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失った先にある彩り

作者: くまたろう

この話は私の実体験です。

失うことで世界が鮮やかに見えるという、今の私の価値観にも大きな影響を与えた体験を文字に起こしてみました。

少しでも共感できるものがあれば幸いです。

小学生のころ、僕の住んでいた団地ではカードゲームが流行っていた。

ポケモンカードにデュエルマスターズ、バトルスピリッツ......様々なカードゲームのブームがあった。

毎日のように流行っているカードゲームをプレイする日々。

楽しくもあり、どこか退屈でもあった。


小学4年生の時、当時流行っていたのはデュエルマスターズだった。

僕も例に漏れずデュエルマスターズにハマり、毎日のように団地の友達とバトルしていた。

バトルで勝つためには、新しいカードを得ることが重要だ。

だが、小学生にとってカードを買うお金はない。

そこで良くカードの物々交換が行われていた。

その多くは同種のカードゲーム内での交換だったが、中には別種のカードとの交換を望む友達もいた。

ある時、大量のポケモンカードと交換で、持っているデュエルマスターズカードを全てくれると友達が言った。

今流行っていないカードが交換材料になることに内心幸運だと思いながら、持っていたポケモンカードをほとんど交換に使った。


それから1年ほど経った。

団地内での流行の移り変わりは急で、デュエルマスターズからポケモンカードへと流行が移った。

団地のみんながテーマの統一されたデッキを作る中、僕の手元には進化前の種ポケモンや、裏表紙のデザインが古く使えなくなったカードばかりが100枚ほどあるだけだった。

とてもじゃないが、ちゃんとしたデッキなんて作れはしない。

それなのに、なぜか灰色だった僕の心の世界に彩りの波が訪れた気がした。

今まで見向きもしなかったカード達が、急に美しく愛おしいと感じだした。

「僕の手元に残っていてくれてありがとう。」

一時の気の迷いで愚かな交換をした自分の愚かさを悔やむ気持ちと、残ってくれたカードたちへの感謝とがごちゃ混ぜになり、嗚咽混じりの涙が溢れ出してきた。


世界はこんなにも彩り鮮やかだったんだ!

僕は失ったことで得られた彩りを胸に、1枚1枚カードをかき集めた。

最後に拾った、古いデザインの裏表紙のゼニガメのカードの姿は、10年以上経った今でも僕の記憶にはっきりと残っている。


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