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「恐らく後程怒られると思われますのでご容赦ください」

「えー、ウチの従兄妹がお見苦しいところをお見せしました。まぁいつも通りなんじゃが」

「待機画面中にスタッフさんから伺った話なのですが、私の最後のセリフを言い終わると同時に音声も映像も切り替えたそうです。なので視聴者の皆様は反応とか見ていらっしゃらないかと」

「カグラの場合、叫ぶときに前兆モーションみたいなのがあるっぽくてな。儂からはわからんが、スタッフは俯瞰で見とるからよく分かるとかなんとか……」


《草》

《あ、音声と映像戻って来た》

《もはや職人芸と化した画面切り替え》

《前兆になる動きを見切るとかもはや格ゲーの世界の話では?》


 それぞれぐったりとしているユリアとカグラを放置しつつ、廻叉とオキナは落ち着いた大人の男性同士の硬軟を織り交ぜたトークを繰り広げていた。尤も、正時廻叉は年齢不詳であり竹取オキナも自称数百歳を名乗っているので大人という範疇に入るのかどうかという問題はあるが、視聴者は声質と態度から大人と判断している節があり、そしてVtuber業界における年齢という区分の意味のなさはここ数年で十分に広まっていた。


「まぁこの企画でやる事って、フリートークと『ガチクエスチョン』のコーナーの二種類じゃからね。ちょうどいいタイミングで休憩が挟まったと思っときゃええんよ」

「その休憩が空けてもダメージが抜けきっていないお二人をどうしましょうか」

「ま、そのうち回復するじゃろうて。という訳で、ガチクエスチョンのコーナーじゃ。笑いとか撮れ高とか一切関係なく、おふざけ要素すらない竹取兄妹唯一のシリアス企画じゃよ」


《よっ、待ってました!》

《女子たち、ぐでんぐでんで草。他人事みたいに言ってる執事が主犯だぞ》

《あんな歯の浮くようなセリフ、思い付いてもどっかで躊躇するよ普通。あれを平然と言えるからこその役者なのだろうか……いや、ガチで付き合ってるからこそ嘘偽りがないのか……なるほど……》

《コメント欄で自分で出した疑問に自分で答えるんじゃねぇよw》


「お互い事前にスタッフへと提出した質問がこの後、テロップで出るんじゃけども……まぁどちらか片方への質問かもしれんし、或いは両方への質問かもしれん。パーソナルな事から、もっとマクロな視点に立った質問の可能性もある。ルールは一つ、興味本位とかではなく本気で答えてほしい質問を出すこと……まずは、気が付けば定番と化しておった一番手担当の儂から質問じゃ」


【Q:Re:BIRTH UNIONのお二人へ。STELLA is EVILシリーズを始めとする、リバユニさんのストーリー展開はどういう経緯で表に出すことになったのでしょうか?】


「……なるほど」


 廻叉はその質問内容を見て、小さく頷いた。Re:BIRTH UNIONのトップであるステラ・フリークスのデジタルアルバム、そのボーナストラックとして当時在籍していた六名とのコラボレーション楽曲と、ストーリーを描いた映像は『STELLA is EVIL』シリーズとして大きな反響があった作品群だ。


 メタ的な見方をすれば、Vtuberとしてのアバターはあくまでも『仮想世界で生きる自分の外見』であり、外見と中身、魂と呼ばれるものとの差異はVtuber黎明期から指摘されていた。企業・個人を問わずアバターに設定されたストーリーも有名無実と化している事も少なくない。そんな中でステラ・フリークスは『如何にして、そのアバターはRe:BIRTH UNIONのVtuberとしての姿になったか』を描いて見せた。


「あの話は……まぁ大元は私がやりたいと思っていた事でした。事務所全体の企画ではなく、私個人の記念配信などで、正時廻叉としてのオリジンをお見せ出来れば、という形で……私の電脳世界におけるコーディネートをしてくださっているMEME先生との相談の上で、進めていた企画でした」

「え?!そうなの!?」

「私も、知りませんでした……」


《おおおお意外な裏話!!》

《あのシリーズはマジで衝撃だった。で、曲の完成度も高ぇんだからとんでもねぇなリバユニって思った》

《EVILシリーズの何がヤバいかって、アバターの前世と魂の前世をどちらも『存在しているもの』として扱ってる所。メタとフィクションを堂々と混ぜて来るとは思わなかった》

