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「四者四様の布石・龍真と白羽の場合」

ブックマーク数が50を超え、驚きと喜びで感情が迷子になっております。

四者四様の布石、最後は1期生の二人です。音楽という共通項がある為、敢えてコラボにしてみました。

音楽に関する知識が浅い為、ツッコミどころはあるかもしれませんが、ニュアンスで受け取って頂けますと幸いです。

そのコラボ配信の告知があったのは、キンメによる早描きリクエスト配信のあった翌朝の事だった。


『同期の白羽と曲を作る事になったので、打ち合わせ配信する。今夜20時。』

『龍真くんに「一緒に曲やろうぜ」って言ってきた。龍真くんのチャンネルで今夜20時に打ち合わせします。見に来てね。みんなの意見も聞いたり聞き流したり聞こえないフリしたりします』


SNSで唐突に告知されたそれは、二人が想定した以上に拡散された。未だにV同士の男女関係に対して肯定よりも否定が多い現状で一対一、その上で合作の曲を作るという挑戦的な行動であり、大きな波紋を呼んだ。この時期には既に『杞憂民』『ユニコーン』と揶揄されるようなリスナーも多方面に生まれており、オファーする側もされる側も極めて慎重に対応している所が殆どであった。数少ない例外は老若男女問わずVtuberの人数が多過ぎる『オーバーズ』くらいである。

また、龍真の外見が典型的B-BOYであり「遊んでそう」と思われた事も想定以上の波紋となった要因だった。音楽活動がメインとなっている事で、人となりを知る機会が少ない部外者程、このコラボを不安視し、或いは最初から悪意を持って拡散する者も居た。


一方で、当の二人のファンは全く別の不安を覚えていた。二人の音楽への理想とこだわりが極めて強い事を知っているリスナーは「音楽性の違いから大喧嘩になるのではないか」と考えたのだ。期せずして、あらゆる方面からあらゆる意味での緊張感を持たれたまま、その配信は始まった。


「さて、とりあえず俺の作ってたトラックに貰ったギター音源合わせてみた訳だが、なんかこう合ってねぇな」

「まぁお互い好き勝手作ってたのを雑に掛け合わせてみただけだからね。丑倉的には龍真君の前向きな歌詞も見てみたいからこの音渡したんだけど」

「まず方向性だな。どっちに合わせるよ?」

「丑倉が誘ったからね。龍真くんのポエトリーの世界観に合わせてみようと思う。シューゲイザーっぽい歪んだ感じで、どっちかというと丑倉のギターがアクセントになるレベルでいいかも」

「それだとコラボっつーより、俺の曲に協力してもらった感じになっちまわね?ギターソロと……フックで歌ってもらえるか?裏でギター流すだけじゃ白羽のリスナーに申し訳が立たねぇ」

「歌うのはいいけど、フックってなに?」

「サビ」

「把握」


様々な不安は払拭された。男女コラボという事で浮ついた空気になる事を不安(あるいは悪意のある期待)を持っていた新規のリスナー達はコメントで口も挟めずにいた。

配信画面上には龍真によるDTMソフトの画面、両端にワイプ風の四角い枠に両者のバストアップの立ち絵(しかも専用ソフトで動かしていない静止画)を並べただけという簡素かつ素人目には何をやっているか全くわからない状態。当の二人はこれが配信である事を知ってか知らずか、コメント欄も置き去りに楽曲制作の為に必要な会話しかしていない。幸いにも、Vtuberとしての自身の性格や口調までは投げ捨てる事は無かったが、限りなく素の二人に近い状態である事は確かだった。


