「二つの意味で地雷処理」
「はいレッドコースターです。えーっと、先ほど終わりました『FDF』最新作のストリーマーβテストの二次会配信でーす。はい、自己紹介をどうぞ」
「ただ今の時刻は午前0時となりました。Vtuber事務所『Re:BIRTH UNION』所属、正時廻叉と申します。βテスト配信を見られていた皆様におかれましては、引き続きよろしくお願い致します」
「はいどーもー!ゲーム実況者グループ『てるてるボーイズ』のミゾレです。普段はアホ共と遊んでるんですが、今回はこのメンバーで遊んでいきます!」
「Vtuber事務所オーバーズ所属、王海天馬です!奇遇っすね、ミゾレさん!俺も普段は同期のアホ共とばっかり遊んでて後輩出来たのに先輩らしいことしてないって大評判っすよ!」
「たぶんだけど、ミゾレもアホだって思われてるよな」
「天馬さんの同期も半分くらいはお互いをアホだと確信しているように思えます。その辺の諍いをある程度のところで止めるのが、なぜか私の後輩なのですが」
《もう草》
《ノリが雑バラエティで草》
《さっきまでのカッコいい小隊どこ……?》
《執事が例のラジオのモードになりつつあるな》
《ベテランストリーマーとベテラン実況者、さらにオーバーズ若手とメンツは豪華なのに全員がちょっとずつ小物感出してるのなんでなんだろうな》
『FINAL DEFENSE FRONTLINE -Mission for EARTH-』のストリーマーβテスト終了後、一度配信枠を閉じた正時廻叉らコンパス(仮)の面々は、その数十分後に再び配信を開始した。主にストリーマー界隈では定番と化している大会などの多人数が集まる配信イベント後に行われるゲームと雑談がメインとなる配信。『二次会』と呼ばれる配信をすることを提案したのはベテランストリーマーであるレッドコースターだった。せっかくだから、という形で参加した廻叉だったが会話のノリが先ほどまでとは一変して緩くなっている事に安心と危機感を同時に覚えた。
この感覚は、三日月龍真とのラジオ番組のノリだ。
とはいえ、ゲームをやりながらであるためそこまで危険発言が飛び交う事もないだろうという希望的観測を持ちながらも、いざという時は自分が軌道修正をするだろうなという予感もあった。
「ってな訳で、みんなが出来そうなゲームをって思ったんだけど。こないだちょっと裏で面白いの見つけたからみんなでやろうってなったんだよね」
「さっき私たちもダウンロードしてきましたが……『EXPLOSION END』ですか」
「俺も完全初見のゲームなんすけど、どういうのっすか、これ」
「あー、俺らこれやって動画作ったわ。ぶっちゃけ、マインスイーパーだよ。マウスじゃなくて、キャラクター動かして実際にツルハシでガツンするだけよ。パソコン持っててマインスイーパーやった事あれば誰でもわかる奴だから」
《あー、これ知ってるわ》
《もうゲームタイトルが和訳すると『爆発オチ』だからな》
《割と面白いけど配信ではなかなか見ないんだよな》
《てるてるボーイズので見た。責任の押し付け合いと罵り合いが酷かったw》
《そこはいつも通りだろ>責任の押し付けと罵倒》
一人用のゲームであるマインスイーパーをアレンジし、操作キャラが地面を掘り起こしたり地雷と思しきマスに旗を立てるといった基本操作の他、便利なアイテムを使用して地雷の探索だけでなく多人数での対戦要素も兼ね備えたゲームだ。対戦モードでは自分が開いたマスや発見した地雷の数に応じてスコアが入り、そのスコアで順位が決まるようになっている。なお、誤って地雷を踏みぬいた場合は自キャラを中心に爆発が起こり、自分がそこまで開いていたマスや探知した地雷がすべてリセットされるようになっている。同時にスコアもリセットされるため、一発逆転の要素も兼ね備えたパーティーゲームになっている。
