「ヴィラン達の戯れと、戯れで済まない事と」
雑談回です。いつものノリもありつつ、いつも通りじゃない事も。
「さて、我々初の全員参加の『歌ってみた』作品なわけだけど、まぁここまで来るのにまぁまぁの紆余曲折があったよね」
「ハロウィン曲、ボカロに限らず滅茶苦茶多いからなぁ。ハロウィン企画やるにしても、どの曲選ぶって時点でまあまあ悩んだよなぁ……」
「僕らなんかデビューして一ヶ月で全員企画への参加に新衣装で、こんな恵まれてていいのかって思いますよ……」
《普通に雑談始まったな》
《絵面だけなら悪の組織の幹部会議》
《こんなしみじみと語る悪の組織があってたまるか》
「結果から言いますと、楽曲の方向性が決まったのは志藤カナメさんのキービジュアルが完成したタイミングでした。一般的なハロウィン……ジャックオーランタンや、モンスターのコスプレ。オレンジ色と紫、黒を基調とした、皆さんがごく普通に想像するハロウィンのようなイメージではなく、ダークファンタジーに近い世界観だった事で、このイメージに合う楽曲を……という形で、Spooky Forkloreさんの『Sin』をカバーする事になりました」
「志藤先生にお任せしたら、まさかの悪堕ちだもんねぇ。まぁ実際に陽キャノリのハロウィンが似合わないけどね、あたしら」
「基本ハシャがないもん、丑倉達」
「わ、私もあまり大きい声出すのとか、不得意で……」
《説明助かる》
《志藤カナメさん、基本悪堕ちと鬱展開にエモを感じる人だからな……》
《鬱くしいイラストに定評のあるカナメネキ》
《まぁリバユニに陽キャ感は確かに無いな……》
《陽のオーラ自体はあるんだけどな。龍真やキンメ、四谷とか》
《音量注意レベルで叫ぶのがVtuberではないのか?》
《ド偏見で草》
《大手や個人勢のハイテンションに付いていけない連中が流れて来てるよな、リバユニ》
「実際に『Sin』をカバーするにあたって、歌割りがね……この曲は七大罪を割り当てる事になった訳だけど」
「即決で決まったのがステラ様の傲慢でした」
「ビックリするほど満場一致でしたね……」
「ふふ、みんな私の事を理解していてくれて嬉しいよ」
「いや、喜ぶとこか?」
《草》
《まぁ強欲か傲慢だよな》
《なんで本人ちょっと嬉しそうなんだ》
《四谷が超気を遣ってるのにw》
「で、俺の強欲と白羽の色欲が次に決まったんだけどな……」
「まぁ丑倉も最近化けの皮剥がれて来たから丁度いいかなって」
「それも本人が言う事じゃねえんだよなあ」
「その、白羽さん、本当に普段から……こう、明け透けですから……」
「むしろ良く今まで隠せていたと感心しました」
「隠さなくなってから、何故か女性視聴者が増えたんだよね。不思議」
《龍真の強欲は解釈一致。丑倉はどうしてこんなになるまで放っておいたんだ》
《丑倉の下ネタはなぁ……エロいっつーより、シンプルに下世話なんだよなぁ……》
《切り抜き動画にドン引きするコメントが大量に付いてて草も生えない》
《お嬢が言葉を濁しておる……》
《執事辛辣で草》
《女性が増えたというより男が逃げたのでは?》
「キンメちゃんの怠惰がその後に決まって、残りの三人ならユリちゃんが嫉妬が一番似合う、って形で決まったんだよね。ふふ、ユリちゃんの新境地、楽しく見させてもらったよ」
「え、えええ……す、ステラさん、恥ずかしいです……でも、ちゃんと伝わってるか、少し不安で……」
「思ったより粘着質の感情を見せてて最高だったね」
「白羽さん……!」
「あたしは楽だったなぁ……普段から怠惰に過ごしたいって気持ちで一杯だから」
「それでいいんですか、キンメさんは」
《ナイスヤンデレ》
《超重い感情出てた》
《かわいい》
《あのお嬢になら束縛されても構わない》
《ウィスパーで歌い始めた所、ゾクゾクした》
《キンメもある意味凄かったな……なんで、あんなに力抜けてるのに声量出るんだ……?》
《Sinの怠惰パートでも限りなく正解に近い歌い方だった気がする》
《つーかシンプルに全員歌が上手かったよな……》
