「お前ら、全力で梯子外しに行くよな」
「いやー、色々あったけども四月の半ばくらいになってようやく落ち着いた感じだな。あ、三日月龍真でーす」
「新年度の切り替わりの時期でもありますから、まだ忙しい人もいらっしゃるとは思いますよ。正時廻叉です」
《こんちゃーっす》
《お、新衣装早速使っとる》
《893と893》
《二人ともカッコいい》
「そんな訳でライトヘビー級ラジオも第……まぁいいや、結構長々続いてるわけだけども。今回はお互い新衣装で配信だ。どう見ても反社会勢力とか言うなよ?」
「私までそちら側にカテゴライズされるのは若干不本意ではありますが。あくまで書生ですから、私の衣装は。これが紋付袴であれば、任侠映画で見た代替わりの儀式と言われても若干納得はしますが」
「あー、親子盃。任侠映画とか極道漫画とか、意外と面白かったりするんだよな。俺らの住んでる世界と別世界過ぎて」
《見えなくはないってのがな》
《お嬢と並んでる時の執事さんはめっちゃ素敵なのに、龍真と並んでると裏社会の若き大物感出てる》
《草》
《あー仁義が無い感じの映画ね……名前は知ってるけどちゃんと見たことない映画の筆頭だわ》
《ある意味異世界転生》
「でも、俺らみたいなラッパーやとちょっと地下に潜ればって感じやったで?あ、まいど。ゲストで呼ばれたMCカサノヴァやでー」
《!?》
《ノヴァくんやんけ》
《相変わらず当日になるまでゲストが居るかどうかすらわからない番組だ、ちょっと油断するとこれだぜ》
《最近人気のノヴァニキだ!大丈夫?このヤベー番組に出て燃えない?》
《早速危険球発言で草》
《一万の壁を超えた個人勢はそんなヤワじゃないから安心するよろし》
「おいやめろ馬鹿。基本的に企業勢はコンプライアンス的に反社との付き合い禁止なんだから」
「とはいえ、お二人ともその手の付き合いは無かったと思われますが。でなければ龍真さんは事務所への所属が出来ないですし、カサノヴァさんも他人事のような言い方をされていましたし」
「俺の場合、周りがそっち方面に行っちまったのを見てこっちに来たってのもあるしな」
「俺もそんな感じやなー。葉っぱで捕まった知り合い、片手じゃ足りひんし。あ、俺の事はノヴァでええよ。俺もさん付け苦手やから、くん付けでええ?」
「ええ、勿論。では私からはノヴァさん、でお願いします」
「まー、バーチャルの世界はクリーンでいいよな。ノヴァもそう思うだろ?」
「せやな。とりあえず顔見知りが辞めたり消えたりはしても、捕まりはせんからな」
「ナチュラルに捕まるという動詞が出てくるのは如何なものかと」
「でも実際多いしなぁ……」
「せやな」
「これ以上深淵を覗くつもりはありませんので、話題を変えましょうか」
《それはそう<コンプラ》
《確かに今のところ反社関連の不祥事とか炎上とか聞かないな》
《うーん……ちょっとコメントしづらい感じではある》
《生前葬のあと、インタビューでY-STAGとしての活動を閉じた理由言ってたけど、軽々しくネタにしちゃいかん奴だったもんな》
《初見の皆様、しみじみと逮捕者を語るラッパーVtuber二人というアレな光景が繰り広げられておりますが、割と通常営業です》
《話題と言えばノヴァニキのアレだろ》
《MCカサノヴァさんの移籍というか加入の話が聞きたいです》
「コメントでも既に多数出てますけれども、ノヴァさんの大きな話題といえば電脳銃撃道場への加入ですね」
「去年の末くらいからACTの配信増えてたもんなぁ。最初は趣味枠かと思ったらDJDのメンバーにコーチングして貰うようになって、最終的に門下生として入門とか予想してなかったわ」
「俺もなぁ、最初はマジで流行っとるからやってん。ACT HEROESやっとる連中多いし、ゲーム自体は嫌いやなかったし一度触ってみよか、くらいのノリで始めたら思ったよりおもろかったし、それなりに動かせたんよな」
