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14 騎士団

「ふん。やはりそのコウモリは貴様の使い魔だったか」


 隊長は余裕のある笑みで言った。

 ユーリアは足と翼で、私の肩にしがみついている。

 私は髪を払って言った。


「……使い魔というより妹みたいなものね。不服だったら後ろの三人と協力してもいいのよ」


「妹だなんて。う、嬉しいですオシブさん。で、でも、あまり挑発しないほうがいいですよ」


「黙って。来るわよ」


 直後に隊長が踏み込んできた。

 突き出された剣を、首を傾けてかわす。

 遅すぎて余裕だ。

 あとは爪で斬り裂いて終わりっと。


 しかし。


「――熱っ」


「距離が近すぎるんです。銀製の武器は当たらなくても危険みたいです!」


「何よそれ。反則だわ」


「ごめんなさい! 知識不足でした!」


「済んだことはしょうがないわ。はい黙る」


「上手くかわしたな! ならばこれはどうだ!」


 彼の投げたビンが、宙で回転する。

 直後に破裂した。

 中身の液体が、私にかかる。


「きゃああああ!」


「オシブさん! オシブさん!」


 液体は聖水だったな。

 まさか破裂させてくるとは予想外だった。


 全く楽しませてくれる。


 しかし非常に熱い水だな。

 おかげで私の服は焼け、皮膚はただれてしまった。

 左腕の骨もむき出しになっている。

 左目からは何も見えない。

 おそらく顔の半分は原形をとどめていないのだろう。

 私が右手で顔を押さえていると、隊長は剣を振りかぶった。


「ハッハッハ! 勝負あったな! トドメだ、死ね!」


「甘いわよ」


「――ぼふぁ!」


 床に落ちていた皿を、彼の顔面に投げ付けた。

 彼が床に倒れると、ユーリアが私の顔をなめた。


「まかせてください。すぐに治しますから」


「あなたには聖水の効果はないのね」


「理由はわかりません。こんな魔物みたいな見た目をしているのに」


「まあ、無事でよかったわ」


「ごめんなさい! オシブさんはキレイなお顔を滅茶苦茶にされたのに、わたしだけ何ともないなんて」


「気にする必要はないわ――よっと」


「なに! 背後から襲ったのに!」

「音は立てなかったんだぞ!」

「大丈夫よ! 相当弱ってるから、私達三人がかりで倒せるわ!」


 後ろを向くと、さっきまで私がいた床にに、槍と大きなハンマーと鎌が突き刺さっていた。

 私は笑顔で言った。


「息の合ったコンビネーションだけど、殺気がきつすぎて容易に反応できたわよ」


「卑怯ですよ! 不意打ちなんて! あなたたちはそれでも王国騎士団ですか!」


 ユーリアが怒鳴ると、三人は余裕のある笑みを作った。


「馬鹿め。魔族相手に正々堂々戦うやつがあるか!」

「勝った者が正義だ。卑怯など弱者の戯言にすぎぬ」

「大人しく消滅なさい、この醜い化け物どもめ!」


「さ、最低です――」


「まあまあ、そんなに怒らないの」


 ユーリアの頭を、再生した左手でなでてやる。


 まあ、彼らの言うとおり殺し合いにルールなんてない。

 勝てばいいのだ。

 敗者から卑怯者と罵られるのは、魔族にとっては褒め言葉だ。

 ん?

  ということは。

 ひょっとして彼らも魔族なのかな?

