プロローグ『物語の始まり』
毎日投稿できたらいいな
――いったい、どこで間違えたのだろうか。何を、間違えてしまったのだろうか。
異界の森林で、湿った地面の感触を嫌という程味わいながら、少年は倒れ伏していた。どういうわけか体の感覚がほとんどなく、身動ぎの一つさえもできやしない。しかし、脳が沸騰するほどの激痛に全身が支配されていた。
その理由は単純。少年の体には数えることが馬鹿らしくなるほどの傷が存在し、そこから命の源たる血が、どくどくどくどくと零れ続けてるからだ。破れた腹に当てている手には、ぶよぶよとした内臓の不快な感触がある。多分、皮一枚で繋がっているのだろう。
少年の視界に映る真っ赤に染まった地面、小さな水溜まりを連想させるそれは、まるで自身が溺れているかのような感覚を与えてくる
――あぁ、この赤いの、全部俺の血なんだな。
遅れて少年は理解する。その瞬間、いままで全身を支配していた激痛が消え去っていくのを感じる。それと同時に、肉体の感覚と不快な肢体の感触も遠のいていく。そして、僅かながら脳に宿る意識と、自らの血で汚れ切りほとんどの物体が不可視になった視覚が少年の身体に置いてけぼりにされる。
意識が溶け行くの中、少年は心の中で嗤う。
結局自分は16年生きてきた中で、為すべき事を何一つ為せず、大切なモノを全部なくした大馬鹿野郎だ。そんなヤツはこうやって独りで孤独に死ねばいい。今まで散々恩人に迷惑をかけた挙句、礼の一つ伝えられやしなかった自分にとって。
少年は、己の人生を嗤う。そこには侮蔑と嘲弄の意思があるが、それらが霞むほどの後悔の念も存在した。だが、最早どうでもいいことだった。
最後に残った意識と視覚を手放し、『死』が自分を連れていくのを待つ――瞬間、今まで何も映してこなかった瞳に何かが映り込む。
――それは、人だった。
――それは、黒衣を纏う美しい少女だった。
――それは、こちらへと近づいてきた。
――それは、白い華奢な腕で自分に触れた。
――それは、何かを囁いた。
「■■、■■■■■■。」
か細い、鈴音のような声。
なんでこんなところに人が? この人は何をしてるんだ? そもそもこの人は一体何なんだ?
普通なら、真っ先に浮かぶような疑問。しかし不思議なことに、少年はそんな疑問を持たなかった。むしろ、こんな状況で感じえない『安心感』さえすら抱いてしまっていた。
何故、何故、何故、何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何――
先程までの思考が風の前の塵屑のように吹き飛ぶ。
残り僅かな生が枯れ果てるのを待つだけだった少年の脳内へ、突如として割り込んできた有り得るはずの無い安心感に、無理解と疑問を叩きつけられる。
一体、何なんだっていうんだ。何なんだよ。何を言っているのか、分からない。理解できない。
「■う、大丈■■■ら。」
けれど、その人が何を言いたいのか、何を、俺に言ってくれているのか。それが、分かった。
そんな気がした。
それと同時に、少年の――『コクシ』の意識は、ぷつりと途切れた。
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