「シューゲイザーって俺も詳しくねぇけど、なんかサンプルあるか?TryTubeのアドレスでもいい」

「とりあえず有名どころだとこれとか?丑倉たちが産まれてくる前に結成されてるバンドだけど」

「助かる。別の端末にイヤホン刺して聴くわ。PCで聴いて配信に音乗ったらマズいからな」

「おけおけ、んじゃイメージに合いそうなトラックこっちに投げてくれる?それに合わせて丑倉がざっくり合わせるわー。聴いてる間にこっちも準備する」


《さっきから音楽の話しかしてねぇ……》

《思ってた男女コラボと違う》

《音楽ガチ勢怖い》

《俺ら、マジでスタジオの外から見学してる人の気分》

《シューゲイザーならこれもおススメ→ttp://trytube.com/watch/xxxxxx》

《初めて聴くジャンルだけど、これ好き》


コメント欄も専門的知識が無い為か、蚊帳の外である事を自覚したようなコメントが並んでいた。所々で龍真と白羽の会話の中に出てきたフレーズやジャンル名などを解説したり、或いは布教をする者も居た。野次馬根性で来た者も多数いたせいか同接者数は開始時点で1000人を超えていたが、開始数十分で残っているのは600人ほどとなっていた。

無論、その配信を離れた全員が全員野次馬、或いは出歯亀ではなく、敢えて情報を入れないで完成した楽曲を聴きたいというファンも居た。逆に、残っている中にもどうにか言葉尻を捉えて、何かしらの火種を探す者も潜んでいた。


「二人でやるなら、二人でなければ意味がないリリックにしてぇな……」

「セッションだし、誘ったのは丑倉の方だもんね。丑倉は歌詞書けないけど、どんな感じにするの?」

「……例えば、最初は夢に破れた者同士、対処が無理になった者同士、初顔合わせは互いに警戒、悪態付かないだけマシな状態」

「……ちょっと黙るね」


龍真が一人語りの様に韻を連ねていく。三日月龍真という男は、かつてフリースタイルでのサイファーやMCバトルにも参加していた。所謂「現場のMC」だった。しかし、たった今語った通り夢に破れ、対処が無理になってしまった経験を持つ。白羽も同様に、バンドでギタリストを続けられなくなったが故に、現在Vtuberの世界に身を置いている。それぞれ、配信で深く語った事は無い。お互いの、現実世界での出来事を持ち込むことは個人情報の漏洩にも繋がるし、これ以上過去を振り返っている暇はないという判断を二人が下したからだ。


『生まれ変われ、自分』


そのフレーズと、ステラ・フリークスの音楽的才能に魅せられた二人は、夢を砕かれ、それでも新天地を求めVtuberという、仮想の世界に飛び込んだ。故に、


「あったのは夢を捨てられない苦しみ、涙出ないようにただ睨みつけた宇宙に、俺達は見付けた、輝ける星。目が眩んだまま、瞑れずに目を奪われた。耳を奪われたまま、塞げずに聴いてた。狼狽えたまま、ただ『美しい』と思った。自惚れていた自分にその日気が付いた。俺達は星に手を伸ばす愚か者、現実(リアル)仮想(バーチャル)の壁を壊す音はどこ?見つからないのなら見つけに行こう、と。星は俺達の上で輝く、煌々と」


思い付くままに吐き出したリリック。自然と、白羽による歪みのあるギターの音色が足されていた。闇雲に歪ますのではなく、どこか宇宙を感じさせるような、無機質で暗い音色だったが、龍真のラップを活かすような音になっていた。星が何を意味しているかは、龍真自身も、白羽も、そしてリスナー達にも分かっていた。いつの間にか、同接者数は最初の半分以下にまでなっていた。この後も、数時間ほど真剣に音楽に向き合う二人のミュージシャンによる配信は続いた。


完成した楽曲が披露されるのは、公式配信の前日の事だった。

丑倉白羽はその告知の際のSNSに、この様に記した。


『丑倉白羽と三日月龍真a.k.a.Luna-Doraの決意表明。是非、聴いてほしい。タイトルは【Stargazer】です』


その曲は一晩で2万再生を超える、スマッシュヒットとなった。


配信時間:5時間03分


最大同時接続者数:1201人


チャンネル登録者数:5901人(龍真)、7714人(白羽)

龍真のラップ詞が一番苦労しましたが、その分やりがいも感じました。

その分おざなりになってしまった白羽さんのパーソナリティの深掘りは近いうちにやりたいと思います。


感想等お待ちしております。


(10/19 1:35 文書作成ソフトからコピーする際に、文章が二重になっていた部分を修正しました)

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