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「そういうところですよ龍真さん」

「もう私から言えることは一つだけです。色恋沙汰に関しては好きにすればいいです。私とユリアさんが好きにしたその結果です。想定よりもずっと批判が少なかったので拍子抜けしていますが」

「あ、あはは……」


 この話は掘り下げれば掘り下げるだけ自分とユリアに火の粉が向かうと判断した廻叉は、敢えて自分たちの経緯を雑に前へと押し出すことで爆心地から抜け出すことにした。ユリアは苦笑いを浮かべるだけであった。ユリア自身も、自分はもっと批判や非難を受けるであろう事は覚悟していたが、想像していたよりもずっと好意的に受けて止められた事が不思議で仕方なかった。なので、カグラの質問に対する明確な答えは無かった。強いて言うならば、正直に話したという点だけだ。


「いやいやいやメグたん先輩、本当に好きにしていいの?それやったら、爆発炎上するVtuberが続出すると思うんだけど」

「……敢えて言うのであれば、最初から恋愛を目的にはすべきでないでしょうね。私とユリアさんも、最初はVtuberとリスナーという関係でしたが」

「……そうですね。それは、否定しません。廻叉さんが居たお陰で、私はVtuberという世界に飛び込もうと思ったのは、事実ですから」


《草》

《そりゃまぁ爆発炎上するところはするだろうなぁ。特にエレメンタルとにゅーろは女性しかおらんしなぁ》

《マテリアル設立の時もゴチャゴチャ言ってる連中多かったしな。円渦の『これから新しいことを始めるのに、恋愛なんかしてる暇ない。これはマテリアルの総意』って発言である程度収まったけどさ》

《なお、晴清だけは「そんなことない!俺だってモテたい!!恋愛してみたいいいいい!!!」と叫んで逆に同情されるという事件が》

《ううむ……お嬢がデビューした経緯的にもっと荒れててもおかしくなかったのか》

《色々と無粋な憶測を呼ぶには十分すぎる》


「これ、大丈夫かの?儂、想定以上の赤裸々告白を聞かされてない?」

「っていうか普通に惚気だよねぇ。こんな質問しておいてなんだけど、メグたん先輩みたいなダイヤモンドの精神力が無いと交際の公表とかだいぶ無謀なんじゃないかって思えて来たんだけど」

「……Re:BIRTH UNIONの二期生より上は全員ダイヤモンドメンタルですからね。三期生以下はまだそこまでではありませんが、トパーズか石英くらいの硬度は間違いなく保証されています」

「十人居て全員のメンタルがモース硬度七以上とか恐ろしいわ、普通に」


 コメント欄ではRe:BIRTH UNIONのメンタリティに付いては語り飽きたと言わんばかりに淡白な反応が流れ、むしろトパーズと石英という単語からモース硬度を即座に連想し正確な数値でツッコミを入れたオキナへの称賛の方が目立っていた。


「んー……まぁメグたん先輩やユリリンの意見を総合すると……」

「とんでもなく嫌な予感するけど、一応言ってみ?」

「日頃の行いと人望が大事ってことで!」

「身も蓋もねぇなぁ!!」

「ですが、そんなものだと思いますよ。とはいえ、私みたいな地獄ラジオをやってる者に人望があるとは思ってもいませんでしたが」

「ほ、ほら、あの番組だと廻叉さんは諫める側に立つ事が多いですから……!」

「それ、龍真さんが悪いって言外に言っとるようなもんじゃぞ」


《おいこら》

《草》

《正論ではある、あるんだがもうちょっとこう取り繕えよ!!!》

《地獄ラジオとはいったい……》

《火種は作らないけど火に油を注ぐでおなじみのライトヘビー級ラジオ、不定期放送中》

《お嬢からもそういう認識の龍真草》

《あいつはしゃーない。前世生前葬あたりで界隈全体に無茶苦茶する奴って認識された感がある》


 最終的に交際を認められる程度の人望を得るために誠実な言動を心がけようという、Vtuberに限らない一般論に着地した。後々にこの配信を見たVtuberや配信者が「それはそうだけどもうちょっとこう、深く掘り下げるべきじゃないか?」という意見も出たが「掘り下げると闇が掘り返される可能性があるので、あそこで話を打ち切ったのは英断」という意見もあり、カグラが言うような気軽に恋愛話が出来る環境が整うのはまだ随分と先になりそうではあった。




※※※




「さ、という訳でね。八月のライブイベント前って尺度だと最後のライトヘビー級ラジオな訳だけど……ユリアのお嬢、この番組のアレな所全部俺が悪いって思ってたん?あ、三日月龍真でーす」

「龍真さんの日頃の行いです。恐らく、ユリアさんに限らず皆さんそう思っていらっしゃるかと。まぁ私も共犯である事は認める次第です。正時廻叉です」

「いやー、なかなか刺激的な話をしてたな、竹取兄妹とのコラボ」

「流石に方々で論争を巻き起こしていたようで。特に、Vtuberの資質と恋愛についてのお話が色々と。流石にここぞとばかりに交際を公表する方はいらっしゃらなかったようで」