「最初の方の配信見てたけど、その時点でもう俺より上手かったもんな」
「大概の奴はお前よりは上手いんちゃうか?」
「ノヴァさん、事実は時に人を傷つけてしまいます」
「テメェらブッ飛ばすぞ」
《ノヴァニキ、FPS色々始めてたしDJDのメンバーとも仲良くなってたけど、まさか加入までするとは思わなかったな》
《ACT一気に上手くなっていくの、見ててめっちゃ楽しかった》
《始めた理由はなんとなくであそこまで上手くなるのセンスを感じた》
《草》
《そりゃ龍真はゲーム下手Vtuberの代表ですからw》
《執事wwww》
「そんでまあ、DJDの師範代とかと仲良くなって、向こうにもラップ好き結構おったんよ。そっからはまあ話が早かったわ。まず腕試しカスタムの常連になるやろ?飲み会オフコラボにも呼ばれるやろ?テーマソングのオファー受けるやろ?もうほぼ所属やろって視聴者に言われるようになって、ほな入るかぁって」
「詳細は初めて知ったけど、お前それ四文字で済む話だろ?」
「奇遇ですね、私も同じ四文字が思い浮かびました」
「ほーう?なら説明してもらおうやないか、四文字で」
「じゃ、言ってみるか。せーの」
『なりゆき』
「……ぐぅの音も出ぇへんわ、流石やな……」
《仲良くなってからの展開が早いんよ》
《DJDのテーマかっけぇぞ。FPSテーマにしたラップだから、知ってれば知ってるだけ味がするタイプの曲》
《だいぶふわふわした説明だけどそれでいいのか?w》
《おや?》
《四文字と来ましたか》
《草》
《草》
《まぁなりゆきの四文字で済む話をここまで膨らませられるノヴァニキのトーク力を褒めるべきだろうな》
《膨らませた結果、割と中身スッカスカな話だったぞ》
「とは言え、だよ。VのラッパーであるMCカサノヴァのファンからすれば、ゲームメインに移行するのって賛否両論あったんじゃねぇの?」
「そらあったに決まってるやろ。けどまぁ別にラップ辞めるなんて一言も言うとらんしな。FENIXXもそうやろ?最近、MCよりDJの活動と激辛平気食い動画に力入れとるし、サウンドエンジニアの勉強もしとるって聞いたで」
「そういえば、この間出した龍真さんの新曲のMIX周りはFENIXXさんでしたね」
「FENIXXなぁ……昔っからだけどMIX上手いんだよ。自己流MIX解説出してバズったのが切っ掛けらしいけどな」
《音楽に向き合え、みたいなコメントあったよな》
《ノヴァニキも気にしない系の人だから……》
《フェニっさんそうなんか》
《激辛製品出るたびに、異様に高い語彙力で辛さの度合いと味を説明してるからな。舌の感覚麻痺してないのにあれだけ喰えるのおかしいわ》
《そういえばオーバーズやVインディーズの歌ってみた動画のMIXにフェニックスの名前があるの見た事あるわ》
《★VIRTUAL-MC&DJ FENIXX CHANNEL:誰かに依頼する金が無かったからな!貧乏は人を成長させると言っても過言ではない》
《過言で草》
《いつも居るフェニっさん、ただのヘビーリスナーでは?》
「まぁVtuberとして長く続けるんやったら、活動の幅は広いに越した事ないと思うで、ホンマに。よっぽど熱意あるんやったら話は別やけど、そうでないと普通の人間は一つの事だけ突き詰めてると飽きるか行き詰るかすんねんから。そのよっぽどの熱意持ってる人ばっかのリバユニに言う事やないけどな」
「いや、熱意はあるけど一直線ばっかりじゃねぞ、俺らも。なんだかんだで活動の幅は広がってるし、交友関係もそれぞれ広いしな。廻叉なんざ、実写のカップルチャンネルからオファーが大量に届いてるんだぞ。コラボとまではいかずとも、動画内で紹介されたりとかしてたし」
「コラボは流石にジャンル違いにも程があるのでお断りしてますが、紹介の方は受けてますね。ありがたいお話です」