 どちらにしても、遠慮なく殺させてもらおう。


 私が喜んでいるのと対照的に、ユーリアは悲しそうだった。


「もしかして、自分だけ無事だったからイジケてるの?」


「本当にごめんなさい! オシブさんはこんなに痛い思いをしているのに……」


「私ってちょっとマゾヒストなところがあるのよ」


「ええ!?」


「冗談よ。私は相手を痛め付けるのが大好きなの――はい、喋らないで」


 宙返りをすると、隊長が剣で突いてきた。

 彼は上を見て、私を睨む。


 私は天井に足をつけて、彼に目掛けて飛び蹴りをする。

 もう少しで当たろうかと思えた。

 しかし彼は振り向いて、白い物を見せた。

 すると、私の身体は勢いを失い床へと落ちてしまった。


「ぐっ、動かない」


「オシブさん!」


 ふらつきながら身体を起こすと、隊長は白い物をかかげている。

 すると身体が重くなって身動きが取れなくたった。


「……何よ……あれ?」


「十字架? しまった、そんな物がありました。本当にごめんなさい! 十字架も吸血鬼の弱点なんです。あれを見せられると動けなくなるんです!」


 泣き叫ぶユーリアを尻目に、隊長は嬉しそうに言った。


「どうだ十字架の効果は? これで貴様はもう何も出来んぞ!」


 そう言うと、彼の放った一撃が私に直撃した。

 激痛とともに、私の身体は吹っ飛ばされた。

 窓を突き破り、外へと飛ばされる。

 石造りの道路をえぐり、向かいの建物に激突してようやく止まってくれた。


「うええええん!」

「ママー! ママー!」


 泣き声が聞こえたから、横を見ると子どもが二人いた。

 かなり幼く、お互いを抱き合っている。


「怪我はない、ユーリア?」


「オシブさんのほうが大変じゃないですか!」


「平気よ」


「全然平気じゃないです!」


 彼女の言うとおり、他人から見れば大怪我だろう。

 彼の剣が、私の胸を突き刺さっているのだから。

 刺さった箇所から湯気が出ている。

 刺さった周囲の肉体が崩壊しているのがわかる。


 ユーリアが剣を抜こうと、足で持って、翼を羽ばたかせている。

 しかし剣は全く動かない。


「全く、痛いことしてくれるわね」


「どうしてそんなに虚勢ばっかりはっているんですか!」


「苦しめばそれだけ、やり返した時の快感が増すでしょ」


「死んじゃうんですよ!」


「その時は、運が無かったって諦めるわ」


「ダメです! わたしを殺すまで死んだらいけませんよ!」


「ユーリア?」


「わたしの血を吸うんでしょう? 今は醜いコウモリになっちゃって、きっと血も美味しくないでしょう。でも、もし奇跡が起こって人間の姿に戻れたら、血も美味しくなるはずです」


 ユーリアは抜くのを中断して、私の顔に近付いた。


「その時はわたしの身体に流れている血を、一滴も残さず吸いつくしていただきますからね!」


 変わった人間だわね。

 吸血鬼なんて、普通は嫌がるんじゃないのかしら?

 まあ、いいや。

 お言葉に甘えてあげるわ。


「そうね。あなたの手から流れた血はとても美味しかったわ。いいわ、約束する。何とかしてあなたを人間に戻しましょう」


「あ、ありがとうございます!」


「その時は惨たらしい最期を味あわせてあげるわ。今の約束を後悔するがいいわ」


「よろしくお願いします。わたしはアンリさんより美味しいはずですから!」


 そう言ってユーリアは、突き刺さっている所をなめた。

 しかし傷は癒えそうにない。

 彼女の能力の限界か、まあいいさ。


 野次馬の数人が私に近寄ろうとした。

 私を心配するような言葉を発している。

 しかし逃げてしまった。

 他の野次馬も距離を離していく。


 すると酒場から四人が出てきた。

 野次馬はあの騎士団を恐れているのか?

 騎士団たちは勝ち誇った顔をしている。


「ハッハッハ! 無様なものだな!」

「しかし隊長、油断はいきませんぜ」

「確かに。奴は今までの吸血鬼よりは手強い」

「私達の確実な勝利のため、ここから光魔法で仕留めるわよ!」


 彼らは呪文を唱え始めた。

 すると彼らの身体が神々しく光り出す。


「……忌々しいわね」

「マズイです。かなりレベルの高い光魔法です。きっと魔王を倒せるほどの破壊力ですよ」

「ふーん」


 ユーリアはかなりおびえていたけど、私は全然怖くなかった。

 かなり傷付いたけど、ドラゴン魔王にやられた時のほうがずっと痛かったからだ。

 だから、他人から見れば追い詰められているっぽいけど、なぜか勝ちを確信してしまったのだ。


 痛みが全身を駆け巡り、熱くなったり冷たくなったりを繰り返す。

 私は立ち上がって、剣をさわった。


 隊長の笑い声が聞こえた。


「馬鹿め! そんなことをして抜けるとでも思ったか? 吸血鬼の貴様が銀の剣をさわれば、その汚い手はたちまち崩壊して――」


「あら、やだ。抜けちゃったわ」


「なにいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっっっ!!!???」


 柄を握ってブンブン振り回す。

 魔界にいた頃はずっと素手で戦ってきたから、一度武器でも使ってみようかしら。

 すると身体から赤黒い湯気が立ちこめる。

 本当にこのスキル発動が遅いわね。

 もっと早く発動してくれれば、銀や聖水や十字架を無効化できたはずなのに。

 こんなに痛い目にあわずにすんだのに。

 でもおかげで傷はあっという間に癒えてくれた。


「た、隊長! あの禍々しいオーラはいったい?」

「うろたえることはない。ただの悪あがきだ」

「そうよ。過去に倒してきた吸血鬼も最後はおかしな事したじゃない。ねえ大丈夫ですねよ隊長?」


「……あ、あ、あああ。ま、まさか、何故……貴様がそれを? あ、ありえん……」


 隊長の整っていた顔からは、汗と鼻水がダラダラと流れていた。


「伝説の聖女が使っていた『血液の波動』を何故貴様が使えるのだ!?」

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