《来た来た》

《忙しくなるなら仕方ないし残念だけど、余計な火種がしばらく生まれないと思うとホッとするな》

《草》

《お嬢は良く見ていると思うぞ》

《竹取兄妹、噂以上にヤベー奴らだったな……》

《そりゃそうよ。むしろ付き合ってても逆に潜るまであるわ》


「流石にそれやったらアホもいいとこだろ。その手の便乗が嫌われるなんてのは、そこそこVtuber業界見てる奴だったら分かるだろ。なぁ、凪?」

「え、この流れで話振られるんですか?俺、そこまで業界をしっかり見てから入って来たタイプじゃないんですけど……あ、月詠凪です」


《凪くん逃げて》

《汚すな》

《ついに巻き込まれてしまったか》

《スーツと和装とアロハが並ぶと完全に組事務所で草》


「いや、まぁ今回3D持ち全員出るわけだしな。SINESは……まーた朱音のスパルタ教育が始まってるって聞いたけど?」

「そうですね……凄く張り切ってるので、なんとか期待に応えなきゃなって」

「そこで文句よりも先にその言葉が出てくるのは流石です」

「とはいえ、リンネくんが歌の練習続きで配信が出来ないってボヤいてましたけどね、配信で」

「体弱いって自称してる割にやたら喉だけは強いからな、あいつ」

「まぁ凪さんと朱音さんに比べたら相対的に体が弱い方にはなります」

「体育会系だもんなぁ、お前と朱音」

「そこまで言われるほどです?」

「貴方プロレスゲームの配信で『自分に出来るかどうか』を基準に自分のエディットレスラーの技設定してましたよね?」

「え、何それ知らない」


《SINESのライブ、俺は好きよ》

《男女混合の良さが出てる》

《凪は良い奴だなぁ……もっと売れろマジで》

《フィジカルエリート朱音とフィジカルモンスター凪に挟まれたリンネの明日はどっちだ》

《草》

《あー、あれかw》


「あ、あははは……その、マテリアルの獅狼くんに誘われてのオフコラボがありまして」

「そこでお互いに自分をエディット機能で作ってコンピューターに対戦させるって企画をやっていたんです。そのエディット中に『この技は出来そう、これも多分出来る』みたいな事を延々と……」

「あ、でも出来ない技もありましたよ!アルゼンチンバックブリーカーとか、パワーボムとか」

「要するに力が必要な技全般じゃねぇかよ。逆に何を出来る技として登録したんだよ」

「……シューティングスタープレスっていう技ですけど……」

「超大技じゃねぇか!?」

「解説しますと、前に飛びながらバック宙で回転するボディプレスですね。具体的には検索してご覧ください。私もゲームオリジナルの技だと思っていたのですが、実在していて度肝を抜かれました」

「いや、クリフジャンプの時にあの感じで飛んでたんで」

「お前、そのうちプロレス団体とかからスカウトとか来るぞ」


《一緒にやりたいゲームがオンライン対応してないって理由だけでガンガンオフコラボする獅狼とかいうコミュ強者(男性限定)》

《プロレスが出来るかどうかはともかく、単体の技として出来るってのは分かる。分かるけどそんな奴がなんでVtuberという道に進んだのか》

《パワー技まで出来るようになってたら流石に怖いわ》

《これは3Dで検証しなきゃな……》

《本当にスカウトされかねないからやめてくれ》


「いや、俺はこの世界が好きですからオファー来ても断りますよ。朱音さんのアイドル計画に俺も含まれてる以上、投げ出したくないですし……最近、歌ったり踊ったりするのも楽しいなって思ってますから」

「……へえ、アイドルに対して前向き、っと」

「凪さんが望んでこの世界に居る事は我々もよくわかっていますから。……ところで、龍真さんのその含みのある言い方は一体?」

「いや、凪が本格的にアイドルになったらそれはそれはモテるだろうな、と改めて思っただけだが?ウチの女性人気枠を凪とリンネが引き受けてくれたら俺らはまだまだ好き勝手出来るな、とか思ってないぞ全然」

「そういうところですよ龍真さん」


《凪は良い奴だなぁ……男性Vtuberで一番清楚と言われるだけの事はある》

《龍真さぁ……》

《まぁ正統派の人気男性Vに一番近いところに居るのがリンネと凪ってのは分かる》

《後輩を何だと思ってるんだこの男》


「モテてるのはVtuber月詠凪であって、普段の俺ではない訳ですから。実際、ガチ恋勢って言われる方が居るには居るんですけど、正直戸惑うというか実感がないというか……」

「今のうちに実感しておいた方がいいぞ、今度のライブで、間違いなく新規のファンが増えるのはSINESの三人だからな」

「……ちょっと朱音さんに連絡してアイドルとしてのファン対応の心得とか聞いてきていいです?」

「このラジオは界隈で最も緩い番組ではありますが、流石に配信を終えてからにしましょう」


《凪に彼女が出来てそれがバレたら執事の時以上に荒れそうで怖いな》

《実際めっちゃ伸びそう》

《草》

《リバユニは配信中と配信外の区別がたまについてないとこあるよね》

という訳で次回から3Dライブの話になります。

更新が遅くなり申し訳ありませんでした。

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