


わたしの視線の先にはひとりの若い女性の超人がいます。


名前を闇野美琴やみのみことさんといってわたしより少しだけお姉さんで、長く美しい黒髪と切れ長の瞳、女性にしては高身長で白の上衣に赤い袴という日本の伝統的な巫女服を着こなしています。


彼女が立っているのはプールサイドで、どうやらこの格好のままで飛び込むつもりのようです。


「それじゃあ、はじめ!」


スター様の合図と共にプールに飛び込んだ美琴さんは猛烈な勢いで泳ぎ始めました。


クロールで泳いでいるのですが、このプールの水深は5メートルもあり、長さは200メートルもあるのです。往復すれば400メートルもあるのです。


泳ぎづらいはずの巫女服での水泳……常人ならば溺れて終わりのはずです。


それを悠々とこなすとは、やはり彼女は人間ではないようです。


しかも先ほどから何往復もしていますのに速度が変わりません。


「泳いだ距離は10キロは超えたかな?」

「すごい身体能力ですね……」

「これは準備運動だよ。まだまだ本番はこれからだよ。それに見てごらん」


スター様が指さしたところを見ますと、時折何か小さな生物が海面から飛び出しているように見えます。


「アレはお魚ですか?」

「半分正解。あの魚はピラニアだよ。食いつかれたら相手が骨になるまで離さない。このプールでは、ピラニアをたっぷり放し飼いにしてあるんだ」

「⁉ じゃあ油断したら美琴さんはピラニアの餌に……」

「ピラニアにとってはご馳走だからね。でも、これぐらいで参るようではスター流では生き残ることはできないよ。まあ、美琴ちゃんはピラニアを泳ぎながら倒しているけど」

「ま、まさかこの水泳をわたしも――」

「やりたいのかな?」

「遠慮させていただきます!」


こんなものさせられたら何百回転生しても足りません。


スター様はいつでも笑顔を崩すことがありません。


その笑顔のままに容赦のない発言をするところが恐ろしいのです。


「では次の場所へ行ってみよう!」

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