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住み慣れた別荘を離れて……新しい家族の元へ参ります。

「何か体に変化はあるかね?」

「いえ。今のところ特には……」

「そうだろうねえ。でも少しずつ変化に気づくはずだよ」


超人キャンディーを食べて新しく生まれ変わったわたしですけれど、外見に際立った変化は見られませんでした。


「ともかく、きみの寿命は延びたのだから、そこだけは安心していいからね」

「ありがとうございます」


余命一時間の状態から永遠の命を与えられたのですから、これはもう奇跡です。


あのとき諦めて手紙を書かなかったら悲惨なまま一生を終えていたことでしょう。


転生とは違いますけれど、人生を救われたことには間違いなさそうです。


少しずつおいしい紅茶を飲み、再び部屋にきたジャドウさんが置いていったスコーンを食べながら、スターさんに気になる質問をしました。



「わたしはどのような能力を手に入れたのでしょう?」

「きみが食べたのは『宇宙最高の治癒能力』のキャンディーだよ。

触れるだけで、どんな病気や怪我も治せる。

わたしのスター流は武術派は多いけど医療の知識が乏しく、回復の術を持たない。

類似の能力を持つ子はいるけどあくまでも応急処置にすぎない。

きみが能力を完全に使いこなせるようになれば、スター流だけではなく全世界に素晴らしい貢献をもたらすことだろう」

「オオゥ……!」


わたしは思わず驚嘆の声をあげていました。


病弱なわたしと他人の病気や怪我を治す力というのは少し皮肉が効いているかもしれませんが、話を聞く限りですと確かに彼らの役に立てそうな気がしてきました。


わたしは勢いよく立ち上がって。


「スター様、わたし、これから怪我人を治してきます!」

「待ちたまえ。やる気があるのはいいことだけど、その前にいろいろ準備が必要だよ。

まずは家にかえってお洋服とか日用品とかを取ってくるように。わかったかな?」

「はい!」

「いい返事だね。それじゃあ、あとは不動君にお任せしようかな」


再び呼び出された不動さんは大層不満な顔でわたしを別荘へと送り返しました。


ちょっと前まではベッドから起き上がるだけでもしんどかったのですけれど、人間、目標や希望があれば元気が出るのでしょうか、それともキャンディーが効力を発揮したのでしょうか、真相は不明ですが、わたしはキャリーバッグに荷物を詰めることができました。


下着や洋服、歯磨き、家族との思い出の詰まったアルバムなど持ち物は多くありません。


やがて準備が全て終わってから不動さんが声をかけました。


「もうこの別荘に戻ることはないだろうが、どうする?」

「そうですね……困っている人に格安で提供したいと思います」

「俺ならこんな別荘は往生させるがな。だが、悪くない判断だ」


彼はニッと笑ってわたしの頭をクシャクシャと撫でてくれました。


わたしは十七歳ですけれど、家族以外の誰かに頭を撫でられたことなど遥か昔のことでしたから、嬉しさやら驚きやらでぽーっとなってしまいました。


これは、褒めてくれたということでいいのでしょうか?


壊すのは勿体ないですし、タダで貸すのは怪しまれます。


少額で貸すことで信頼も得られますし、助かる人もいるはずなのです。


それに広さや設備は一応の自慢ではあります。


わたしにとっては牢獄のような場所でも、他の人なら天国に思えるかもしれませんし。


わたしは何年も住んでいた別荘と屋敷を後にしました。


これからのわたしの家はスター流本部。


新しい家族は、スター流の皆様です。



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