《あ、女性陣復活した》


「流石に内容が内容ですし、運営に企画書として投げたらステラ様に見つかりまして……気が付けば話が大きく膨らんで、このような形に。私の舞台に、他の皆さんを巻き込めたと思えば悪い話ではありませんでしたが」

「最初の龍真さんのを見た時に、儂は震えたよ……まさか企業の、しかも所属の全員が『転生』をテーマに曲と映像作ってくるなんて、とんでもねぇ事をする人たちじゃなって」

「ねー。ティザーの時点で考察班総動員だったし、万人単位の人間の感情をグッチャグチャにしたよね、あのシリーズ」

「あの、皆さん、廻叉さんの指導が一番辛かった、って言ってましたけど……」

「最悪の場合は私に台詞を言わせて加工合成でなんとかなるだろうとタカを括っていた一期生の二人と、台本が出来上がる前に決め打ちでキャラを作って来てそのまま演じようとしたキンメさんが悪いのです。私は妥協しなかっただけですよ。そんな中、ステラさんとユリアさん、四谷さんは優秀でした。だって、私の言う事を聞いてくれる」

「おおっとぉ、急にガチ感溢れる愚痴が出て来たぞぉ」


《草》

《そういえばナレーションもほぼ廻叉さんだったな、あのシリーズ》

《キンメママ、何をやらかしたんだ……w》

《演じる熱意があふれただけだからキンメママはまだセーフだろ。替え玉目論んでた一期生の厄介ムーブが酷い。でもあの二人ならそういう事言い出すっていう嫌な信頼がある》

《私の言う事聞いてくれる、の言葉が重い!!》

《四谷は指導を飲み込み過ぎてホラーとして完成されちまったからな……最近、オーバーズとのコラボで人間性を取り戻している真っ最中みたいだけど》


「今までの2Dアバターへの愛着が湧いてきたタイミングで、その背景を語り――3D、この体に繋げる。そういう計画でしたね、EVILシリーズは」

「発端は廻叉さんで、それに全員が全力で乗っかったからこそ、と。いやいや、凄い話が聞けたわ……これは、少数精鋭のリバユニさんじゃからこそ、というか」

「ねぇねぇ、廻叉さん。四期生の子たちのは無いの?」

「あの子たちのお話は、また別……になるのかな。その、デビューの時や3Dの時にやったみたいに、少しずつ語っていく形になってる、と思います」

「彼らは彼らの物語がありますから。今後の五期生、六期生……が、あるのかは本当に未定ですが、まだ見ぬ新星にも新しい物語があるのではないでしょうか。私は何一つとして関知していないので、Re:BIRTH UNIONへのお問い合わせ等はご遠慮ください。不用意な発言をしてしまい申し訳ありません。恐らく後程怒られると思われますのでご容赦ください」

「メグたん予防線の張り方エグない?」


《いや、本当に少数精鋭のお手本みたいなやり方してるよ、リバユニ》

《四期生は四期生同士で話が繋がってる感はあるよな》

《草》

《五期の話が出て「おお」ってなったら、次の瞬間全力保身で草しか生えない》

《絶対に無責任な事は言わないっていうか、強い意志を感じる》

《むしろフリなのでは》

《謝罪先置きは草》


 実際に、Re:BIRTH UNIONの五期生以降の予定は決まっていない為、志望者に余計な期待を抱かせないという意味合いでは廻叉の発言は当然と言えば当然の発言ではあるのだが、淡々と関知しない旨を続けてしまった事もあり「本当はあるのでは」と思わせる結果になってしまった。

 後程、Re:BIRTH UNION公式から実際にオーディション等がある場合は公式より発表する旨の文言がSNSに投稿された他、若干不用意な発言だったという事もあり正時廻叉に軽めの注意が入るなどの出来事もあったが、それはこの配信が終わってからの話である。


「さて、それじゃあ次はユリアさんの質問に行こうかの」

「あ、はい……その、ちょうど後輩の話が出て来たタイミングだったので、よかったかもしれないです」


【Q:後輩との付き合い方、距離感の取り方が難しくて、気を使わせてしまってるように思います。竹取兄妹のお二人は、自分より後輩のVtuberさん達とどうやってコミュニケーションを取っていますか?】

ちょっと仕事が落ち着くまではこのくらいの文章量になると思います。

【7/1 追記】

体調不良のため次回更新は7月10日となります。

申し訳ありません。

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