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「軽々しく重い話をしようじゃないか」

仕事の増加とリンボマンをブチのめすべく平安京まで行っていた為、投稿が遅れた事をお詫び申し上げます。なお、今月は土曜日が全て出勤という地獄界曼荼羅な日程となっている為、場合によっては週に1回の更新になる事も先んじて御報告致します。ご了承ください。休みもください。

 黒背景にそれぞれの立ち絵、その上に「L.H.R」という簡素な文字列が並んでいるだけのサムネイルを、三日月龍真から送り付けられた正時廻叉は、作業通話上とはいえ珍しく感情を露わにした。


「……ハッ」

「鼻で笑った!?」


 先輩に対し非常に失礼な態度ではあったが、廻叉からすれば龍真が「俺が提案した企画だからサムネは俺が作る」と豪語しておいてのこれである以上、悪態の一つや二つは許されると考えたが故の嘲笑である。念のために作っておいた、もう少しラジオ番組らしいサムネイルを使う事も視野に入れつつ、大まかなタイムスケジュールを書いたテキストファイルを龍真に送る。


「基本的には時間もテーマも決まってないラジオですからね。というか、合間合間に曲を流す以外にラジオ要素無いですよね?」

「とはいえ、雑談配信で話すような事はしないけどな。文字通り、軽いノリで重い話しようぜ、って感じでさ」

「そもそも重い話を配信でして視聴者が喜ぶか、という問題もありますが」


 廻叉の懸念は尤もなものであり、事務所からも了承こそ得ているが第一回の内容次第では打ち切りもあり得る、と通告を受けている。龍真の草案では炎上問題についても取り上げる予定があった事から、事務所側としても放任とはいかなかった。


「需要はあると思うけどな。全員が全員そうだとは言わねぇけど、去年の10月頃か?Vtuberってジャンルが注目浴びて、数人から数十人、数百人数千人……こんだけ人数居て、真面目に語る事ってそれこそ企画としても単発だったり、雑談やゲーム配信の中での一部だったりするわけじゃねぇか。別に普通に語っていいんじゃねぇかな、って思ってな」

「まぁどうしても火種になりやすいですからね。特に、毎回配信の同時接続が4桁を超えるような人たちほど、そういう話がしにくいというのもわかります。人数が多ければ多い程、発言に対する解釈の数も増えますし、言い方は悪いですが曲解する人もいるでしょうし」


 実際にその手の発言をすることでリスナーの反発が起きたり、或いはリスナー同士での言い争いなどが発生した事例を二人は勿論知っている。発言が意図通りに伝わらないことなど、配信に限らず起こりうる事態ではある。だからと言って、避けるのは違う、と龍真は常々考えていた。


「HIPHOPはリアルである事が大事だからな。俺らの存在なんて、ある意味ではフェイクだけど間違いなくリアルでもある。むしろ俺こそがリアルを発信し続けるべきだと思ったわけだ」

「それは……龍真さんらしくて、良い考えだと思います。ですが、私をサブMCに選んだ理由は?」

「正直、俺一人でやったら絶対に舌禍起こすって思ったのが一つ。もう一つは、意見交換の形にした方がより深掘りできると思った。そうなると、感情を表に出さずに冷静に話し合える廻叉が適任だと思った」

「……そういう事なら、誠心誠意取り組ませて頂きます」


 そして、翌日。偶然か、それとも意図的かは不明だが、Re:BIRTH UNION3期生デビュー告知の直後に、初回の配信が行われた。




※※※




「Re:BIRTH UNION1期生、三日月龍真、MCネームはLuna-Doraです。えー、まずは一週間ぶり数千回目の禁煙に数時間で失敗した事を謝罪致します。理由としましては、食後のコーヒーを楽しんでいた所、ほぼ無意識の内に煙草を咥え、着火しておりました。今後はこのような事が無いよう、気を付けて生活をしたいと思います。では、いただきます」

「ジッポライター用意してる時点でもう禁煙するつもり欠片も無いですね、貴方」


《草》

《初手喫煙で草》

《ジッポ良い音すんなぁ》

《二人ともただの平常運転じゃねぇか》


「改めまして、皆様こんばんは。Re:BIRTH UNION2期生、正時廻叉です。本日から開始の新企画、『龍真・廻叉のライトヘビー級ラジオ』。この番組は、ラジオでありながらお便りを募集せず我々が軽いノリで重い話をするという方々から心配しかされていない企画です」

「ラジオって形にしないと際限なく話せるタイプだからな、俺達。正直、楽しくない話題も普通にするから、そういうの苦手な人は今のうちにブラウザバックしてくれると助かる」


