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「事務所語りは続く。例え横道に逸れたとしても」

若干ですがセンシティブな内容を含んでおります。ご注意ください。

 Re:BIRTH UNIONのオーディションにおける応募資格は基本的には緩い。

 年齢制限は15歳以上、ただし中学卒業済みである事が条件だ。なお、上限はない。現在の所属メンバーを見れば分かるように、性別も不問である。合格するかどうかは別問題でこそあるが、全くの未経験者も歓迎している。唯一応募が禁止されているのは『現在、Vtuber事務所並びに芸能事務所に所属している者』のみである。


「明確に法人として運営企業が存在している事が、応募条件にある『企業所属』の定義ですね。なので、電脳銃撃道場さんやVインディーズさんは法人化したので、所属したまま応募されても、一次選考で落とされます。芸能事務所、或いは声優事務所所属の方も契約上のトラブル回避の為にお断りさせて頂いています」


《なるほど》

《個人勢は分かりやすく参加OKなんだな》

《実際、事務所トラブルは泥沼の法廷闘争まで行く事あるしなぁ……》

《炎上どころじゃない事になること間違いなし》

《一番面倒くさいの自称事務所だよな。言い方は悪いけど、バックの企業があるんだかないんだか分からない様な所》

《そういう意味でDJDとVインディーズはニュースにもなったし明確に企業勢として扱えるから助かる。Linker’sは個人勢の同盟みたいなもんだから応募可能か》

《メンバーの出入り激しくて公式HPのメンバー紹介や更新履歴がカオスな事になってるLinker's》


「ちょうどお名前も出させて頂いたことですし、電脳銃撃道場さんについてですね。私自身も、DJD杯で御一緒させていただいたので、大まかな空気感は知る事が出来ました。ここに関しては、本当にそのままなのですが『道場』という言葉が一番相応しい気がします」


 電脳銃撃道場は、現在でこそプロゲーミングチームとして運営企業を持っているが、以前はFPS愛好者のVtuber達による寄り合い所帯だった。その中でも実年齢、キャリア共に最も最年長である十宝斎が自然と道場長・総師範としてリーダー的役割を担うようになった事で、彼らは寄り合いの互助会からチームへと変貌した。


 廻叉が言った通り、彼らの普段の活動はまさに『道場における修練』そのものだ。反復練習と実戦を、数人単位のコラボ形式の配信でほぼ毎日行っている。メンバーこそ流動的ではあるものの、元プロゲーマーである師範と、プロ経験の無い道場生を2~3人によるチームで組まれている。ゲーム内の演習施設に数時間籠り、雑談を交えつつも技術論や戦術論を戦わせている為、FPSファンのリスナーからは『通信講座』とまで言われ、腕前を磨きたい者達にはアーカイブが教科書とまで言われている。


「何より、『FPSが好きで、FPSの面白さ、楽しさをもっと広めたい』という意識が全員で統一されているのが凄い所ですね。間違いなく皆さんストイックではあるのですが、内に籠らず外に拡散させる方向で動けている、とでもいいますか。DJD杯は、明確な意思表示だったように思えます」


《わかる》

《厳しいけど、それ以上に楽しんでるのが伝わって来るから良いんだよな》

《FPSやっててあそこまでギスらないのは最早奇跡》

《むしろ師範の面々のが『ギスりたくない』ってずっと言ってるの、プロゲーマーの闇を感じたよな……》

《デルタ・リードがDJD杯の打ち上げで泣いてたもんな。「プロとしてやっている内に、いつの間にか失くしていったものが、全部ここにあった」って》




※※※




「龍真、執事さんなんかおもろいことしとるで。なんか色んな事務所の印象語っとるわ」

「マジかよ、そういうの俺とのラジオでやってくれよなぁ……!」

「んなことしたら燃えるやろ」


 新曲の作詞作業に追われているRe:BIRTH UNION1期生、三日月龍真は悔しそうにぼやく。一方で冷静にそれをあしらうのは、今回の楽曲でともに歌う個人運営のバーチャルラッパーの一人、MCカサノヴァだった。

