「静かに先を見据える者と、熱に浮かされ突き進む者」
新年あけましておめでとうございます。
本年も拙作をご愛顧の程よろしくお願いいたします。
「最近ご機嫌ですよね、ステラ様。なんというか、終始楽しそうですし」
「あー、最近じゃ珍しく個人で雑談配信してたな。半分くらいは新曲の宣伝だったけど」
「残りは四期生が可愛いって話ばかりでした。後輩に甘いのは以前からでしたが、四期生が入ってからその傾向が加速している気がします。申し遅れました、正時廻叉です」
「Vtuber界隈全体で見ても相当初々しいタイプの三人だからなぁ。最近は色々慣れてきたっぽいけども。あ、三日月龍真でーす。ライトヘビー級ラジオでーす」
「すいません。僕、一応ゲストなんですけど。なんなら初めて外部でゲストに呼ばれたのに、リハっぽい空気からそのまま流れる様に始まるんですか?……あ、マテリアルの円渦です」
《始まったー!》
《相変わらず雑な始まり方で安心する》
《久々に始まったなー》
《自分らの話じゃなくてステラ様と四期生の話ってあたりがこいつらだなーって》
《あ、ゲストおるやんけ》
《元イルダリの円渦くんやんけ》
「はーい、と言う訳で元ill da ringこと円渦くんでーす。ちなみに四期生最終オーディションまで生き残った男でもあったりする」
「落ちた人普通に呼びつける辺り龍真さん本当に外道なんですよ。僕の気持ちの整理がついていない可能性とか考えなかったんですか」
「気持ちの整理が付いてなかったら紹介状持ってエレメンタルの新グループに応募したりしねぇだろ」
「それはまぁ……そうですけども……」
「今回のオファーに関しましては、私は一切のノータッチです。なので苦情文句その他は全て龍真さんにお願い致します」
「廻叉お前最近先輩を先輩と思ってねぇだろ?」
「先輩らしい威厳を自分から切り崩してるの龍真さんでしょ」
「禊配信辺りから『ああ、そろそろ雑に扱っても大丈夫そうだな』と」
「酷ぇなぁ!?」
《やっぱそうなんだ》
《別のオーディションで落ちた話はしてたけど、リバユニだったか》
《外道呼ばわりは草》
《ド辛辣》
《紹介状システムが機能してるのすげぇな》
《草》
《草》
《雑に扱われるような言動が多い龍真サイドにも問題がある》
《むしろ龍真だけだもんな、問題あるの》
「まあ龍真さんの扱いに関してはさておき」
「さておくな」
「今回は、改めてマテリアルについて色々質問していこうかと思います。エレメンタルの流れを汲んでいるとはいえ、完全に男性のみのVtuberグループは初ですからね。我々Re:BIRTH UNIONやオーバーズさんはほぼ半々、Vインディーズさんは女性多めですし。男性が大多数を占めている電脳銃撃道場さんも女性の方もいらっしゃいますから」
「そういう事でしたら喜んで。デビューからしばらく経って、今現在の知名度がまだ足りてないなっていうのを僕らも実感してた所ですから。九音だけはキンメさんが関わってることで、知ってる方も居るとは思うんですけど、このタイミングで全員覚えて帰ってもらおうと」
《早速雑で草》
《もうさておかれる前提の速さでツッコミ入ったな》
《そういえば男性限定で募集賭けたのはマテリアルが初か》
《初速は続かねぇからなぁ……》
《言われた通り九音くんだけは知ってるわ》
《いいねぇ、貪欲だねぇ》
《謙虚なのもいいけど、ギラギラしてるのも好き》
「つっても円渦さぁ。アポロさんとか積極的にコラボとかゲストに呼んでくれてるんだろ?そこで多少は知られてるんじゃねぇの?」
「いつまでも頼る訳にもいきませんよ。それに、マテリアルを『エレメンタルありきの下部組織』にするつもりは一切ありませんから」