《重い話て》

《心配というか不安というか》

《執事のSNSに載ってたトークテーマが割と不穏だったからなぁ》


「というわけで早速最初のテーマに参りましょう。こちらです」


『Re:BIRTH UNIONの今後について』


「とりあえず今日発表された3期生デビューについて、から話した方が良さそうだな。どうよ、廻叉。ついにお前さんも先輩だぜ?」

「そうですね……通話面談でお話だけはしているので、余計に感慨深い所はあります。どういう人物だったかは、デビュー配信までのお楽しみという事で伏せさせていただきますが」

「そこは勿論そうだな。ウチの事務所の公式サイトでシルエットと名前、簡単なプロフィールは見れるからよろしくな」


《3期生の話だ!》

《そういえば、この二人と白羽・キンメも面接官やってたんだっけか》

《現役のVtuberが面接官するって珍しいと思った》

《同僚になりえる相手を先に確認できるって意味では有効かも》

《SNSにもう石楠花ユリアガチ恋勢が居て草なんだ》


「コメントでもありました通り、我々Re:BIRTH UNIONのメンバーが面接に参加しておりました。とはいっても、決定権はありませんので皆様との話を通じて、弊社スタッフが判断するという形になっていましたね」

「俺らとしても初心に戻った気分だったな。そういえばあの時は緊張したな、とか色々。動画審査通っただけあって、レベルは高いと感じたけど廻叉的にはどうよ?」

「そうですね……端的に言うなら『リバユニじゃなくても大丈夫そうだな』という人と『動画では喋れていたけど、リアルタイムでの会話は苦手なのかもしれない』という人が結構な数いらっしゃったな、と」

「あー、台本キッチリ用意するタイプにありがちだよな、後者。俺は面接に関しては嘘さえ吐かなければいい、って思ってるけど、スタッフ的には色々見てるからな。実際、最近は動画勢よりも配信勢のが勢いがあるように感じる」

「私も動画作成は勉強中ですが、やはり慣れていないと時間が掛かりますからね。極論、配信はノープランでもやろうと思えばやれる、という点が強みでしょうか」


《本当に真面目に語ってるな》

《リバユニじゃなくても大丈夫、って理由で落としてくるのヤバいな……》

《明確に欲しい人材がいるって事か》

《動画勢が配信でタジタジになってるのたまに見るわ》

《オーバーズ、にゅーろあたりか>配信勢》


「ああ、そういえば最終選考の内容の緘口令が解除されたって知ってるか?」

「おや?という事はもう次回からは別の形になるわけですか」

「それもあるし、今回受けた人数が多かったから情報が洩れる可能性も少し考えたらしい。で、最終選考を受けた人も含めての緘口令解除って訳だ。さぁ今まで謎に包まれていたRe:BIRTH UNION新人オーディションの最終選考の内容について、公表するぞー!」


《おおおおお》

《そういえば最終選考の内容ってマジで誰も漏らしてないんだよな》

《緘口令敷かれる面接って一体》


「我々Re:BIRTH UNIONの最終選考は、一言で言うなら『エア配信』です」


《?》

《よくわからない》

《どういう事だ……》


「ご説明いたします。審査員から『デビュー配信のつもりでパフォーマンスをしてください』と言われ、30分から60分の時間が与えられます。参加者は、各々パフォーマンスをします。以上です」


《!?!??!?!?》

《なんだそれ……なんだそれ……》

《しかもいきなりやれって言われるのか……》

《ド ン 引 き》

《リバユニ頭おかしい》

《それを突破した1期~3期も大概頭おかしいと思う》


「俺はフリースタイルと元々作ってた曲やカバーをスマホで流しながら50分くらいラップして合格だったな。白羽はギターとアンプ持ち込んでリサイタルやったらしい」

「私は『役者を志す男が自身の演技力を見せる』という形で一人芝居を。覚えていた外郎売はともかく、他の劇のセリフなどは流石にスマートフォンを使わせて頂きましたが、なんとか出来る物ですね。キンメさんはタブレット端末で絵を描きつつ、ほぼノンストップでトークをしていたそうです」


《見てぇ……!》

《全員今の活動に近い事やったんだな》

《これ、逆にゲーム実況とかで合格するの難しくない?》

《失敗したらトラウマだな……》


「そして3期生もこれを突破したわけだ。ハードル上げちまった俺らが言うのもアレだけど、面接官とスタッフ含めて4,5人の前でやるのと、パソコンの前でやるのとではまた勝手が違うから、暖かい目で新人のデビュー配信は見て欲しいとこだな」