 MCカサノヴァは関西出身で、現場のMC出身だ。たまたまMC備前やダルマリアッチ、三日月龍真の事を知り、その『中の人』が関東の現場でよく一緒になった面々だと知って、こちらの世界に早々に鞍替えした男だった。本人曰く「この人らが居るって事は、楽しいんやな?」という理由になっているか微妙な動機でバーチャルの世界に足を踏み込んでいた。そんな緩い空気感と関西弁で、固定のファン層を掴んでいるMCでもある。


「そういえば、バーチャルサイファーって別に事務所ちゃうよな?」

「単なる集まりだからな。ってか、事務所だったら企業勢の俺は抜けなきゃダメだろうが」

「せやな。……いやな、イルダリがオーディション受けるか迷っとってん。結局、リバユニやらオーバーズやらに送ったみたいやけど」

「あー、こないだSNSのDMに来てたわ。まぁ、何気に上昇志向強いしな、あいつ」

「普段からセルアウト上等言うてるしな。龍真がREDSHARKにDisられて、まぁまぁの部外者やのにキレ散らかしとったん、クッソおもろかったけど」

「若さだよなぁ……」


 ill da Ringイル・ダ・リングも、バーチャルサイファーに参加しているVtuberの一人だ。元々、ネットに音源だけを上げていた所にVtuberの流れに『勝機』と『商機』を見出した、と語る若き野心家である。売れる事に対し貪欲な彼が、企業所属という『メジャーシーン』に挑戦しようという思いを抱えている事に、龍真は深く納得したように苦笑した。


 一方でREDSHARKと三日月龍真のビーフが発生した際に、結果的に誰よりも早くアンサー曲を返したのはill da Ringだった。歌動画ではなく配信という形で五分間のアカペラフリースタイルでのアンサーである。最速でのアンサーを投下する事で自身の知名度上昇を狙うという打算と、自分達のやってきた事を否定された事に対する腹立たしさから、録音機材ではなく配信ソフトを立ち上げるという動きに繋がった。


 そんな彼の界隈からの評価は『ひたすら売れる事に貪欲で、ラッパーとしては珍しいタイプ』という物が大半だった。


「まぁ受かるかは知らんけど、受かったら面倒見たってや」

「それはまぁ、勿論」




※※※




「同じく個人勢の集まりから企業になったVインディーズさんについても触れましょうか。正直に言えば、私とは全く面識がないのですが、Re:BIRTH UNIONの音楽組……龍真さん、白羽さん、ユリアさんとは縁が深い方々ですね。単純に楽曲動画を出すだけでなく、常に何かしらの企画が動いている印象があります。白羽さんがVインディーズの皆様を表した言葉が印象に残ってますので引用します――『プロの軽音部』です」


《お、Vインだ》

《まぁ執事は歌メインじゃないからな》

《バイタリティすげえよなぁ。常に三つくらいの企画が同時進行してる感じするもん》

《クリア社長がレーベル化に動いて、一気にハネたイメージ》

《白羽らしい例えだけど合ってる》

《マジで軽音部ノリというか、いい意味で学生ノリのままプロになったもんなぁ》


 VインディーズもVtuber界隈では老舗と言えるグループであり、一メンバーだった千乗寺クリアが一年以上の話し合いの末にレーベル化し、企業運営になったグループである。音楽活動メインであれば来るもの拒まず去るもの追わずの精神で活動しており、音楽関連であればコラボの為のフットワークも非常に軽いのが特徴だ。

 楽曲的な統率性こそ皆無ではあるが、音楽性が違う事を前提としたコラボ企画やシャッフルユニット企画も多数立ち上げており、最近では彼らをVtuberだと知らずにミュージシャンとして応援を始めるファンも出始めている。


「カバー曲用のオケ音源の制作をメインにされている方も所属されてるとの事ですし、私自身もいずれご協力をお願いすることもあるかもしれませんね。続きましては、ラブラビリンスさんですが……ここは、私だけでなく、皆様の中にも、大きく印象が変わったという方も居られるのではないでしょうか?」