「僕と廻叉さんは、どっちもイマイチ当て嵌まり辛いってなってましたよね……最終的に、ステラ様の一言で僕が暴食になりましたけど、解釈が難しかった……」
「ですが『知識を貪る』という方向性を見付けたのは素晴らしいと思いました。四谷さんの良さが前面に出る良い解釈だと思います。むしろ私の方がどうするべきか悩んでいましたからね」
「あれだけの『憤怒』見せといてよくそういう事言えるよなー」
「後輩を褒めるいい先輩してるねー」
「あの、私はどうでした……?」
「勿論、ユリアさんも素晴らしかったですよ。『嫉妬』の表現に悲嘆や悲哀へと感情を傾けるのは本当に予想外でした。四谷さんもそうですが、ユリアさんも表現力が素晴らしかったです」
「あ、ありがとうございます……!」
《四谷に暴食のイメージは確かになかったなぁ》
《知識喰いはなるほどってなった》
《リバユニに入れば執事に褒めてもらえる……!?》
《こうして四期生候補が増えるのだった》
《でも適当な事やったら淡々と説教されそう》
《それはそれでご褒美では?》
《更に上の先輩が茶々入れしてるの草》
《いや龍真と白羽も後輩褒めてやれよw》
《おやおやおや、お嬢ったら四谷が褒められて嫉妬かな?》
《これは嫉妬の使徒》
《実際、嫉妬=怒り、苛立ちってイメージだったから覆された感は正直ある》
《下手なヤンデレより怖いやつだった》
《うわ、執事に褒められてお嬢嬉しそう》
《お?てぇてぇか?》
《男女というより、先生と生徒感があるのはなんでだろうな》
《執事に褒められて喜ぶ令嬢……ちょっとファンアート描いてくる》
《言い値で買おう》
「というか、廻叉の憤怒に関してはガチでキレてたよな?」
「……先日、自分自身の至らなさを思い知る機会がありまして」
「自分相手にそこまで怒ってたんですか……廻叉さん、やっぱヤバい人ですよね」
「ちょ、ちょっと四谷さん……!」
「私と会った人、大体私の事ヤバい奴って言うんですよね、不思議と」
「不思議でもなんでもねぇよ。Vtuber界隈で今までにない方向性でやべー奴だよ、お前」
「賛成」
「同意」
「全くもってその通りだよね」
「え、あれ、私だけ……?」
《執事の怒り怖かったわ……》
《声を荒げず、じわじわ溢れてくるようなキレ方してたな……》
《憤怒っつーか殺意だよあんなの》
《それが自分に向かってたのか……本当にヤバいわ》
《四谷も言うねぇ》
《草》
《満場一致で草》
《自他ともに認めるヤベー奴》
《待て、お嬢だけなんとかフォローしようとしてるぞ》
《優しい》
《羨ましい》
「乗っかった私が言うのもなんだけど、そこまでにしよう。ユリちゃんは、廻くんに憧れてリバユニに来た子なんだからさ。そんな人がヤバい奴呼ばわりされたら、ユリちゃんとしても気分が良くないさ」
「ちょ、あえ、す、ステラさ、あああああ!?」
「ステラ様、お嬢が盛大にバグってるけど大丈夫か?」
「大丈夫じゃなさそうだね」
「そりゃいきなりバラされたらねぇ」
「うーん、同期の意外な一面……」
「おや、てっきりもう話しているものかと思ったんだけど違ったのかな?」
「ううう……確かに、入る前に憧れていたVtuberさんは、廻叉さん、です……」
《!?》
《なんだと……?!》
《おいお嬢リスナー、そういう話は配信であったのか?》
《マジかよ!お嬢、御主人候補だったのかよ!》
《いや、初耳。初配信で言ってた時くらいだわ、志望動機とかは》
《ステラ様がブッ込んだのか……w》
《流石に他の面子は知ってたっぽいな。たぶん面接辺りで知ってたのかもな》
《観念して自白したかw》
《草》
《反応が好きな人をバラされたときのそれで草》
《これ、ちょっとお嬢が可哀想じゃねぇか?》
「……ステラ様?流石に、今のはどうかと思いますが?」
「そうは言うけどさ、廻く」
「ステラ様?」
「…………」
《うわ、執事怒ってる》
《今のは確かにステラ様アカンやつだったな》
《配信全部見てチェックするわけにもいかんが、事前に話していいかの確認くらいはするべきだったな》
《怒るっていうか叱ってるな……》
《登録者数8000そこそこの後輩にガチで叱られる登録者数10万超えのVシンガー》