「実際、私のデビュー配信は……今にして思いますが、他にもう少しやりようがあったかと」

「あー、他に話す事もないからって50分くらいで切り上げたやつか。ある意味、お前らしくて良かったけどな」


《初動伸び悩んだ理由だよな》

《一部は「ふーん、面白ぇ男」ってなってドハマりしたけどな!俺とか!》

《なおキンメはデビューで身バレ。そこから怒涛のトークで3時間という伝説》

《足して2で割りたい2期生》


「誰であれ初配信というのは緊張であったり気負いであったり、良くも悪くも自然体の自分を出せる人は滅多に居ません。そこを念頭に置いたうえで、石楠花ユリアさん、小泉四谷さんのデビュー日をお待ちください。我々も可能な限りサポートはさせて頂きます」


《うん、俺が新人だったら執事頼るわ》

《あのとんでもなくヤベー最終選考を突破した奴らとかマジ楽しみだわ》

《その情報でリバユニ自体の見方がちょっと変わったまである》

《専門家の集まりだと思ってたんだけど狂信的求道者の集まりだったみたいな》


「なんか俺らの評価が上がってるんだか下がってるんだかわからなくなってきたな……」

「仕方ないでしょう。我々の尺度での普通がリスナーの皆様の尺度では異常という、ただそれだけの話です」

「分かるような分かんねぇような、って感じだな。最終選考だって、要するに自分が人生賭けてるモノ見せりゃいいだけの話だろ。俺にとってはラップで、廻叉にとっての演劇で」


《簡単そうに言うけど常人にはそれが難しいのよ……》

《人生オールイン出来る何かを持ってるのが少数派なんだよ龍真》

《そういうとこだぞリバユニ》


「そりゃ、普通の面接だと思ったらステラ様居るし、初配信のつもりで好きに動けって言われるし、正直に言えば混乱はしたけど。でもまぁ、俺のやれる事はラップだけだからな。初配信ならなおの事、俺の魅せるべきもん魅せなきゃ意味ねぇよって思ってやったわけだ」

「なるほど。私からすれば、60分もの『単独公演の舞台』を与えられた事に内心狂喜乱舞しておりましたが」


《怖い》

《芥川の地獄変読んだ時の様な寒気がする》

《でもそういう奴らしか居ないからこそ惹かれるんだよなぁ》

《普通じゃない奴らが見たいからVtuberのファンになったまであるしな》


「なんだか喋れば喋るほど俺らが異常者扱いされている気がするんで次のネタ行こうぜ」

「そうですね。私は常人扱いされないのはデビュー時からですので気にしませんが」


《草》

《気にしてくれ》

《次はもうちょっと軽い話になってくれればいいな》


「という訳で、次のテーマはこちらです」


『最近増えたVtuber炎上沙汰についての所感』


《やめろお!!》

《申すな!物を申すな!!》

《この異常者どもめ》

《Yeah!じゃねぇんだよ龍真!!!》


「阿鼻叫喚とはまさにこの事ですね。しかし、対岸の火事と呼ぶには――あまりに、近い。故に、見て見ぬふりをする事は出来ません。私と龍真さんは批判も非難も覚悟の上です。巻き込むスタッフには陳謝致します。リスナーの皆様も、覚悟の上で御覧ください」


《ヒェ……》

《巻き込む気満々で草》

《なんか、執事今一瞬笑わなかった?立ち絵の角度の問題?》

《やめて、そんな形で執事の感情が漏れるの見たくない》

《この度し難い異常者どもめ》

《本来なら暴言なのにただの正論になるの草》

《丑倉白羽@RBU1期生:二人とも程々にねー》

《どうなっちまうんだ、一体……》

《白羽ァ!身内だろ止めろ白羽ァ!!!》

炎上問題は「どこまで触れていいのか」が常に付きまとう問題ですが、この二人は全力でガッシリと鷲掴みます。次回も龍真&廻叉と地獄に付き合って頂きます。


御意見御感想の程、お待ちしております。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 徹夜で一気に読んでしまいました...続きを読みたすぎて手が止まらず気がつけば午前7時...(。-_-。) ヒロインと執事さんの面接、泣きました。 あれは泣きますよっ(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́…
[良い点] > 《なんか、執事今一瞬笑わなかった?立ち絵の角度の問題?》 カイサ君、君さぁw [気になる点] これは普通に続きが『気になり』ますw
[一言] HAHAHA!リバユニメンバーにはアクセルしかついてないんか!? 箱の独自色強すぎて三期生がどんな配信しても没個性な配信してもまだ擬態してるだけまだまだこんなもんじゃないわって言われるやー…
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