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暴走する恋愛探偵に巻き込まれたチンピラの優雅な学園生活  作者: ツネ吉
第三章貴方の下僕になりたいのです
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「……もう帰っていい?」


 そう気だるげに言って、エリカ様は屋上から出て行こうとした。


「待ってください、まだお話があります」

「私にはない、この事件結局私関係なかったし、正直なんで呼ばれたのかわからない」


 そして今度こそ背を向けるエリカ様を


「待ってくれ、エリカ様。」


 俺は引き止めた。まだエリカ様に帰ってもらっては困る。


「……吉岡さん。」

「俺にもステキなアダ名をつけてくれませんか!」

「一瞬でも期待した私がバカでしたよ!!」

「……じゃあ、金髪(笑)で」

「ありがとうございますっ!!!」

「吉岡さん?! 正気に戻ってください! ……ああ待って! 帰ろうとしないで守谷さん!」



「で、結局エリカ様に話ってなんだよ?」


 あの後必死に引き止める桐花におれた形でエリカ様は残った。しかしそもそもなんでエリカ様を呼んだんだろうか? この事件にエリカ様は関与していない。


 そのことを指摘すると、


「守谷さんはしっかりとこの事件に関与しているからですよ。……それも核心的な部分で。」

「じゃあさっきの推理は何だったんだ? 全部嘘だったのか?」

「嘘なんてついていません、ただいくつか話していないところがあるだけです。」


 どういうことだ?


「まず、清水先生が予約時間を間違えた件、先生が間違えたのは飛田さんがホワイトボードに嘘の時間を書き込んだ事が原因です」

「……? だからなんだよ?」

「気づきませんか? その嘘の時間は次の日には消えて、正しい時間が書き込まれていたんです。誰がそんなことをしたと思います?」


 誰って、清水先生が嘘の書き込みを見たときには部員は全員帰っていた、そして次の日の朝、誰よりも早く部室に来て書き込みを修正できたのは、


「……エリカ様?」

「そうです、守谷さんしかいません。加えて言うならば、あの律儀な清水先生が自分の名前も書かずにコメントするとは思えません。あの日守谷さんは部室のホワイトボードを見て、清水先生が予約時間を間違えて予約してしまった事に気付いたはずです。そして、時間を直し先生の名前を消す事で謎の人物が予約してくれたという状況を作り上げたんです」

「ちょ、ちょっと待てよ」


 混乱してきた頭を整理するために一度会話を止めようとしたが、桐花は止まらなかった。


「そして、先生がカギを屋上から持ち去った後、先生と守谷さんは会う約束をしていた。先生のあのスーツのポケットにあの大きさのぬいぐるみは入りません、ということは先生はカギを手に持った状態で守谷さんに会ったはずです。合唱部の部員である守谷さんがあのカギに気づかないはずがありません」

「待て、待てって! じゃあ何か?エリカ様は2つの事件の原因を知ってた上に、その事件を止めようともしなかったってことか?!」

「そうです」

「意味がわからん! その事件のせいでエリカ様は2時間も待ちぼうけを食らって、朝早くから学校中を探し回る羽目になったんだぞ!」


 それこそエリカ様には何の動機もない事になるんだぞ?!


「文化会館での練習は制服で行うそうです。2時間の間、買い物に出かけた守谷さんと荷物持ちをさせられた部長さんは制服だったという事になります」

「だからなんだ?」


 俺の疑問に、桐花は何も知らない子供を諭すように答えた。




「いいですか男女が制服で買い物に出かける、これは制服デートです」

「………………………………は?」


 ナニヲイッテンダコノオンナ?


「そして男女が校内を一緒に散策する、これは校内デートです!」

「いや、待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て!!」


 だめだ! 状況が全然理解できん! それじゃあまるで


「それじゃあまるで、エリカ様が部長さんを好きみたいじゃないか!!」





「……そうよ、悪い?」


エリカ様の顔は真っ赤だった。



「嘘っーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」


あまりの驚きにとんでもなくでかい声が出た、おそらく先ほどの部長さんにも負けないだろう。


「ふふふふふ、やっぱりでしたか。前々からそうじゃないかと思ってたんです。守谷さん中々ボロを出さないから大変だったんですよ。この依頼受けてよかったです!!」


桐花は桐花で何やら気味の悪いことを言ってるがこっちはそれどころじゃない。


「だって、エリカ様でしょ! 学園のドS系女王様のエリカ様でしょ!! しかも部長さんには一際あたり強かったじゃん!」


わけがわかんなすぎて自分でも支離滅裂になっている。


「私は元々ドSでも女王様でもないわよ!」

「マジで!!」


本日二度目の衝撃


エリカ様はこれまでの経緯を語り出した。



「杉原部長に初めて会ったのは……いえ、会ったと言えるほどのことじゃないわね。杉原部長を初めて見たのは去年の学校見学の部活動紹介の時よ。元々歌うのは好きだったけど合唱部は1人しかいないと聞いていたから期待はしていなかったわ。……でも凄かった、たった1人であんなに大勢の前で堂々と歌う部長を見てすぐにこの学園の合唱部に入ること決意したわ」

「え、エリカ様まさかの一目惚れ?」


 めちゃくちゃ以外だ。


「入学してすぐ合唱部に入ったけど.……いざ憧れの人を前にすると緊張で全然話せなくて……」


 そんな奥手な少女に何があったらこんな事になるんだ?


「そのことを相談したらアドバイスをもらったの、“男の子はツンデレっていうのが好きだからそういいう感じでアタックすればイチコロよ”って………………清水先生に。」

「またあの先生か!!!!」


ああ、もう……もう!! なんなんだ!!


「何考えてんだあの人!! 自分全く恋愛経験ないくせに人にトンチンカンなアドバイスしやがって!!」


 エリカ様のツンデレもなんか微妙に違うし!


「でもおかげで部長となんとか会話できるようになったから良かったわ」

「あれは会話と言えるのかどうか正直微妙なんですが。……守谷さん、なら何で他の人にも同じような態度を? 部長さん1人で良かったじゃないですか?」

「だって、……部長1人にツンデレをしていたら部長が好きだってバレるじゃない」

「……“エリカ様”って照れ隠しの産物だったんですか」


もう色々と衝撃的すぎる。


「さっきの部長やっぱりかっこよかったわ。周りのみんなは頼りなそうって言うけどそんな事ない」


 エリカ様の頬は赤く染まり、先程の部長を思い出してうっとりとした目をしている。


 その姿は恋する乙女そのものだった。


「私の好きになった人は誰よりも頼りになるわ」


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