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異端の戯曲

水仙の花を、君へ。

作者: 民間人。

 僕は陰気な地の底で、虚な影と暮らしている。

 仲間は三つ首の犬くらいで、仕事ばかりで過ごしてきた。


 春のあの日、穏やかな笑顔の君を見て、胸が射抜かれたようにずきりと鳴った。


 君の笑顔が欲しくって、君の親父に、僕の弟に、こっそり相談したんだよ。


 強引なくらいがちょうどいいって、あいつは言っていたけれど。


 水仙の花を大地に咲かせて、大地丸ごと君を堕とす。そんなの君が喜ぶはずないのにね。


 堕ちてきた君が母を思って泣きじゃくるのに、僕はどうしてあげることもできなくて。


 自分が欲しかったものは手に入らなくて、唸っている間に見慣れたケリュケイオンがやってきた。


 君を返してほしいのだと、君の母が悲しんでいるのだと。


 僕の心に燃えた炎は、きっと許されない煉獄の火だ。君と君の母親に、不幸を振り撒いてしまうから。


 それでも帰ってもよかったんだよ。幸せな暮らしに戻れるならば、戻ってこなくて良かったんだよ。


 だのに君は柘榴を四粒口にして、甘やかに微笑んで見せた。


 とびきり綺麗な水仙の花は、君にぴったりの花だと思うんだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 素敵な詩ですね。 とても良かったです。 読ませていただき、ありがとうございます。
2021/12/28 19:46 退会済み
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