「お前相変わらずだな。尖ってるっつーか、上昇志向の強さ、前以上じゃねぇか?」
「プロフィールを確認させて頂きましたが、円渦さんはリーダー格と公式から言われていますからね。責任感の現れともとれますが」
「僕が引っ張る、とは言いませんが以前からVtuberとして活動してたのは僕だけですからね。まず自分がやらなきゃ他のメンバーに申し訳がないですもん」
「背負うもんが増えたなぁ、円渦。……あー、油断してるとイルダリって言っちゃいそうだわ」
「a.k.a. ill da ringって公表してますし、別にイルダリ呼びしてもらってもいいですよ」
「それじゃ、敢えてイルダリって言うけどな。ぶっちゃけ俺はイルダリのセルアウト志向っつーか、売れたいっていう野心剥き出しなの嫌いじゃねぇのよ。ただ、それはそれで嫌う奴も居るから、そこだけは覚悟してんだよな?これ、前にも聞いた気はするけど」
「それは勿論。それでも、マテリアルが埋もれるくらいなら僕が矢面に立ってでも売り出したいって思ってますよ。他のメンバーも、間違いなく才能のある面々ばかりなんですから」
《アポロが全員と一通りコラボしてたな、そういえば》
《あくまでも別のグループって線引きはしつつも、新人紹介はしたいっていう善意というか、アポロの好奇心が爆発したというか》
《円渦、年上も居るのにリーダーになったんだもんなぁ……》
《イルダリ時代からの先輩が気に掛けてくれてるのは助かるだろうな》
《怒涛の向上心》
《いい意味で一皮剥けた感じはあるよね》
「それでは、簡単にメンバー紹介をして頂きましょうか。以前に九音さんが来られた際に簡単な紹介はして頂いたので、円渦さんの印象とかを交えて頂ければ」
「それではまず、マテリアルは男性五人組のVtuberグループです。共通点は漢字二文字の名前と、メンバーカラーがそれぞれ決まっている事、さらにそれぞれ和柄の意匠が入ってます。僕こと、円渦は赤と七宝ですね。この辺は九音が言ってたかな。僕自身の自己紹介としては、ラッパーやってます。あと普通のラップの無い歌ってみたも積極的に挑戦したりしてます。ゲーム配信は少な目ですけど、たまにやってます。よろしくお願いします」
「イメージカラーはアイドル系にはよくあるけど、それプラスでシンボルマークみたいに和柄を設定してるのが新しいよな。新メンバー入ってネタ切れしないといいけど」
「その辺りはマテリアルのスタッフの皆様の手腕に期待しましょう」
「次に最年長の壬仙。黒の菊菱。落ち着いた声と性格をしてますね。朗読配信もよくやってますが、読んでるのが大体ネットに転がってる怪文書とかなんですよね……」
「親近感と距離感を同じくらい感じています」
「廻叉的にはそうだろうな」
「僕らの相談にもよく乗ってくれる、長男的な存在ではあるんですが。なんというか、変人でもあるのは間違いないです。ちなみに三十超えてます」
《九音の紹介、フワッフワだったからなぁ》
《具体的に何やってるかを現在進行形の情報で知れるの助かる》
《割と流行りのゲームにしっかり手を伸ばす円渦》
《壬仙ニキの柔らかな声から放たれる気の触れたような文面の朗読》
《見た目は凄い好みなんだけど、変人なのか》
《初見の女性ファンの七割が初見のままお別れするっていう都市伝説マ?》
《よくも悪くも独身貴族って感じです》
「青の青海波、晴清は……自称アイドルなのに彼女が居ない事を本気で嘆くダメ人間です。年齢的には次男なのに……ゲームは上手いですし、コミュニケーション能力も間違いなく高いんですけど、非モテを拗らせてるというか……」
「あー、廻叉とユリアの交際宣言の反応切り抜きに居たな。絶叫と言うか慟哭レベルの叫びを上げてたっけか」