《これは歌ってみた期待してもいいのか?》

《でた、ラブラビ》

《ボヤ騒ぎすら遠い昔のようだ》

《Vtuber界隈時間の流れ早すぎ問題》

《実際、イメージ変わったよな。ちょっとダーティな空気纏うようになって、逆に好きになったまである》

《約一名ダーティどころじゃないのが居るんですが、それは》

《目を逸らせ。喰われるぞ》


 Vインディーズとは逆に、正時廻叉と縁が深いのが『ラブラビリンス』である。正確に言えば、因縁がある、言うべきかもしれないが。

 とはいえ、その因縁自体は既に解消されており、まだ小規模ではある物の事務所単位での交流も始まっている。ただし約一名を除く。


「改めて、印象を問われると答えに窮するところではあります。電脳銃撃道場さんと同じような回答になってしまいますが、文字通り『迷宮』なのですよ。簡単に分かってもらう気はない、という決意、覚悟のような物を感じます。だからこそ、迷宮の奥深くに居る真の彼女たちに出会うためにファンの皆様がより深く潜っていくのだろうなと……『探索者』というファンネームは言い得て妙ですね、本当に」


《たぶん、今一番取っつき辛い女性Vtuberの事務所ではある》

《気が付いたら某聖帝みたいになってたよな。退かない、媚びない、顧みない》

《視聴者の女性比率が跳ね上がってるらしい。わかる》

《迷宮だよなぁ。昔は表層だけ取り繕ってたのがよく分かるというか。本質はダンジョンだよ、あの子ら》

《則雲は?》

《迷宮にはモンスターが不可欠やろ?》

《草》

《言われようが酷いけど天歌のがもっと酷いから……》

《炎上して謹慎喰らった挙句、男性Vとのオフコラボを一律禁止されたって聞いて草も生えない》

《個人勢三人はやりすぎたな》

《匂わせどころか、鼻に捻じ込んでくるからな……「〇〇くん?小さかったよ」は鬼畜の所業》

《言われた側が嬉々としてSNSの名前に『@男が小さい』とかやるのもどうなんだって話だが》


「しかし、ラブラビリンスの話になると『あの方』の話題で持ちきりになるのが最近の悩みですね。エリザさんが白羽さんにギターを習い始めたのもありますし、できればそちらを話題の中心にしたかったのですが。……古参のVtuberの方が総じて匙を投げているあたりから、察するべきだとは分かっているのですが」


 先ほど除外された一名。ラビラビリンス所属の則雲天歌は、ここ数ヶ月の狼藉の結果、およそ一ヶ月の活動自粛と今後男性とのオフラインコラボ全面禁止という処分を受けた。プライベートでの出来事であり、両者の合意があった上で一夜を共にした事から、それだけではラブラビリンス運営としても処分を科すことは出来なかったが、雑談配信の流れから関係を持った相手が誰であるかという情報と、その『感想』を述べてしまい、ついに炎上した。これに関しても当事者間での同意は得ていたが、それはそれとしてファンへの配慮不足を理由に処分に至ったという。


 なお、お相手となった個人勢男性Vtuber三名は何故か「兄弟」を名乗り始めたが、ここでは特に関係がないため詳細は割愛する。


「先ほど私が迷宮と例えたのは、あの方に関してもそうなのかもしれませんね。エリザさんと夏乃さんが迷宮の住人であるのに対し、あの方は迷宮に封印された存在とも言えますが……」


《草》

《同じようで全く違う、とw》

《則雲ミノタウロス天歌》

《やってる事サキュバスなのにな》

《今度ラブラビ運営に胃薬送ろうかな……》

ある意味創作だから出来る則雲天歌さんの暴れ方。次回からは、通常回になります。

それと、タイトルが「この二人だけの話じゃなくなってきたなぁ」感が自分でも強く感じる様になってきたので、改名も少し視野に入れております。長いタイトルは好みではないので、「Re:BIRTH UNIONが本タイトル、サブタイトルに何か」という感じになるかもしれません。

そもそも改名しない可能性もまぁまぁありますが……!


御意見御感想の程、お待ちしております。

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― 新着の感想 ―
廻叉さんとユリアちゃんのじれったい感じが最高です!
[良い点] バーチャルリアルサキュバスはヤベェw [気になる点] あくまで個人的な感覚で話しますが、「執事が主人公」「ヒロインがお嬢」は変わってないので、あんまタイトル変えてもなぁ、感があります。 …
[一言] わざわざ設定練ってバックボーン匂わせて描写いれたのに採用されないのはもったいなくない? 落ちた子もこれからちょくちょく登場するんだろうか… 4人でもぜんぜん構わないんだけどね!(ただし四谷…
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