「まぁ、とりあえずやってみようか」
「そうですね。とりあえずは始めて見ない事にはわかりませんから」
この後、四人による地雷処理が始まるが――ステージクリアに至らずタイムアップによる決着だけが繰り返されることになる。理由は全員が全員、雑談を繰り返しながらのプレイだった事による不注意での起爆が横行したことだった。
※※※
「そういえばVtuberのお二人に聞きたかったんだけど、俺らストリーマーとは別の苦労があるとは思うんだけどさ。なんか、Vtuberだからこその大変さってある?」
「あー……俺とかだと、ペガサスから人間に転生したんですよ。でもその、元ペガサス感がちゃんと出し切れなくて総ツッコミ喰らう事が多くて……」
「私に関してはもう説明するより該当の動画を見てもらった方が早いまでありますからね。幸い、そこまで何かを言われたことはありませんが」
《あー、ストリーマーとか実況者ならハンドルネーム使ってるだけで自分の素だもんなぁ》
《天馬はまだわかりやすい方だよな。結果的に現在は見た目が白系なだけの普通の人間だし》
《草》
《例の動画見ろはその通りだけど、言い方あるだろもうちょっと!》
《背景ストーリー凝りすぎなところがあるのは本当にその通りだからな》
《それでこそリバユニって感じではあるけど》
「あー、ウチのメンバーがVの人と絡んだ時にちょっと燃えたもんね。あれはヒョウがひたすら無神経だったからだけど……あ」
「ミゾレ、二択外すの何度目だよ」
「というよりも、二択を選ばなければいけないマスの開き方になる運の悪さでしょうか」
「なんでこのゲーム爆発エフェクトが無駄にパターン多いんですかね」
「なんかゲームリソースの半分くらい面白い爆発に注ぎ込んでる気がするな……」
《あっ……》
《地雷を二個同時に踏み抜くミゾレ氏》
《なんかのアニメで見たような爆発の仕方してて草》
《白の十字架っぽい爆発は完全にアレで草》
《ヒョウさん燃えたん?》
《あー、バ美肉系の人にネカマって言って注意されてもあんまりわかってなさそうだった件か……》
《それは燃える》
《しかし本当に爆発パターン多いな》
※※※
「しかしこれだけ爆発し続けてくると俺らも淡々と爆死するだけになってきたなぁ」
「これ、まとめサイトとかに『コンパス(仮)二次会で炎上』とかって記事作られそう」
「初炎上が偏向報道はちょっと……それでなくても、ウチの事務所定期的に燃えてんですから」
「天馬さん、一旦止まりましょう。トークも、ゲームもです」
「え、あ、やっべぇあああああ?!」
《このゲームの弱点、爆発に慣れると飽きるところなんだよな……》
《人って見慣れていく生き物だから》
《やめろそのありそうな記事》
《そもそもコンパス自体がまだ浸透してないだろw》
《草》
《天馬ァ!!》
《いや、まぁオーバーズは人が多いからね……》
《地雷を同時に踏み抜いていくスタイル》
《ゆるいトークの効果音に爆発は斬新だな》
《もうなんならトークの方がメインでゲームがかなり適当だしな全員》
《二次会のカラオケで歌わずに駄弁って呑んでばっかの俺らみたいだな》
「ストリーマーも炎上沙汰多いけどね。たまに顔出しでよくそんなこと言えたなってレベルの舌禍やらかす人もいるからなぁ……」
「あー、でも実況側もたまにありますもん。やらかす時は大半生放送、生配信。普段の動画ならカットされるような事をつい言ってボヤ騒ぎなんてしょっちゅうあるからね。ヒョウがやったのもその類だし……Vtuberさんとかストリーマーさん、ほぼ配信だからそういうところ気を付けてる感じ?」
「私の事務所では今のところ大規模な炎上は無いですが……ああ、先輩の三日月龍真という人がVtuberとしての活動開始前の名義でディスられた事はありましたね。炎上とまではいきませんでしたが」