「嘆くだけでこちらに危害を加えるタイプではなさそうですし、問題ないかと」
「問題ですよ。年上二人がこの有様なので僕にリーダー役が回って来たまでありますからね」
《あいつか……w》
《草》
《アイドルとは(哲学)》
《だいぶ円渦くんがおいたわしい感じになってきたな》
「魚住キンメさんの息子である、緑の矢絣の九音……はキンメさんの3Dお披露目で見て頂いた通りのノホホン系の男子です。僕の一個下ですね。歌うと別人になるというか、直接歌ってるところを見て初めて同一人物って認識できたまであります」
「あれ?イルダリ今いくつだっけ?」
「23です」
「年齢差の相当離れてる面々である、と」
「黄色の巴柄、獅狼が最年少で……確か、20だったか19だったかですね。リバユニさんの四期生に居る、月詠凪さんと同い年だって言ってました。どこで彼の年齢を知ったのかはわからないんですが。良くも悪くも潤滑油ですね。物怖じとか、人見知りという概念から一番遠く離れているタイプです。初対面凸待ちとかあると、嬉々として参加しに行くタイプです」
《九音くん、良い子だったのはキンメママのでよく分かった》
《歌声で普段の声のギャップは凄まじいもんがあったが、同じ箱の同僚もそうなのか》
《なんていうか、濃いよな、マテリアルも》
《獅狼は凸待ちとかメンバー募集とか大体いるという噂が》
《若さゆえの無鉄砲を擬人化した子です》
「なんつーか、お前がリーダーになったの必然なんだなってメンツばっかりじゃねぇかよ」
「正直、最初は壬仙さんに任せたかったんですけどね……そこは個人でVtuber経験がある人がまとめ役になった方がいい、って説得されまして。今にして思うと、自分が自由にやりたかっただけなんじゃないかと」
「それをご本人に言いましたか?」
「はい。『あ、バレた?』との事で」
「いい性格してんなぁ」
「まぁなんやかんやで副リーダー的な役割を買って出てくれるんで、助かってますけどね」
「旗振り役よりも側近役の方が適性がある方もいらっしゃいますからね。他ならぬ私自身がそういうタイプですから」
《円渦は大変そうだなぁ……》
《最年長それでええんか》
《むしろ真ん中の年齢の円渦に任せたからこそ破綻してないまである気がしてきた。しらんけど》
《壬仙が気になって来た。自由人三十路はVリスナーはみんな大好きだからな》
《リバユニとオーバーズ推しだけど放っておいたらいずれ獅狼には出会うことになりそう》
「で、イルダリ的にはどういう感じでグループの色出していきたい訳よ?曲がりなりにもリーダーなんだから将来的なヴィジョンみたいなのはあるだろ?」
「そうですね……僕ら、割と今の時点で自分たちのやりたい事を好き勝手にやってる感じではあるんですけど。グループとしての大きい活動も……三ヶ月から半年に一回ペースではやりたいなぁとは思ってますよ。楽曲だったり、あるいはバラエティ企画だったり。なんとなく名前と衣装が似てるだけの集まりになるのは不本意ですし。ゆくゆくは3Dライブ、かなぁ……」
「ああ、3Dで思い出したけど――これ、事務所の許可有りでの情報解禁な?四期生、3D出来ました。また3D班がはしゃぎました」
「え」
「……本当ですか?あ、ちょうど配信開始直前に業務連絡来てますね。朱音さんが絶叫してます」
《もう円渦って呼ばないの草》
《色々考えてるんだな》
《熱意はあるけど冷静さを保ってるのは良いことよ》
《3Dはなんだかんだでみんなの目標だよな》
《ん?》
《おい》
《はあああああ!?》
《頑張りすぎて休暇を取ったという伝説の3D班、またやったのか》
《SNS確認しろー!!!》
来週はラジオの続きと3Dが決まった四期生達の情緒が壊れる様をお送りする予定です。