1.まずは導入から
「さあ、友を助けたくば、我が名を呼べ」
「・・・なんなんだ・・・もう・・・訳が分からない・・・」
「我が名を呼ばねば、友は死ぬぞ。」
「・・・」
「つーか、お前も死ぬけどね(笑)」
「なんで急にフランク!?」
「さあ、早くしろ!もう時間がない!」
「あー!もう!なんなんだよ!」
「もう一度言う!我が名は『 』!」
「分かったよ!言えばいいんだろ!言えば!」
「早く!」
「『 』!!!」
「・・・それでいい」
「・・・なあ、三葉。
ホントにこっちで合ってるのか?」
幼なじみで、高校でも同じクラスの片倉優一は、鬱蒼と生い茂る木々をきょろきょろと見回しながら、そう言ってきた。
「・・・優一。
あんたいつまで三葉のことを信用してるの?
とっくに迷ってるに決まってるじゃない」
「人聞きの悪い!
何を根拠に!」
優一同様、幼なじみの笹木深雪が嘆息しながら、そう言ってきたので、慌てて反論した。
「・・・冷や汗流しながら、きょろきょろして・・・
あんた、さっきから山で遭難した人と同じ状態なのよ」
「・・・ぐう」
人は論破されると、ぐうの音も出ないと言うが、ぐうの音だけ出た。
前薗三葉、片倉優一、笹木深雪、この3人は幼稚園の頃からの幼なじみで、高校2年になる現在に至るまで、なぜかずっと同じクラスになるという、驚異の腐れ縁っぷりを発揮している。
まあ、実際は教師側が、「問題児を分散させたら手が追っつかん!むしろ一ヵ所にまとめることで、発生する問題数を減らすのだ!」という、苦肉の策が故なのだが、当の本人たちは知る由もない。
そして、今日も今日とて、平日の真っ昼間であるにも関わらず、この前、三葉が学校の屋上から双眼鏡で見つけた、御倉山に出来たミステリーサークルを探しに、山の麓の樹海を探索・・・否、迷走中である。
もちろん学校はサボリ。
自由だ!
ちなみに3人とも不良というわけではない。確かに三葉は不良ではあるが・・・
そこそこ腕は立つが(三葉以外)、無下に暴力を振るったりはしない。主にトラブルを時には起こし、時には巻き込まれる三葉用に常備されているだけだ。
そして頭も良い(三葉以外)。優一は常に学年一位だし、深雪も上位ランクの常連だ。
ちなみに三葉は・・・下から数えた方が早い。
高校はそこそこのレベルだが、2人が三葉のレベルを付け焼き刃で無理矢理押し上げた結果、無事に問題児たちは同じ高校へと進学した。
ちなみに入試後、三葉はしばらくパーになっていた。
御倉山は三葉たちの学校から1kmほど離れた位置にある、県内でも有数の広大な樹海を持つ山である。
山の部分よりも樹海の方が面積があり、未だに未踏の地があるのではないかと、一部で囁かれていたりする。
標高は比較的低く、鬱蒼と生い茂る樹海の一部がこんもりと盛り上がったような、なだらかな山で、登山というより、ハイキングの場として支持を集めている。
そのため、地元民は例に漏れず、幼稚園・小学校の遠足から始まり、中学の自然教室を経て、高校のマラソン大会に至るまで、ことある事に、この御倉山のお世話になっている。
「ねえ!ここはいったいどこなの!?
もう御倉山自体がどこにあるかも分からないわよ!」
いい加減しびれを切らした深雪が、そう言いながら三葉の首を絞めた。
「も、もう、すぐの、はず、なん、だ
てか、と、り、あえ、ず、手を、は、な、し・・・」
「・・・深雪。そろそろ落ちるぞ」
「おっと!」
顔色が赤から青に変わり始めた三葉のタップと、嘆息した優一の助言を受け、深雪は慌てて手を離した。
五分後。
「・・・はー・・・はー・・・」
「いやー、ごめん。ごめん。」
前屈みで首を抑えている三葉に、深雪は手で頭の後ろを掻きながら謝った。謝罪の意思は感じられない。
ようやく呼吸の落ち着いた三葉は、腰まである深雪の黒髪の端を睨んだ。
「まったく・・・危うく殺られる所だった。
樹海で殺されるとか、洒落になんねぇよ・・・」
「いやー、だからごめんって。
それに、そんときはちゃんと埋めといてあげるから。親友のよしみで」
「死体遺棄!?」
楽しんでいただけたら嬉しいです。
作品の読みやすさのため、前書きや後書きはあまり書かないようにしてます。
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