水仙の花を、君へ。
僕は陰気な地の底で、虚な影と暮らしている。
仲間は三つ首の犬くらいで、仕事ばかりで過ごしてきた。
春のあの日、穏やかな笑顔の君を見て、胸が射抜かれたようにずきりと鳴った。
君の笑顔が欲しくって、君の親父に、僕の弟に、こっそり相談したんだよ。
強引なくらいがちょうどいいって、あいつは言っていたけれど。
水仙の花を大地に咲かせて、大地丸ごと君を堕とす。そんなの君が喜ぶはずないのにね。
堕ちてきた君が母を思って泣きじゃくるのに、僕はどうしてあげることもできなくて。
自分が欲しかったものは手に入らなくて、唸っている間に見慣れたケリュケイオンがやってきた。
君を返してほしいのだと、君の母が悲しんでいるのだと。
僕の心に燃えた炎は、きっと許されない煉獄の火だ。君と君の母親に、不幸を振り撒いてしまうから。
それでも帰ってもよかったんだよ。幸せな暮らしに戻れるならば、戻ってこなくて良かったんだよ。
だのに君は柘榴を四粒口にして、甘やかに微笑んで見せた。
とびきり綺麗な水仙の花は、君にぴったりの花だと思うんだ。