「正時廻叉デビュー1周年&登録者5万人記念凸待ち -リクエスト即興劇-(7)」
一日猶予を頂きありがとうございます。年末進行はとてもつらい。
「これだけ集まってノープラン雑談という訳にもいきませんが、どうするのですか?」
「うん。一応、考えてはいたんだけどね……ただ、このメンバーでやり切れるか怪しいんだよね。廻くんは間違いなく大丈夫だし、私と……あと四くんも大丈夫だと思うんだけど、この二人が不安で」
「ステラ様ひどーい。丑倉達だってやればできる子ですよ。やらないだけで」
「やれや。ってか俺も出来ない側かよ」
「うーん……僕が大丈夫側に入るってのがちょっと分からない」
《まぁ単なるフリートークだと記念配信に同僚が来たにしてはちょっと企画として弱いよな》
《流石にステラは何かしら考えてるか》
《草》
《露骨な分け方w》
《丑倉は本当にやればできる子なのにやらないんだよな。ゲームもコツ掴むの早くて上手いのにすぐに飽きちゃうから……》
「今年一年と、これからの抱負を――『STELLA is EVIL』の時の自分達で語り合おうか」
「あ、ズルい!ステラ様だけいつも通りじゃん!!」
「ちょっと待って、裏行って動画見直してくる」
「あ、僕も……」
「大丈夫判定受けたあなたもですか、四谷さん。まぁ確かにユリアさんを除く面々だと一番いいシチュエーションかもしれませんね。我々は姿形を変える事になりましたが、ユリアさんだけはユリアさんのままですからね」
《おおおおおお!!》
《なるほど、そう来たか》
《これは確かにこの面子だからこそのパターンだな》
《草》
《狼狽えすぎの一期生ども……w》
《四谷、お前もか》
《そっか、ユリアだけはステラの手で転生したわけじゃないもんな》
「まぁ、どうせならちゃんとした形で見て貰いたいのもあるし、何より今の姿になってから大分時間が経っているからね。視聴者の皆さんには我々が多少なりとも今現在の自分に引っ張られる事もあるかもしれないけど、そこは目を瞑って頂けるとありがたいな」
「むしろ目を逸らせ」
「見るな……丑倉達が残念な所を見るな……四谷くん、どうにかならない?」
「え?僕がどうこう出来る立場だと思われてます?」
「ごめん」
「……今しばらくお待ちください」
《それはまぁ、ね》
《メタ的な事言わずにちゃんと設定に沿った前置き言えるの偉い》
《草》
《こいつら……》
《2.1次元から2.9次元をシャトルランしてるよな、リバユニって》
《ある意味Vtuberの醍醐味を一番味わえる箱かもわからん》
《執事の呆れ声よ……w》
「さて。それじゃあ廻くん……Vtuberとして世に出て一年、人の体を手に入れてからはもっと長いだろうけど……この一年はどうだったかな?」
「難しくも、生き甲斐のある一年であった、と答えます。こうして電脳世界から現実世界にアクセスするようになって、かつての私達が成し遂げられなかった事を、少しずつ出来る様になった事は僥倖と言えるでしょう。かつて役者であった私も、かつて執事であった私も、夢半ばで道を失った者達です。活動初期こそ、私の事を知る者など極々僅かに過ぎなかった――しかし、こうして大きな節目を迎える事が出来たのは、御主人候補の皆様のおかげであり、ステラ・フリークスという大恩人のおかげであり、Re:BIRTH UNIONという仲間達のおかげであると認識しています」
「機械から人の身になっただけはある。感情が見えぬな、貴様」
「それはお互い様だよ、月の龍。私なんて堕ちた天使が更に人へと堕ちた存在だ」
「僕らは人外の転生者。人が理解しえる感情なんて、そもそも持っていないんじゃないかな?ふふ」
《おお、スイッチ入った》
《初期執事!初期執事じゃないか!》
《チクタク言うとりますけれども》
《BGMが時計の秒針だけになったの怖いからやめてくださる?》
《生き甲斐、の重みよ……》
《月の龍に堕ちた天使、噂話の擬人化。時計人間に人魚。改めて濃いよなぁリバユニ》
《全員ちゃんとスイッチ入ってて偉い》