《うわ、場の空気凍ってる……大丈夫かコレ》
《このタイミングでこそスタッフが止めるべきじゃね?》
「言うべきことが、わかりますね?」
「うん……ユリちゃん、ごめんね。無神経だった」
「ふぇ、い、いえ!?そ、そんな、きっといつかは話していたと思いますし……!」
「貴女自身の口から話すのと、第三者から勝手に言われるのとでは全然別物です。これに関しては、ステラ様に非があるのですから謝罪するのは当然です。……まぁステラ様も謝った事ですし、ユリアさんが許すというならばこれでこの話はおしまいです」
《あ、ステラがシュンとしとる……w》
《草》
《ステラがカワイイという貴重なシーン》
《傲慢とは何だったのか》
《憤怒>>>>>傲慢>>>>>嫉妬》
《執事……いや、ママ……》
《ママみを感じる》
《厳しくも優しいママだ……》
《誰一人としてパパと言わないの何なんだよ》
「……わかりました。その、ビックリしただけで私は怒っていないですから、大丈夫です」
「ありがとう、ユリちゃん。この埋め合わせは必ずすると約束する。廻くんもごめん。それとありがとう。私が間違った時にきちんと言ってくれる後輩が居てくれて、幸せ者だよ、私は」
「良い話風にまとめるのは結構ですが、次にやったら“そういう役”のつもりで怒鳴り散らかしますからね?」
「………………ごめんなさい」
《解決か。良かった良かった》
《一歩間違えれば炎上案件だったからなぁ。執事がその場で叱ってくれてよかったわ》
《登録者数もキャリアもかなり上の相手にガッツリ言えるのすげぇわ》
《ユリア、何らかの埋め合わせを獲得》
《これは大チャンスですよ》
《四谷にもチャンスやらないと》
《じゃあ四谷の暴露をしようぜステラ様》
《鬼か貴様》
《今度こそ執事がキレる奴》
《凄い間があって草》
「はい、説教終わり。廻叉ー、悪いな。俺らも止めるべきだった。ついいつものノリでやっちまったよ」
「いえ、皆さんは当事者ではありませんでしたから。言うべきは、私です」
「すごいなぁ廻叉さん……うん、憧れるの、分かる」
「……四谷くんと、廻叉くん……閃いた」
「奇遇だね、白羽ちゃん」
「白羽さん?キンメさん?」
「申し訳ありませんでした」
「心よりお詫び申し上げます」
「分かれば結構です」
「なんか今日だけでリバユニ内の力関係が大変動してねぇか?」
《龍真もフォロー入れたか》
《執事信頼のおける男だな……》
《基本大人だよな、みんな。ステラ様が一番子供まである》
《小泉も執事に尊敬の目を向けてるな》
《おいこら色欲》
《キンメ、お前もか》
《草》
《謝罪音速で草 》
「という訳で、皆様お騒がせしました。実際、ユリアさんが私の事をどう思っているかは『NEXT STREAM』さんに掲載されておりますリバユニ特集、次回更新予定の私とユリアさんのインタビューをご覧いただけますと、ある程度事実関係が分かるかと思われます。是非、ご一読ください」
「…………あっ」
「先週が私と、一期生二人の三者でのインタビュー。今週がキンメちゃんと四くんのインタビューだったね」
「で、次回がお嬢と廻叉……ん?お嬢、どした?」
「……は、ひゃああああ!?」
「この反応の理由が、恐らくインタビューに掲載されております。お楽しみに」
《そのまま流れるように告知!》
《やっぱ執事司会能力高いわ》
《ネクストのインタビューに呼ばれるとは、リバユニも大きくなってきたなぁ》
《先週今週、それぞれ興味深い内容だったから読むといいぞ》
《?!》
《どうしたお嬢!?》
《どんなまとめ方だよ執事!?》
《草》
《これは読まねば》
《てぇてぇ死するかもしれんな……》
※※※
廻叉の予告通り、『NEXT STREAM』に廻叉とユリアのインタビューが掲載され、ユリアの初々しくも真っ直ぐな廻叉への憧れに読者達は一様に浄化されたという。また、一方で廻叉の不穏さを滲ませる発言が話題になったのだが、この発言の意味が視聴者に分かるのは、まだ先の話だった。
次回からまた新しい展開になる予定となっております。
御意見御感想の程、お待ちしております。