「でも廻叉くんとユリアのお嬢ちゃん、下手なカップルチャンネルが裸足で逃げ出すレベルらしいやん。わざとらしくイチャこいとる感じやなくて、自然体で溺愛しとるって噂やで?ソースはまとめサイトのコメント欄やけど」
「そんなもんソースにすんじゃねぇよ」
《ノヴァニキ良いこと言うなぁ》
《実際に行き詰って去っていったVtuberが個人企業問わず何人も居たから……》
《やっぱ外から見てもリバユニって熱意とかが高く見えるんだな》
《一番幅が広いのは四谷あたりだよな》
《!?》
《執事とお嬢の登録者数の増え方がヤバいとは思ってたが、そんな導線で人が増えてたのか》
《最近オススメ動画にカップルチャンネルが出てきた理由が分かった。執事お嬢の切り抜きやら反応集やらを見続けたせいだ。実際、カップルチャンネルも検索結果に出てきてたもん》
《ひっでぇソースで草》
「まとめサイトも使い方次第ですけどね。とりあえず最低限タイトルが真っ当であれば、大まかな情報は拾えますから。ろくでもないタイトルにしてるところは、二度と見ませんけれど」
「あー、むしろ増えてきてへん?アンチの養殖工場みたいなまとめサイト。閲覧数増やすんもシャクやから一切見てへんけど」
「むしろ養殖っつーか培養じゃね?」
「ノヴァさんの養殖もなかなかの攻撃力のある発言だと思いましたが、生物扱いせずに細菌か何かのように扱う龍真さんが一番危険球投げてますね」
「習性のように毒素発生させる連中なんざ、ネット上に繁殖した黄色ブドウ球菌とか腸炎ビブリオみてぇなもんだろ」
「うっわ、その言い方は流石に引くわー」
「視聴者の皆様におかれましては、あくまでも三日月龍真氏の個人的考えであることをご留意の上でご視聴ください。……このセリフ言うの、これで何回目でしたっけ」
「お前ら、全力で梯子外しに行くよな」
《まぁその辺はどうしても減らないわな》
《タイトルだけ見て中身見ないのは正解に近いムーブ》
《言い方よw》
《このラジオに来ると発言のブレーキが壊れるようになってますか?》
《培養は草》
《うっわ……》
《俺らは知らねぇからな、言ったのは龍真だからな》
《色んなVtuberや配信者見てきたけど、アンチを食中毒菌扱いする奴は初めて見たわ》
「さて、これまでの話をしてきた事ですし今後の話をしましょうか。エンディングでもないのに告知をするのがこの番組の特徴です」
「俺、特にない。まぁアルバム作ってるから暫し待てとだけ」
「俺んとこのACT HEROES腕試しカスタム、次回参加の応募受付明日からやでー」
「私ですが、初出し情報です……ちょうど、SNSにも情報が出ましたのでこちらで発表させて頂きます」
《そうなの?今日が初見なんだけど》
《告知タイミングは思い出した時がこの番組やぞ》
《そして大体告知が無い龍真。あとで思い出してSNSで書くのが多い》
《腕試しカスタム、最近の抽選人数エグいからなぁ。一度も当たった事ねぇや》
《お?》
《執事の情報は大体案件ではあるんだがなんだろうな》
「最近、Vtuber界隈で一番プレイされている麻雀アプリ、『麻雀ワンダーリング』にて新規キャラクターのボイスを担当することになりました。私自身、麻雀はルールだけ知ってる程度だったんですが、朗読ゲーム実況を切っ掛けにオファーを頂きました」
《!?》
《マ!?》
《あー、エレメンタルコラボでアポロとオボロモチーフのキャラに、本人の声乗せてたしVtuber界隈とも割と結びつき強いんだよな、あのアプリ》
《廻叉くん!詳細を聞かせてくれたまえ!》
次回はラジオの続きと、別の何かになります。
また、本格的に書籍化作業に入りますので一週間~二週間の不定期連載になります。
月に3~4回の更新を予定しております。
ご意見ご感想の程、よろしくお願い致します。
拙作を気に入って頂けましたらブックマーク、並びに下記星印(☆☆☆☆☆部分)から評価を頂けますと幸いです。