「あー、伝説の生前葬!あれ、ウチの先輩方にも大評判でしたよ。一番面白かったのアリアさんがお悔やみのメッセージ送ってたところでしたけど」
「何それ詳しく」
《どこも炎上が隣り合わせなんだな》
《爆発音バックに炎上ネタでトークすんなやw》
《Vtuberだと放火されることも多いしな》
《生前葬は何度思い出しても草生える》
《アレ、本当によく丸く収まったよな……》
※※※
配信開始から三時間余り、ある程度の対戦を終えてそろそろお開きという空気になってきたところで改めてβテストや今回の地雷駆除ゲームの感想を述べる四人であったが、不意に飛んできたコメントをレッドコースターが拾ったことで、最後の地雷処理を四人で行う事になった。
「なんか『男ばかりだから安心して見れた』って言われてるんだけど。女性混じるとそんなに不安かね。いや、女性とコラボって確かに俺は少ないけど……ミゾレはどう?」
「俺ら、普段が男コラボだけみたいなもんだし……そういえば、二人は男女混合の事務所だったよね。ちょっとその辺の心構えを俺らに教えてくれない?」
《ちょっとレッコーさん?》
《それなりの危険球が執事と天馬を襲う!》
《執事はまぁ若干お嬢に甘いくらいで普通よな》
《むしろ執事はもっとお嬢を甘やかしてほしい》
「いやー……そもそも俺の同期が、俺含めて七人居るんですよ。で、男四人女三人で最初から合同で企画やったりしてるから、特に構える事も無かったっすね。ああ、でも男女の関係匂わせは燃えるって言われてますけど……ネメシスとか男に言い寄って袖にされるのを持ちネタにしてるし、クロムとは普通に良い感じで視聴者もそれ求めてる感あるし……」
「お、おう。オーバーズさん人数多いらしいし、そりゃ色々あるよな……」
「執事さんとこは?」
「私は同期の方が既婚で子持ちですから、良い距離感で接することが出来たと思います。男女比はほぼ半々ですが、色恋云々はありませんね」
《天馬もぶっちゃけるなぁw》
《クロネメは正義だからね。異論は認めるけど》
《レッドコースター微妙に引いてて草》
《ベテランだから若さにあてられてるのかも》
《リバユニはその辺おおらかというか、別にそれはそれでいいってなりそうだよな》
《キンメママの惚気トーク聞くと、夫婦って良いなぁって心底から思ってしまうもんな……》
《なお俺たち》
《言うな……!!》
「んー……それじゃあ、いざ結婚だとかになっても問題なさそう?」
「別の事務所っすけど、結婚した女性Vも居ますから大丈夫なんじゃないですかね?」
「実況者界隈だと今のところ話聞かないからなぁ。女性問題は何回か見たけど」
「ミゾレさん、不穏な発言はお控えください」
「でもまぁ執事さんがめっちゃいい人ってのは四谷から聞いてるし、割と祝福されそうっすけどね!」
「……そうだといいのですが」
《執事は背景ストーリーも込みで幸せになってほしいところではあるが》
《相手は?》
《ここで邪推してもしゃーないべや》
《このまま無限にトークできそうだな、この四人》
《【朗報】四谷、外で先輩を褒める》
正時廻叉の意味深な間の取り方の意味に気付く者は今のところは誰も居なかった。しかし、彼の脳には確実に『結婚』という言葉が刻み込まれたのは間違いない。
それでも、今現在の状況で足を踏み出すには――正時廻叉にも、石楠花ユリアにも足りないものが多い――そう考えた。
「では、二次会はここまでという事で三次会は麻雀でいい?」
「え?」
遅くなって申し訳ありません。
次回からはリバユニ中心でまたやっていこうかなと。
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