「なるほどね。とはいえ、君の体には三つの魂が混ざりあっている訳だけれど……調子はどうだい?」
「少なくとも、メンテナンスは不要でしょう。主人格となる魂こそ私ですが、彼らの存在も今の私には無くてはならない存在。彼らが居なければ、私は人の形をした時計のままだった」
「僕もたくさんの虚構から成り立った存在。同じだね、正時廻叉。それとも違うかな?」
「控えろ、小泉四谷。貴様が茶化すと話が進まぬ」
「まぁ私達みたいな単独の魂と単独の魂の融合から生まれ変わった存在とは、色々と勝手が違うんだろうなっていうのはわからなくもないけど。とはいえ、よく受け入れられたよね、私達。一年前までは――ステラ様だけが、名を知られていた。私達は、その下――いや、もっと言えばおまけも同然だったのに」
《EVILシリーズ凄かったもんな……3人分の魂持ってる状態を破綻らしい破綻無しで一年やり通したのは凄いとか通り越してちょっと怖いまである》
《人の形をした時計ってのも軽くホラー》
《楽しそうだな四谷》
《下手するとSTTELA is EVILで一番ファンを増やしたの四谷だもんな》
《シリーズのフォーマットをみんなが認識したタイミングで壊してくるの、完全に分かってやってる感があったもんな》
《★関西Vラッパー・MCカサノヴァ:龍真、常時そっちモードのがかっこええで。普段ない威厳もあるし》
《草》
《ノヴァさん容赦なしで草》
《実際、普段話が進めなくなる原因がこれ言ってると思うと草生えるわな》
《本当だよ……<よく受け入れられた》
《ぶっちゃけステラとの最初のコラボ歌ってみたが無きゃ知る機会が無かったかも》
《ステラ本人は多分一緒に遊びたかっただけなんだろうけどな。あれで寂しがりってのは色んな所の証言で割れてるし》
《★月影オボロfromエレメンタル:基本、リバユニメンバーの事めっちゃ褒めるんよな、ステラちゃん。もう大好きなんやな、ってわかるくらい》
《!?》
《オボロ組長?!》
《あんた、スタジオ内で見学中なんだからコメントすんなよw》
《まあ今の状態だとガヤとかいれる空気じゃないのは分かるけど。分かるけどさぁ……w》
《★紅スザク@オーバーズ1801:でも俺達Vtuber関係者からはずっと注目されてたよ。この人らはヤバいってなんとなく最初から分かった感じはしてた》
《お前もかwww》
《とはいえ興味深い証言だよな。昔から業界視聴率の高さは散々言及されてたけど》
《いつかその辺の話も聞かせろください》
「それじゃあ、2年目以降の抱負は?」
「無論、チャンネル登録者数10万人です。今現在、Re:BIRTH UNIONでその大台を超えているのがステラ様のみという現状ですから。私を含めた全員が10万人を超えれば名実ともにRe:BIRTH UNIONは『中堅事務所』になることでしょう」
「中堅でいいのか貴様。そこは最大手、謙遜しても大手とか言うべきだろう」
「そうは言いますが、どこまで行けば大手なのか私には分かりかねるところがありますから」
「全員10万は……今で言うと、エレメンタルくらいじゃない?」
「むしろ、その為に廻叉さんが何をするかの方が僕は気になるけどね。単純に人気ゲームの実況に手を出すとか歌うとかをするタイプではないだろうし?そこの所、僕としては詳しく聞きたいけどね」
《大きく出たな》
《TryTuberならともかく、Vtuber業界なら全員10万人登録は十分な大手なんよ》
《執事、ハードルは高い物だっていう大前提で考えてるフシあるよな》
《エレメンタルも割と少数精鋭型だから登録者数が集中するタイプだからなぁ。メンバーの多いオーバーズやにゅーろはその辺で分散しがちなのはある》
《まぁ大手目指してもろて》
《あー、でも実際どうするかだよな》
《人数多い所だとゲームやらの大会や、フェス形式のライブで集客してる感はあるけど》
