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暴走する恋愛探偵に巻き込まれたチンピラの優雅な学園生活  作者: ツネ吉
第三章貴方の下僕になりたいのです
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8


「桐花さん、真相がわかったんだって?」


 翌日、桐花は屋上に合唱部の杉原部長、伊達に飛田、そしてエリカ様を呼び出した。


「はい、練習時間を間違えて予約した人物、そして屋上からカギが無くなった理由、2つともわかりました」


 ただし、と桐花は続けて、


「……私にできることは真相を明らかにすることだけです。ですので……」

「うん、どんな事実であれその後は僕が何とかするよ」


 そう言って部長は強く頷いた。


「……わかりました、ではまず誰が予約時間を間違えたのか、お話ししたいと思います」




「この事件のポイントはホワイトボードに書かれた“予約しておきました”と言うコメントです。このコメントの人物が時間を間違えて予約したことは間違いないでしょう。では、このコメントがいつ書かれたものなのか、守谷さんの話ではこのコメントを見つけたのは朝練の時、誰よりも朝早く練習に訪れる守谷さんが見つけたということは当然、このコメントは前日の部活中、もしくは部活後に書かれたことになります」

「この男が書いたんですよ!!」


そう言って飛田が伊達を指差した。


「あの日、僕が帰る時部室に残っていたのはこの男だけ、その時ホワイトボードにこんなコメントはありませんでした! ならば書くことができたのは彼だけです!」

「なっ、俺じゃねえよ! てめえ!エリカ様に良いところ見せたいからって適当なこといってんじゃねえ!!」

「なら! 他に誰がいるっていうんですか?!」


「落ち着いてください、お2人とも」


 ヒートアップする伊達と飛田を桐花は静かに制した。


「この事件にはもう一つポイントがあります。それは、なぜ予約時間が間違われていたのかです。……この写真を見てもらえますか?」


 そう言って桐花が見せたのは先日俺に見せたホワイトボードをバックに映る、エリカ様と女子部員たちの写真。


「なあやっぱその写真後でくれないか?」

「ちょっと黙っててください。」


 少しガチ目のトーンで怒られた。


 そしてもう一枚、これも先日見た謎の人物のコメントが書かれたホワイトボードの写真。


「この写真のホワイトボード、特に予定日時に注目して見比べてください。……何か気づきませんか?」


 見比べてみろって、書かれていることは同じ……あれ?


「なんか時間の所、微妙に書き方が違わないか?」


 筆跡も違う気がする。


「その通りです。この時間帯について書かれていた所、おそらく書き直されています。では、書き直される前は何が書かれていたのか? 私の推理では間違いなく、」

「……2時間遅れた、間違えた時間帯」

「そうです。そして誰が何のためにそんなことをしたのか?それは合唱部において、伊達さんと飛田さんの関係性を考えれば簡単に推測できます」


 2人の関係性それは、エリカ様をめぐり対抗心を燃やし、お互いにしょうもない嫌がらせをする関係。


「……おいまさか、これも普段の嫌がらせか?」

「はい、そしておそらくこれは最後まで合唱部に残っていた伊達さんを狙ったもの、違いますか?飛田さん」


「あ、い、いや……ぼ、僕は」


 飛田はわかりやすいぐらいうろたえている。これでは僕がやりましたと言っているようなものだ。


「ということは、予約したのも飛田か」

「ち、違います!それは僕ではありません!!」


 まだ否定するのかこの野郎、往生際が悪いぞ。


 しかし桐花は、


「予約したのは飛田さんではありません。そもそもこれは間違えた時間を書くことで伊達さんが本来の予定時間は何時だっだのか混乱させ、あわよくば練習時間に遅れればいい。そのレベルの嫌がらせなんです。合唱部全体に被害が出るようなものではないんです」


 と飛田の犯行を否定した。しかしそうなると、


「じゃあ、この嫌がらせを真に受けた伊達が予約しちまったのか?」

「そ、そうですよ! 僕にまんまと騙されたこの男が間違えて予約したんだ。僕は悪くありません!!」

「……いや、オメーが悪いよ」


 こいつ開き直りやがった。


「だから俺じゃねえよ! そんな嫌がらせ気づきもしなかったし、そもそもホワイトボードに書かれた字は俺のものとは全然違うじゃねーか!!」

「字なんて筆跡を変えればいくらでも誤魔化せる! あのコメントを書けるのはあなたしかいない!!」


またヒートアップした2人を桐花は今度は強めに制した。


「予約したのは伊達さんでもありません! いいですか? 伊達さんの言う通りホワイトボードに書かれた字は伊達さんのものとは違いかなり綺麗な字です。ホワイトボードのような地面に垂直な物に字を書く事は慣れていないとかなり難しいです。まして自分の筆跡を誤魔化すことができるほど綺麗に書ける人物なんてそういません」


 確かに、普段机の上で物を書く俺たち学生にとってホワイトボードに字を書くのは正直難しい。じゃあ……


「じゃあ誰なんだ?」

「いるじゃないですか、合唱部に自由に出入りできて、ホワイトボードのような物に字を書き慣れている方が」

「……?.......!! おい桐花! それって!」



「そうです、時間を間違えて予約した犯人、それは合唱部顧問の清水先生です」



「事件の概要はこうです、まず飛田さんが予定時間を2時間遅らせたものをホワイトボードに書き直しました。これは普段やっている嫌がらせの延長で伊達さんを狙ったものです。しかし今回、第三者がこの嫌がらせに巻き込まれてしまいました、それが清水先生です」


 清水先生が巻き込まれた、これは嫌がらせを仕掛けた飛田にとって想定もしなかったこと。


「清水先生は吹奏楽部の練習が終わった後合唱部に行き、その日合唱部で何があったのかをホワイトボードに書かれたコメントを見ることで把握しているそうです。そしてその日もホワイトボードを見に誰もいない合唱部に訪れていた、そこには文化会館での練習予定日時とそれを了承する部員たちのコメントがありました。……普段合唱部に対して何もしてあげられないと思っていた先生はせめてこれくらいはと思い、顧問自ら予約の電話をかけたんです、予定時間が遅れているとも知らずに。そして清水先生は予約したとコメントを残したのです」


 なるほど、あの先生には妙な茶目っ気がある。それに学生の青春というものを羨ましがっていた。部員と同じようにホワイトボードにコメントを残してみたかったんだろう。


「これがこの事件の真相です」




「てめえ飛田! やっぱり俺をはめようとしやがったな!」


伊達は今にも殴りかかりそうな勢いだ、嫌がらせを受けた上に犯人と疑われたのだ、当然だろう。


 しかしまたもや桐花がこれを制した。


「待ってください、先に次の事件、屋上でカギが無くなった事件についての私の推理を聞いてください」

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