「……私のチャンネルでしか見られないコンテンツを作り上げる事と、私が必要とされるに値する人材となる事。この二点が重要です。前者は、以前より好評を頂いているRPGゲームの朗読プレイのようなものですね。それプラス、新しい何かを。後者は、外部でのMC依頼などにも積極的に応えて行こうかと。あとは所謂『案件』と呼ばれるものですね。正時廻叉が需要あるVtuberとなれば、自然とチャンネル登録者数も増えていく事でしょう」
「うんうん。廻くんは相変わらず堅実だね。何かしらでバズって一撃でブレイク……なんてことを最初から考えない辺りは、実に廻くんらしい考え方だ」
「我々がどちらかといえばそちら寄りではあるからな……楽曲制作なぞ、毎回毎回全力で博打を打つ感覚に近い」
「まぁでもそれを選んだのは私達だから仕方ないんじゃない。じゃあ音楽以外にやることあるのかって言われたら返答に困るし」
「僕は僕で、共存共栄型だからどちら寄りでもないけどね。みんなで幸せになろうよ?」
「貴様が言うと心底胡散臭いな」
「酷いなぁ。僕は僕なりの本心でしか話してないよ?まぁその本心がいくつもあるのが、僕みたいな群体で正体不明な存在の良い所でもあり悪い所でもあるけどね……」
「……何にせよ、だ。廻くん、君は君の行くべき道を進むといいよ。そして、後輩達の模範になってくれ。勿論、龍くんに白ちゃんも」
「……承知いたしました」
「御意」
「御心のままに」
《うーん、堅実》
《ある意味、昔からやってる事は演技と執事っていう二つの要素をベースにした活動なんだよな》
《MC適正は割と後から発覚したもんな》
《業界視聴率の高さから考えれば、今一番案件を投げたいVtuberかもしれんぞ。絶対に声を荒げないし、良い所も悪い所も冷静に伝えてくれそうだし》
《曲はなぁ……博打っていうかガチで水物だもんな。むしろ先物取引とかのが近いまである》
《流行る曲をいち早く掴めれば歌ってみた需要のスタートダッシュを獲れるけど、ちょっと遅れるとあっという間に今更感出ちゃうもんな》
《四谷はコラボでファンを増やすタイプの良い例よ》
《でもソロ配信もちゃんとやれてるの偉い》
《いい感じにステラがまとめてくれたな。良かったな一期生、演技にボロが出る前で》
《でも龍真も白羽も微妙に声が半笑いなんですが?》
《それは見て見ぬふりするのが優しさやぞ 》
「……四くん?何を他人事みたいな顔をしてるのかな?待機中のユリちゃんもだ」
「……はい?」「え?」
《ん?》
《え》
《後輩の模範で、四谷とユリアが他人事じゃない……つまり》
《まさかまさかまさか》
「さて、今日私がわざわざここに来たのは、これを発表する為でもあるんだ。……そろそろ、新しい星を探そうと思ってね」
《きたああああああああああああ!!!》
《新人だああああああああああああああ!!!》
《四期生!!四期生!!!!》
《恐らくVtuber業界で最もハードルが高いオーディションが始まる……》
《再来月にはお嬢と四谷も1年だからな……流石にそろそろ入れる事になったか》
《さぁ、どんだけやべー奴が来るのか今から楽しみだ》
「詳細は、数日以内に公式から発表することになっている。では改めて……廻くん、チャンネル登録者数五万人、そしてデビュー一周年おめでとう。これからも、一緒に頑張ろうね」
「……ありがとうございます。では、ここまでのゲストはRe:BIRTH UNION0期生、ステラ・フリークスさん。そして重大情報に驚きすぎて放送を放棄してブース外のスタッフに詳細を聞きに走った三日月龍真さん、丑倉白羽さん、小泉四谷さんでした。では、一旦休憩となります――」
「……そうか、四期生か……」
《ん?》
《あれ、今の執事の声か》
《完全に油断したボヤきで草》
《ミュートする前に声に出たわね》
《最後はお嬢だけど、どうすんのかなぁ》
《イチャつけ》
《ラブれ》
《こいつら……w》
次回更新は1/5を予定しております。
御意見御感想の程、お待ちしております。
拙作を気に入って頂けましたらブックマーク、並びに下記星印(☆☆☆☆☆部分)から評価を頂けますと幸いです。